薬剤スクリーニング関連試薬

創薬の初期ステップとして、薬剤候補化合物のスクリーニングがあります。スクリーニングでは膨大な数の化合物から、次のステップに進む候補化合物を見出すため、迅速かつ効率的に結果を得られるハイスループットスクリーニングが求められます。当社では薬剤探索のスクリーニングに有用なキットや酵素を取り扱っております。

学術コンテンツ

薬剤スクリーニングとは?

創薬におけるスクリーニングとは、多くの化合物の中から目的とする作用を有する化合物を選別することを指します。スクリーニングには様々な手法があり、創薬研究のステージや目的に応じて最適な手法を選択することが重要となります。
疾患の原因となる標的 (受容体、酵素、イオンチャネルなど)が明らかとなっている場合には、その標的との相互作用を解析することによってスクリーニングを行います。これを標的ベーススクリーニング (target based screening)といいます。一方で、標的が不明である場合に用いられる手法を表現型スクリーニング (phenotypic screening)といいます。また、製薬企業では数万~数百万の膨大な数の化合物をスクリーニングすることもあります。こうした手法をハイスループットスクリーニング (high throughput screening : HTS)といい、創薬研究の一次スクリーニングとして用いられています。

標的ベーススクリーニング

疾患の原因となる標的分子を設定し、標的分子に対する機能変化を指標にスクリーニングを実施する手法で、現在の創薬研究の主流となっているスクリーニング方法です。例として、標的として特定した酵素と基質を用いた評価系において、化合物を添加しその際の基質の変化量を測定することで酵素に対する阻害作用等を測定することができます。また、標的分子が発現している細胞または人工的に発現させた細胞を用いて、化合物による特定の変化を測定することもあります。

表現型スクリーニング

標的ベーススクリーニングが特定の標的に絞ったものであるのに対して、表現型スクリーニングは標的分子を設定せずに、細胞や臓器などの表現型変化を指標にスクリーニングする手法です。表現型スクリーニングでは疾患の特徴を再現した細胞モデルを用意し、細胞増殖や細胞死などを指標にし、それを変化させる化合物のスクリーニングを行います。また、近年ではES細胞やiPS細胞などの幹細胞製造技術の進歩もあり、よりヒトの疾患に近い状態を再現したスクリーニングも可能となっています。表現型スクリーニングを行う場合では、ヒットした化合物の標的が不明であるため、標的を同定する手法を確立することも必要となります。

メリット

デメリット

標的ベース
スクリーニング

スループットが高い

ヒット化合物の作用機序が明確

標的分子に限りがある

ヒット化合物が疾患の表現型を変化させるか不明

表現型
スクリーニング

新規作用機序を持った化合物が得られる

表現型のメカニズムが不明であってもスクリーニング可能

スループットが低い

ヒット化合物の作用機序を同定するための評価が必要

ハイスループットスクリーニング

製薬企業では数万から数百万規模の化合物を集めたライブラリーを保有しており、こうした膨大な数の化合物を迅速に評価するための手法がHTSです。HTSでは大量の化合物を評価するために、ロボットによって操作を自動化して行われます。

参考文献

  1. 公益社団法人日本薬学会:
    https://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?スクリーニング (2023年4月閲覧)
  2. 津本浩平, 前仲勝実 編:
    「実験医学別冊 創薬研究のための相互作用解析パーフェクト」, (羊土社)(2021)