血痕・精液検出試薬

血痕の検出は鑑識において重要な作業になりますが、血痕と単なるシミを区別することが困難な場合があります。血痕かどうかの予備試験にはロイコマラカイトグリーン反応、ルミノール反応などが利用されており、当社では試薬調製の手間を抑えたロイコマラカイトグリーン反応用試薬、ルミノール反応用試薬セットをそれぞれ販売しています。また前立腺由来の酸性フォスファターゼは精液の証明となります。当社ではこの酸性フォスファターゼが検出可能なSM試薬も販売しております。

学術コンテンツ

血痕検出の原理

しみのような痕跡が血痕かどうかを調べる際には、まず血痕予備試験が行われます。血痕予備試験ではルミノール反応試薬やロイコマラカイトグリーン反応試薬などが使用されます。

ルミノール

図1 ルミノール反応

ルミノール(5-アミノ-2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)はアルカリ性の水溶液中でペルオキシダーゼ様活性を有する種々の物質(鉄、銅、コバルト、樹葉、ヘモグロビン)が触媒となり、ジアザキノン中間体を形成し、フタル酸ジアニオンの励起状態が生じます。さらに反応が進むと2-アミノフタル酸ジアニオンが生成され、基底状態に戻る際に発光が起こります(図1)。

血液中に含まれるヘモグロビンがルミノール反応の触媒としてはたらくため、血痕であれば紫青色の発光として検出ができます。ただし植物由来ペルオキシダーゼなど血液以外のペルオキシダーゼ含有物にも反応する場合があり、ロイコマラカイトグリーンと比べて特異性は低いとされています。

ロイコマラカイトグリーン

ロイコマラカイトグリーンは通常無色ですが、血液中のヘモグロビンによって触媒される酸化還元反応によって酸化されると青緑色のマラカイトグリーンに変換されます。

発色による検出であり、ルミノールに比べて感度は劣りますが、植物由来などのペルオキシダーゼで反応することは少なく、血液に対する特異性が高いと言われています。これはロイコマラカイトグリーン試薬の過酸化水素濃度はペルオキシダーゼにとって過剰であり、ペルオキシダーゼの不活性な反応中間体が形成されてるためであると示唆されています1)

精液検出の原理

しみのような痕跡が精液かどうかを調べる際には、外観や顕微鏡検査、血清学的検査の他に、生化学検査が行われます。

ヒトの精液中には、前立腺由来の酸性フォスファターゼが多量に存在します。α-Naphthylphosphoric acidは酸性フォスファターゼによって加水分解され、α-Naphtholを生じます。これがDiazonium o-dianisidineと反応し、紫色に呈色します。α-Naphthylphosphoric acidとDiazonium o-dianisidineで構成されるSM試薬は感度が高く精液の検出方法として広く利用されています。

参考文献

  1. 大森毅, 細谷東一郎:鑑識化学, 7(2), 155 (2003).