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Talking of LAL連載

【連載】Talking of LAL「第54話 リムルス試験の将来」

本記事は、和光純薬時報 Vol.72 No.1(2004年1月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第54話 リムルス試験の将来

エンドトキシン測定に関してはリムルス試薬の独壇場ですが、この試験が開発されてからすでに 30 年もの年月が経っています。この間、種々の技術は開発されたものの、カブトガニの献血によって試薬原料をまかなっている部分は変わっていません。

科学技術が進歩する中、エンドトキシン測定は、今後どのようになっていくのでしょうか。また、エンドトキシン試験法は各国の局方に収載されていますが、公定法としてのエンドトキシン測定はどのようになっていくのでしょうか。

ということで、今回は、リムルス試験の将来について考えてみましょう。

今年の 6 月に興味深い出来事がありました。米国の Associates of Cape Cod(ACC)社が、FDA に請願書を提出したのです。事の起こりは、CAMBREX 社のリコンビナント Factor C を使ったエンドトキシン測定試薬が、FDA の認可を受けることなく発売されたことです。

この PyoGene という製品は、リムルス試薬中のエンドトキシン感受性因子である Factor C を遺伝子組み換えによって製造し、活性化型の Factor C の基質と組み合わせて、産生される蛍光色素を測定するものです。FDA がこの製品を認可なしで発売することを許したことに対して、ACC 社は、以下の要求を行いました。

(1)認可が必要ないという決定を取り消し、premarket approval を要求する。

(2)もし(1)ができなければ、ライセンスされていないエンドトキシン試験を使用しようとする製造業者は、バリデーションデータを申請し、当局の承認を受けるようにする。また、すでにライセンスされたエンドトキシン試験法に対して、すぐに規制を解く。

この、ACC 社の嘆願書には、リムルス試薬の FDA による規制の歴史なども書かれており、興味のある方は一度読まれるとおもしろいかもしれません。この文書は、FDA のホームページからダウンロードすることができます(掲載当時、現在はダウンロードできません)。

これに対して CAMBREX 社も 8 月に文書を提出し、ACC 社が要求した再審査やその他の指摘に対して、反論しています。9 月には ACC 社が CAMBREX の反論文書に再反論するということで、事態は混沌としてきています。

論議の焦点は、遺伝子組み換えによって作られた動物血液由来の蛋白を、血液由来の製品として管理するかどうかということ、FDA がリムルス試薬の規制をどのようにしていくのかというところでしょう。

前者は当局の判断に任せるとしても、後者は筆者らにとって大きな影響がある部分です。今回のテーマであるリムルス試験の将来にも大きな関わりがあります。

リムルス試薬は、単なる試験試薬であるにも関わらず無菌製造される生物製剤として扱われてきました。おそらく注射用の医薬品と同等の規制はリムルス試薬には厳しすぎるとの反省もあり、現在は CFR 21 Part 660 のリストから外されています。

しかし、リムルス試薬は、もともと生物製剤としてライセンスされた製品ですから、CFR 21 Part 600 の規制を受けており、CFR 21 Part 600 と医療用具や臨床検査薬の品質管理に関する規定(CFR 21 Part 820)とによって規制されているという見方が主流です。今回の嘆願書は、これが規制廃止になる可能性にも言及しています。

現在のエンドトキシン試験は、そのバリデーション方法も確立されてきており、試薬自身に問題がある場合も、これが検出できるようになっています。すなわち、試薬の性能に問題があると、日常試験における規格に入らないという事態が予想されます。

この意味からは、もし FDA の規制が無くなっても、エンドトキシン試験自体には大きな影響はないと思われます。また、価格が安いだけで性能の悪い試薬が出てきても、エンドトキシン試験で試験している製品は、試薬よりずっと高価なものですから、結果の信頼性を落とすリスクはとらないでしょう。

Factor C の活性測定は、これを最初に精製した九州大学のグループが測定しています。しかし、エンドトキシン測定にこの方法は採用されてきませんでした。CAMREX 社の方法が以前の方法より優れているかどうかは、まだ判断できませんが、この製品が市場に出てきたとしても、その性能判定にある程度の時間がかかることは間違いありません。その後、実際に使えるかを判断することになるでしょう。

アメリカの LAL メーカーである Endosafe 社は、Endosafe-PTS という製品を発売しています。リムルス試薬を 0.025mL のサンプルと、カートリッジ上の細い溝中で反応させ、小さい機械でエンドトキシン濃度を測定する製品です。彼らは、使っているリムルス試薬が FDA にライセンスされたものであるから、この製品は、最終製品の試験に使わないかぎり、FDA の認可なしで検査に使えると言っています。

リムルス試薬の将来を考えるとき、次世代のエンドトキシン試験法が必要になってくると思われます。今後の流れとして、遺伝子組み換え技術によってリムルス試薬の因子を製造する、現在のリムルス試験の微量化、物理化学的な測定方法の応用などが考えられ、実際にこれらの製品が出ようとしています。しかし、現在のところ、リムルス試薬を越える方法は出てきていないように思えます。

また、医薬品等のエンドトキシン試験として何か新しい方法が採用されるためには、その有効性を検証するために長い期間が必要です。今後、新技術、当局による規制、製造業者の思惑などが絡み合って、新しい流れが作られていくことでしょう。

現在の状態は、そろそろ次世代のエンドトキシン試験を考える時期に来ているが、その有力な候補はまだ現れていないというのが実情かと思うのですがいかがでしょう。

第55話 エンドトキシンと添加剤

第53話 SLP試薬の応用

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