塩基添加剤

塩基試薬には主にアミン系である有機塩基、金属塩である無機塩基、アルコールの共役塩基の形態である金属アルコキシドなどがあり、脱プロトンなど反応の活性化に使われます。有機塩基の強さとしての一例として、pKbの順列が参考になります。
DBN(0.5) > DBU(1.1)>i-Pr2NEt(2.6)>Et3N(3.4)>DABCO(5.2)>2,6-Lutidine(7.4)>pyridine(8.8)
参考)Molecules 16, 8992, (2011).

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塩基の定義

酸・塩基は有機合成における基本的な概念です。有機反応は物質間の正電荷と負電荷が接近して開始する場合が多いためです。一般的に水に溶けたときにOH-を発生する物質をアレニウス塩基、物質間でプロトンを受け取る物質をブレンステッド塩基、また、物質間で電子対を与える化合物をルイス塩基と呼びます。

塩基の種類

塩基は炭素を含まない無機酸と炭素を含む有機酸に分類されます。有機反応における添加剤や、脱プロトン剤、中和剤など様々な役割があります。

無機塩基・・・様々な金属の塩であり、安価で工業用にバルク生産される品目も多いです。

       金属水酸化物(NaOH、Ca(OH)2など)
       金属水素化物(LiH、NaHなど)
       金属炭酸塩(Na2CO3、K2CO3など)
       金属炭酸水素塩(NaHCO3、K2CO3など)

有機塩基・・・有機物の塩基であり、金属の塩や窒素原子を含む有機分子などです。酸性度の高いプロトンを引き抜く反応や、酸と反応してアンモニウム塩を形成する中和反応に用いられます。

       金属アルコキシド(NaOMe、t-BuOKなど)
       金属アミド(NaNH2、LDAなど)、
       アルキル金属化合物(n-BuLi、Me3Alなど)
       アルキルアミン(Et3N、TMEDA、ピペリジン、DABCOなど)、
       複素環アミン類(DBU、ピリジン、イミダゾールなど)

添加剤として用いられる塩基

ピリジン類の中で添加剤として代表的な化合物が、DMAP(ジメチルアミノピリジン)です。例えば、カルボン酸とアルコールの縮合反応において、縮合剤とともに添加され、反応を加速します。

カルボン酸とアルコールの縮合においてDMAPが添加される反応式

また、酸塩化物と2級アミンとの反応では発生する塩化水素をトラップする目的で求核性が低いEt3N(トリエチルアミン)が添加されます。反応後に生じるトリエチルアミン塩酸塩は水溶性ですので、水洗・分液によって容易に除去できます。また、ヒューニッヒ塩基 (Hünig's base) とも呼ばれるDIEA (N,N-ジイソプロピルエチルアミン)は、Et3Nよりもさらにかさ高く、求核性が低い塩基として知られています。

酸クロライドと2級アミンとの反応でトリエチルアミンが添加される反応式