細胞増殖/毒性測定試薬

当社では、細胞毒性 (死細胞数)、生細胞数、アデノシン三リン酸 (Adenosine triphosphate; ATP) を測定する製品をそれぞれ販売しています。薬剤スクリーニングや培地の最適化にご使用ください。

主に細胞毒性(死細胞数)の測定で使用される製品

損傷を受けた細胞から遊離する乳酸脱水素酵素(Lactate Dehydrogenase; LDH)の活性を発色法で測定します。

  • LDH-細胞毒性テストワコー
  • Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST
主に生細胞数の測定で使用される製品

細胞内脱水素酵素により還元されて水溶性ホルマザンを生成する発色基質「WST-8」を採用した製品です。1ボトルで試薬調製は不要です。

  • Cell Counting Kit-8
生細胞数と死細胞数を測定するキット

Cytotoxicity LDH Assay Kit-WSTとCell Counting Kit-8がセットになったキットです。

  • Viability / Cytotoxicity Multiplex Assay Kit(生死細胞測定キット)

学術コンテンツ

細胞数の測定方法には、コロニー形成法、クリスタルバイオレット法、[3H] チミジン取り込み法、MTT法およびWST法などが利用されています。

コロニー形成法は、細胞の増殖能力を指標として顕微鏡によりコロニー数を計測する手法です。また、[3H] チミジン取り込み法は、放射性同位元素 (RI) で標識したチミジンを細胞中のDNAに取り込ませて、RI標識のチミジン量をシンチレーションカウンター等で定量する手法です。

一方、MTT法やWST法は、還元発色試薬と生細胞中の脱水素酵素活性を利用して、吸光度測定により細胞数を計測する方法です。これらは、測定の手軽さ、安全性、再現性などの点において、前者に比べ優れた測定方法であり、細胞増殖試験や薬剤感受性試験など幅広く利用されています。そのため、これから実験を始めようとする方にも、お勧めの測定方法です。その他、発色試薬よりも高感度な測定ができる蛍光試薬を用いた方法もあります。

細胞増殖・毒性試験の指標と測定方法

酵素・呼吸活性を指標とした測定法

細胞内に存在する種々の酵素活性を指標とした手法です(図1)。還元発色試薬や酵素基質部位を有する試薬などを用いた測定方法であり、操作が簡便なため、マイクロプレートによる多検体処理に適しています。主に細胞増殖測定、毒性試験などの薬物スクリーニング等に利用されています。

図1 酵素・呼吸活性の指標と代表的な試薬

遊離LDH活性測定

細胞膜に損傷を受けた細胞から漏出する乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定する方法です(図2)。上記の生細胞数測定法とは異なり、細胞が損傷した死細胞を測定します。WST法など測定が困難なNK細胞による死細胞測定などに便利である。 生細胞数を測定方法とは指標が違うため、細胞毒性試験などで異なる結果が得られます。

図2 遊離LDH活性測定の原理

ヌクレオシド取り込み量測定法

細胞分裂に伴うDNAの複製を、細胞増殖の指標とした手法です。検出方法の違いにより、取り込ませるヌクレオシドの種類が異なります(図3)。

① [3H] チミジン取り込み法
[3H]チミジンをDNA複製時に取り込ませた後、放射性物質であるトリチウム量を計測します。放射性物質のため、高感度な測定が可能ですが、特別な施設にて計測する必要があります。

② BrdU取り込み法
ブロモデオキシウリジン(BrdU)をDNA複製時に取り込ませた後、酵素標識抗BrdUモノクロナール抗体を用いてBrdUを定量します。非ラジオアイソトープ法として普及していますが、酵素標識抗体を用いるため、細胞を固定化する必要があります。

図3 ヌクレオシド取り込み量測定法の原理

細胞内ATP量測定

細胞内に存在するATP量を指標とした手法です(図4)。ホタルルシフェラーゼによるATP検出法に基づいた発光量を計測します。測定時間が短く(約10分間)、酵素活性を指標とした比色法(MTT法, WST法)や蛍光法(Calcein-AM)に比べて 高感度な測定ができますが、測定時、ATPを細胞外に出すために細胞膜を破壊する操作があり、発光測定用の検出機器を所有している必要があります。

図4 細胞内ATP量測定の原理

本記事は同仁化学研究所「細胞増殖測定 細胞染色プロトコル 第三版」より一部抜粋して掲載しております。

細胞増殖・毒性試験の指標 1つで大丈夫?

細胞傷害性を確認する際、生細胞のみ又は死細胞のみを指標とした評価では、データの信頼性が十分でない場合もあることから、測定原理の異なる複数の指標で評価することで実験の裏付けを行うケースが増えています。

MTT法やWST法など脱水素酵素活性を細胞毒性の指標とした測定と合わせて、細胞膜損傷を指標とした遊離LDH活性測定も行われています。これは、例えば、WST法を用いた毒性試験で、一見、細胞毒性が認められる結果が得られた場合でも、細胞数が減少しているのか、もしくは細胞の脱水素酵素活性が低下しているのか、の違いが分かりません。そこで、別の指標として遊離LDH活性等を利用した測定が併用されています(図5)。

図5 細胞傷害性を2つの指標で評価する理由