エクソソームマーカー抗体

エクソソームの表面に存在するCD9、CD63、CD81などのテトラスパニンファミリー タンパク質はエクソソームマーカーとして利用されています。当社ではDNA免疫法によって作製した各種エクソソームマーカー抗体をラインアップしております。当社の抗体は従来の手法で作製された抗体と比較して高感度です。

学術コンテンツ

細胞外小胞(エクソソームなど)のマーカータンパク質

エクソソームをはじめとする細胞外小胞(EV: Extracellular Vesicle)のマーカータンパク質にはテトラスパニンファミリー(CD9、CD63、CD81)やインテグリンファミリー(ITGA、ITGB)、ESCRT複合体結合タンパク質(TSG101、ALIX)、脂質ラフトマーカー(Flotillin-1/2)、ヒートショックタンパク質(HSP70)などが知られています。しかしながらマーカータンパク質の発現レベルは由来する細胞などによって様々であり、場合によっては特定のマーカータンパク質をほとんど発現していないものも存在します。

その中で国際細胞外小胞学会(ISEV) は、2018年にポジションペーパーであるMISEV20181)を発表し、細胞外小胞の存在およびその純度を示すのに有用なタンパク質を提案しています(表1)。論文では、細胞外小胞に存在するタンパク質(表1のカテゴリー1aまたは1b、2a ※場合により2b)に加え、リポタンパク質やアルブミンなど混入しやすい不純物(表1のカテゴリー3aまたは3b) を最低限確認することが求められています。なおカテゴリー4は特定の小型細胞外小胞について、カテゴリー5は細胞外小胞を機能を示す際に分析が必要なタンパク質です。

表1 タンパク質による細胞外小胞の特性評価に用いるマーカータンパク質の例 (MISEV2018より一部抜粋)

カテゴリー1

細胞膜もしくはエンドソームに関連する膜貫通タンパク質もしくはGPIアンカータンパク質

1a: 組織非特異的
テトラスパニン(CD63、CD81、CD82)、複数回膜貫通タンパク質(CD47)、MHC クラスI (HLA-A/B/C)、 インテグリン(ITGA、ITGB)など

1b: 組織特異的
テトラスパニン(TSPAN8、CD37、CD53、CD9)、EPCAM、CD90、CD45など

カテゴリー2

細胞外小胞に含まれる細胞質内タンパク質

2a: 脂質や膜タンパク質への結合能を有する
ESCRT複合体(TSG101、CHMP)およびアクセサリータンパク質(ALIX)、フロチリン、カベオリン、アネキシンなど

2b: 細胞外小胞 (およびおそらくエクソメア)へ無差別に取り込まれる
ヒートショックタンパク質(HSP70)、アクチン、チューブリン、GAPDH

カテゴリー3

細胞外小胞と共に単離される非細胞外小胞の主要因子

3a: リポタンパク質(肝臓で産生、血清・血漿に豊富)
アポリポタンパク質A1/2(APOA1/2)、アポリポタンパク質B(APOB100)、アルブミン(ALB)

3b: タンパク質およびタンパク質-核酸の凝集体
Tamm-Horsfall タンパク質、リボソームタンパク質

カテゴリー4

細胞膜やエンドソーム以外の細胞内小器官に関連する膜貫通タンパク質、脂質結合タンパク質、可溶性タンパク質

4a: 核
ヒストン、ラミンA/C

4b: ミトコンドリア
シトクロムC (CYC1)、TOMM20

4c: 分泌経路 (小胞体、ゴルジ体)
カルネキシン(CANX)、Grp94、BIP、GM130

4d: その他 (オートファゴソーム、細胞骨格など)
アクチニン1/4 (ACTN1/4)、サイトケラチン18 (KRT18)

カテゴリー5

細胞外小胞に含まれる分泌タンパク質

5a: サイトカインおよび成長因子
TGFB1/2、IFNG、VEGFA、FGF1/2、PDGF、EGF、インターロイキンなど

5b: 細胞接着および細胞外基質タンパク質
フィブロネクチン(FN1)、コラーゲン、MFGE8など

※ カテゴリーの詳細や各カテゴリーのタンパク質すべてをご覧になりたい方はMISEV20181)をご確認ください。

細胞外小胞マーカーに対する抗体の作製

細胞外小胞のマーカータンパク質の内、CD9、CD63、CD81のような膜タンパク質はその複雑な立体構造により、従来の方法では高品質な抗体を取得するのが難しいとされています。この問題を解決するために当社の抗CD9、CD63、CD81抗体は「DNA免疫法」を用いて作製しています。

図1 DNA免疫法

図1 DNA免疫法

DNA免疫法は、ペプチドやタンパク質抗原の代わりに、ターゲット抗原のcDNAを含む発現ベクターを免疫動物に投与します。投与されたターゲット抗原のcDNAは、ベクター内のプロモーターによって転写され、免疫動物の体内で発現して抗原となります。この方法で作製された抗体は基本的にNative Formの抗原を認識するため、複雑な立体構造をもつ膜タンパク質に対しても抗親和性の抗体を得ることができます(図1)。

実際に抗CD9, モノクローナル抗体 (1K) (コードNo. 014-27763)を用いて、COLO201細胞培養上清から精製した細胞外小胞のCD9を非還元条件のウエスタンブロッティングで検出したところ、従来品に比べて、高感度にCD9タンパク質を検出できました(図2)。抗CD63抗体や抗CD81抗体においても同様の結果が得られており、当社抗体はエクソソームをはじめとする細胞外小胞研究のツールとして有用であることが示されました。

図2 ウエスタンブロッティングによる抗CD9抗体の性能比較

図2 ウエスタンブロッティングによる抗CD9抗体の性能比較

COLO201細胞の培養上清からPSアフィニティー法で精製した細胞外小胞のCD9をウエスタンブロッティングで検出した。
一次抗体:  抗CD9, モノクローナル抗体(1K)
二次抗体:  ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG (H+L)抗体
検出試薬:  イムノスター® ゼータ (コードNo. 291-72401)

参考文献

  1. Théry, C. et al.: J. Extracell. Vesicles, 7(1), 1535750(2018).
    Minimal information for studies of extracellular vesicles 2018 (MISEV2018): a position statement of the International Society for Extracellular Vesicles and update of the MISEV2014 guidelines