蛍光プローブ (がん)

がん細胞そのものやがんに関連する因子の検出は、がんの発生や進行状況、治療の効果を確認するために重要です。がん細胞では特定の物質の取込み能や代謝活性が通常の細胞と異なることが知られており、これらを利用してがん細胞を検出する試みがなされています。当社ではがんに関連する蛍光プローブを販売しております。

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がん細胞の性質を利用した蛍光プローブ

がん細胞やがんマーカー分子を特異的に検出することは、がんの早期発見や治療において重要です。がん細胞は正常な細胞から生じたものですが、正常細胞とは異なっている性質を有しています。がん細胞の蛍光プローブはこの違いを利用してがん細胞やがんマーカー分子を可視化することができます。以下にがん細胞の性質とそれを利用したプローブの例をご紹介します。

グルコース代謝

がん細胞の特長として、有酸素条件下でもミトコンドリアの酸化的りん酸化ではなく、解糖系を積極的に利用してエネルギーを産生する点が挙げられます(ワールブルグ効果)。酸化的りん酸化に比べ、エネルギーの産生効率が良くない解糖系を用いているため、がん細胞は正常細胞よりも大量のグルコースを消費します。

この性質をがんのイメージングに利用しているのが18F-FDG(Fluorodeoxyglucose)を用いたPET (Positron Emission Tomography)検査です。18F-FDGはグルコースの2位の水酸基を18Fで置換した誘導体であり、細胞に取り込まれても代謝を受けずにそのまま留まります。ワールブルグ効果によりがん細胞は正常細胞よりも多くのグルコースを取り込むため、PETで18F-FDGの分布を調べることでがん細胞の有無を調べることができます。しかしながら正常細胞もグルコースの取り込みを行うためS/N比が低くなること、検査前に絶食が必要であること、また炎症を起こしている細胞にも18F-FDGが集まりやすくがん細胞との区別がつきにくいケースがあるなどの課題が存在します1)

またグルコースアナログである2-NBDGもグルコース取り込みを調べるプローブとして用いられていますが、18F-FDGが抱える課題は残されたままでした。しかしながら2-NBDGの鏡像異性体である2-NBDLGはがん細胞に短時間(約15~20分)で取り込まれるものの、正常細胞ではほとんど取り込まれない1)ことから、2-NBDLGは高いS/N比でがん細胞を検出できる蛍光プローブとして注目されています。

参考文献

  1. 山田勝也, 尾上浩隆, 豊島正, 山本敏弘:特許公報, 第6019500号