RNase不活化試薬

RNA分解酵素(RNase)は文字通りRNAを分解してしまう上に、オートクレーブをかけても完全に失活しないことからRNAを扱う実験では厄介者とされています。コンタミネーションが起こってから除去することは困難であるため、実験系にもちこまないことが重要です。当社ではRNase除去スプレーやRNase InhibitorなどRNase対策に有効な試薬を取り扱っております。

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RNaseのコンタミネーションはなぜ起こる?

Molecular Cloning によると、外来のRNaseによるコンタミネーションの原因は主に以下の2つです。

バッファーへのコンタミネーション

バッファーはバクテリアや微生物によって汚染されやすく、一度汚染させてしまうとオートクレーブをかけてバクテリアや微生物を死滅させたとしてもRNaseは完全に除去することができません。コンタミネーションを目視で判別することが難しく、少しでもコンタミネーションが疑われる場合はバッファーを破棄する必要があります。

ピペッターを介したコンタミネーション

複数の実験において同じピペッターを使用している場合は注意が必要です。特に前にプラスミド抽出やリボヌクレアーゼプロテクションアッセイなどを行っていた場合、RNase Freeのチップを使用していたとしてもピペッター本体やイジェクターからRNaseが混入する恐れがあります。

コンタミネーションの予防策

●バッファーなどのストック溶液はできるだけ小分けしておく。
●バッファーはRNase Freeのガラス器具やプラスチック器具(ディスポーザブル)、DEPC処理水などを用いて調製する。
●RNAを扱う実験では、使用する器具や試薬をその他の実験と分けて使用する。
●ガラス器具は300℃ 4時間で加熱する。プラスチック器具はDPECなどで処理する。市販のRNase除去スプレーで処理することも有効である。
in vitro転写合成、RT-PCR、cDNA合成にはRNase阻害剤を用いることもある。

※ DEPC (Diethylpyrocarbonate)
タンパク質中のヒスチジンおよびチロシンの化学修飾剤。RNaseの活性中心にあるヒスチジン残基を修飾することで、不可逆的に活性を阻害できる。DEPCは水溶液中で徐々にCO2とエタノールに加水分解される。特にTrisや他のアミンが存在下では急速に加水分解されるため、これらを含むバッファーに使用することはできない。DEPC処理水は水にDEPCを添加後、オートクレーブによってDEPCを分解することで作られる。
なお、DEPCそのものには発がん性があることが疑われており、取り扱いには注意が必要である。

参考文献

田村隆明 編, ライフサイエンス 試薬活用ハンドブック, 羊土社, 2009
Michel R. Green and Joseph Sambrook, "Molecular Cloning", A Laboratory Manual, 4th ed. (2012)