一次抗体 (呼吸/循環)
Apelinは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの一種で、既にオーファン受容体として同定されていたAPJ受容体の内因性リガンドとして発見されました。このApelinは多様な心血管保護作用を有することから、有力な循環系創薬ターゲットとして期待されています。当社はApelinに対して強力な中和活性を有する高機能抗体を提供しています。
学術コンテンツ
血液循環とその調節
血液は全身を循環しながら細胞へ酸素や栄養を供給し、二酸化炭素や老廃物を回収します。生体内の環境変化に応じて、十分な血液を、必要とする臓器に届けられるように血液循環は様々な調節を受けています。
血液循環は主に心臓から送り出される血液量や末梢血管の抵抗性 (血液の流れやすさ)、全身の血液量を変化させることで調節されます。例えば、心臓の拍動数を増加させて、心臓から押し出す血液量を増やし、一部の末梢血管の血管を拡張させれば、その部位にはより多くの血液が供給されることになります。このような血液循環の調節は自律神経やホルモンが担っています。
血管を流れる血液量と血管の抵抗性が変化すると、血液が血管の壁を押すときの圧力、すなわち血圧も変化します。血圧は心臓が収縮しているときに最も高く (収縮期血圧)、拡張しているときに最も低くなります (拡張期血圧)。正常な人でも上記のように血圧は変化しますが、基準となる範囲よりも血圧が高い状態を高血圧と呼び、脳卒中や心臓病、腎臓病の原因となります。
レニン-アンジオテンシン系による血圧調節
代表的な血圧調節メカニズムとしてレニン-アンジオテンシン系が挙げられます。タンパク質分解酵素の一種であるレニンは腎臓より血液中に放出され、アンジオテンシノーゲンに作用し、アンジオテンシンIを産生します。次にアンジオテンシンIはアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって、アンジオテンシンIIに変換されます。アンジオテンシンIIは血管平滑筋を収縮させることで血圧を上昇させます。加えて副腎からのアルドステロン分泌を促進し、腎臓からのNa+排出を抑制します。これにより血液中にNa+が蓄積し、血管中の体液量が増加するため血圧も上昇します。(アルドステロンを含めた血圧調節機構をレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と呼びます。)
レニン-アンジオテンシン系の阻害剤は降圧作用を示し、特にアンジオテンシン変換酵素の阻害剤は高血圧の治療薬として使用されています。また血圧降下作用を示す特定保健用食品もアンジオテンシン変換酵素の阻害作用を持つものが多く存在します。
ただしアンジオテンシンIIはAT1Rではなく、AT2Rという受容体を介した場合には血管弛緩作用を示し1)、アンジオテンシン変換酵素2 (ACE2) によって産生される代謝物 (アンジオテンシン1-7) にも血圧降下作用があると報告されていることから2)、レニン-アンジオテンシン系は血圧昇圧/降圧全体を制御するシステムではないかと考えられています1)。
なお生理活性ペプチドリガンドApelinの受容体APJRはAT1Rと結合し、アンジオテンシンIIのシグナルを抑制したり3)、ACE2の発現促進によってACE2シグナルを増幅する4)ことが明らかになっており、その血圧降下作用が注目されています。
参考文献
- 松井利郎:化学と生物, 53(4), 228 (2015).
- Ren, Y., Jeffrey L.G., and Oscar A. C.:Hypertension, 39(3), 799 (2002).
- Chun, H. J., et al.:The Journal of clinical investigation, 118(10), 3343 (2008).
- Sato, T. et al.:The Journal of clinical investigation, 123(12), 5203 (2013).