ES/iPS細胞検出/除去試薬
ES/iPS細胞の培養では、未分化状態が維持されていることを確認するために、抗体による未分化マーカーの免疫染色が多用されています。代表的な未分化マーカーには、転写因子であるNanogやOct3/4、細胞表面抗原であるSSEA-4、Tra-1-60、Tra-1-81等があります。これらの抗体を用いた免疫染色は、未分化マーカー発現を確認するために広く使用されています。
同じくヒトES/iPS細胞マーカーとして使用できるrBC2LCNがあります。rBC2LCNはヒトES/iPS細胞膜上に高い親和性を持ち、上記の抗体と同様にヒトES/iPS細胞の未分化マーカーとして使用可能です。rBC2LCNは、ヒトES/iPS細胞に対する毒性をほとんど示さないため、細胞を生きたまま染色し、そのまま培養を続けることが可能です。また、蛍光標識されたrBC2LCNをヒトES/iPS細胞を培養している培地に添加するだけで染色可能であるため、抗体による染色と比較し、非常に簡単に、また短時間でヒトES/iPS細胞の染色像を得ることができます。
ヒトES/iPS細胞はあらゆる細胞に分化する能力(多能性)を持つため、再生医療の細胞源として大きな期待が寄せられています。しかし、移植細胞中にヒトES/iPS細胞が残存していた場合、それらの残存細胞が移植先で腫瘍化する恐れがあります。その腫瘍化がヒトES/iPS細胞を使用した再生医療の課題となっており、様々な除去方法が開発されています。例えば、rBC2LCNに緑膿菌由来外毒素を融合させたrBC2LCN-PE23やrBC2LCN-PE38(StemSure® hPSCリムーバー)は、ヒトES/iPS細胞を含む培地に添加するのみで、ヒトES/iPS細胞を殺傷することができます。
rBC2LCNはフローサイトメトリーにも使用可能のため、フローサイトメトリーを用いて分化細胞中に残存するヒトES/iPS細胞を除去することが可能です。
CPM(カルボキシペプチダーゼM)は、近年の研究により気道や肺胞の前駆細胞のマーカーとして報告されています。CPM抗体を用いてヒトiPS細胞から分化させた肺前駆細胞をソーティングすると、CPMが高発現している細胞集団が得られ、これらは肺胞上皮細胞や気道上皮細胞へ分化誘導することができます。
また、同じくRNA Switch™は、ヒトES/iPS細胞や分化細胞の検出や除去に使用可能です。RNA Switch™はmiRNAを用いた技術です。細胞にmiRNAを導入するだけで、迅速かつ簡単に細胞の選別をすることができます。また、RNA Switch™は、miRNAの細胞内での活性化の状態を細胞が生きたまま可視化させることもでき、創薬シード探索にも使用可能です。
再生医療においては、移植した幹細胞の患部への生着が治療効果に大きく反映されるため、移植細胞の生体内動態、組織・臓器への集積・生着効率を判断する必要があります。Fluclair™は、細胞毒性が低い量子ドットです。Fluclair™を導入した細胞を生体内で移植することで、移植細胞の生体内動態や集積・生着効率をイメージング装置を用いて確認することができます。