制限酵素・修飾酵素

制限酵素は2本鎖DNAの特定の塩基配列を認識し、これを切断する働きを持っています。制限酵素の利用によりDNAの解析や遺伝子組み換えが可能になり、生命科学研究は大きく進展しました。制限酵素はその種類により切断する配列が異なります。当社では、種々の遺伝子配列に対応した制限酵素を幅広く取り揃えています。

学術コンテンツ

遺伝子のクローニングや構造・機能解析では核酸の切断、修飾、分解などの操作が必要になります。核酸の切断は制限酵素、修飾は脱りん酸化/りん酸化酵素、分解は核酸分解酵素などの酵素が使用されています。それぞれの酵素の概要と特長を下記にまとめました。

制限酵素

制限酵素は二本鎖DNAの特定の配列(認識配列)を認識し、切断する酵素です。クローニングにおいてベクターの挿入に必要なDNA断片の作成などに使用されます。制限酵素はもともとバクテリアがファージなどの感染から自身を守るために外来DNAを切断する役割があります。(自身のDNAには修飾を加え、制限酵素による切断を防いでいます)。

制限酵素は切断様式や反応に必要な要素の違いで、タイプI~IVに分けることができます。

タイプ I

3種類の異なるサブユニット(配列認識、エンドヌクレアーゼ、メチルトランスフェラーゼ)から構成される制限酵素です。切断部位は認識配列から1kbp以上離れており、一定ではありません。反応にはS-アデノシルメチオニン(SAM)やATPが必要となります。

タイプ II

配列認識およびエンドヌクレアーゼ活性をもつ制限酵素です。修飾活性はもちません。認識部位(もしくはその近傍)を正確に切断する為、クローニングなどには主にタイプIIの制限酵素が用いられます。反応にはMg2+が必要です。

タイプ III

2つのサブユニットから構成される制限酵素です。切断部位は認識配列から25~28bpほど離れています。反応にはATP、Mg2+が必要です。

タイプ IV

メチル化、ヒドロキシメチル化、グルコシルヒドロキシメチル化されたDNAを切断する制限酵素で、認識部位と切断部位は離れています。

 

制限酵素は特有の認識配列を持ち、その多くが回文(パリンドローム)構造です(図1)。別々の制限酵素でも同じ配列を認識する場合、これらの制限酵素はイソシジマーと呼ばれ、同じ認識配列でも切断様式が違う場合にはネオシジマーと呼ばれます。

また制限酵素は認識配列だけでなく、切断様式も種類によって異なり、それによって生じる末端の構造は粘着性末端(5'突出末端、3'突出末端)と平滑末端に大別されます。一般的に粘着性末端は、平滑末端に比べ、その後のライゲーション効率が高いとされています。

制限酵素反応は通常37℃で行われます。制限酵素によって反応に最適な塩濃度は異なるので、それぞれの制限酵素に適したバッファーを選択する必要があります。ニッポンジーンの制限酵素は、バッファー条件を始め、各種切断条件や分類を 遺伝子工学用試薬カタログにて詳しく記載しています。

修飾酵素

酵素による核酸の修飾には脱りん酸化やりん酸化などがあります。

二本鎖DNAのライゲーション反応は5'りん酸基末端と3'水酸基末端を結合する反応であり、りん酸化や脱りん酸化はライゲーション反応の前処理で重要な役割を果たします。プラスミドベクターのセルフライゲーションを防ぐためには、ベクターの5'末端を脱りん酸化することが有効です。脱りん酸化にはバクテリア由来のアルカリフォスファターゼ(BAP)や仔牛小腸由来のアルカリフォスファターゼ(CIP)が良く使用されます。 一方、5'末端がりん酸化されていない断片をライゲーションに使用する場合は、DNA断片のりん酸化が必要です。りん酸化酵素としてファージ由来のT4ポリヌクレオチドキナーゼが使用されています。

核酸分解酵素

核酸分解酵素は、核酸を加水分解する酵素です。DNAとRNAの両方を分解するものをヌクレアーゼといい、末端から分解していくものをエキソヌクレアーゼ、核酸の内部から切断するものをエンドヌクレアーゼと言います。制限酵素もエンドヌクレアーゼの一種です。さらにDNAのみ分解するものをDNase、RNAのみ分解するものをRNaseといいます。核酸分解酵素は核酸抽出におけるDNAやRNAの除去、DNA断片の平滑化、DNA/RNAの構造や相互作用の解析などに使用されます。
下記に代表的なヌクレアーゼとその特長・用途をまとめました。

ヌクレアーゼ 切断
核酸
一本鎖 二本鎖 特長 用途
DNase I DNA Mg2+存在下でランダムに切断。 DNAの除去、DNaseフットプリント解析など。
RNase A RNA × ピリミジン塩基の3'末端にあるホスホジエステル結合を切断。 RNAの除去など。
RNase H RNA × DNA-RNAハイブリッド鎖のRNAを分解。 逆転写反応後の鋳型RNAの分解など。
Nuclease P1 DNA
RNA
× 二本鎖核酸の一本鎖にも作用する。Zn2+存在下で切断。 一本鎖DNAの選択的分解、DNA末端の平滑化など。
Nuclease S1 DNA
RNA
× 二本鎖核酸の一本鎖にも作用する。Zn2+存在下で切断。 一本鎖DNAの選択的分解、DNA末端の平滑化、S1マッピングなど。
Mung Bean Nuclease DNA
RNA
× 二本鎖核酸の一本鎖にも作用する。Nuclease S1よりも末端が揃いやすい。 一本鎖DNAの選択的分解、DNA末端の平滑化など。

参考文献

Roberts, R. J. et al. A nomenclature for restriction enzymes, DNA methyltransferases, homing endonucleases and their genes. Nucleic Acids Res. 31, 1805-1812 (2003). 今川和友, 山川民夫 監修, 生化学辞典 (第4版), 東京化学同仁, 2007
田村隆明 編, 改訂第3版 遺伝子工学実験ノート(上), 羊土社, 2010
Michel R. Green and Joseph Sambrook, "Molecular Cloning", A Laboratory Manual, 4th ed. (2012).