発光プローブ

発光プローブは、化学反応によって基質が励起状態となり、その後基底状態へ戻る際に光を発する物質のことです。化学反応を利用しているため選択性が高いためノイズが小さくなり、大きいシグナルを得られることが特長です。広いダイナミックレンジに対応できるためATPやカルシウムイオンの動態を調べる際によく使用されます。またレポーター遺伝子として特定の細胞を可視化したり、遺伝子発現を調べる際にも利用されます。当社では従来の発光プローブの基質より高性能であるAkaLumine-HClやセレンテラジンを販売しております。

学術コンテンツ

発光プローブの種類と特長

ホタルルシフェラーゼ (Firefly Luciferase/FLuc)

ホタルルシフェラーゼは、ルシフェリンを基質とする発光酵素です。ルシフェラーゼはATPとMg2+存在下でルシフェリンをアデニルルシフェリンに変換します。アデニルルシフェリンはO2と反応し、中間体を経て波長約560 nmの光を発します。

北米産のホタルルシフェラーゼは中性~弱塩基性の溶液で黄緑色の光(560 nm)を発しますが、酸性溶液では弱い赤色の光(615 nm)を発します。そのため酸性条件となるオルガネラでは赤色の発光となり、その強度は大きく減弱します。なおヒカリコメツキムシや鉄道虫からクローニングされたルシフェラーゼは酸性条件下でも強い発光を示すことが知られています。

ホタルルシフェラーゼは標準的に用いられている発光酵素ですが、その発光ピークである560 nmは生体組織に吸収されやすく、生体深部のイメージングに課題が残されていました。当社ではルシフェリンに変わる人工基質AkaLumine-HClを販売しております。AkaLumine-HClは水やヘモグロビンによる吸収を受けにくい近赤外線領域(670-680 nm)の光を発するので、より生体深部の観察が可能です。

エクオリン/イクオリン (Aequorin)

エクオリンは、オワンクラゲ (Aequores aequorea)由来の発光タンパク質です。実際にはタンパク質部分であるアポエクオリン、基質であるセレンテラジン、分子状酸素O2から構成されます。

エクオリンの発光はカルシウムイオン依存的に生じるため細胞内カルシウムイオンの測定などに利用されます。エクオリンにカルシウムイオンが結合すると、セレンテラジンが酸化的に分解され、その過程で生じる励起カルボニル基が基底状態に戻るときのエネルギーが発光(約465 nm)として放出されます。

なおエクオリンは近くにGFPが存在すると生物発光共鳴エネルギー移動機構(BRET)により緑色光を放出します。この仕組みはタンパク質相互作用の解析に利用されています。

当社ではセレンテラジンの合成誘導体である セレンテラジンh を販売しております。通常のセレンテラジンと比較して、エクオリンとの複合体の発光強度は10倍ほど強く、毒性が低く、細胞膜透過性が高いという特長があります。

レニラルシフェラーゼ (Renilla Luciferase/RLuc)

レニラルシフェラーゼはウミシイタケ(Renilla reniformis)由来のルシフェラーゼです。エクオリン同様セレンテラジンを基質とし、発光のピークは約480 nmです。ホタルルシフェラーゼとは基質が異なるため、2種類の測定系を併用したデュアルレポーターアッセイに利用されます。

ウミホタルルシフェラーゼ (Cypridina Luciferase/CLuc)

ウミホタルルシフェラーゼはウミホタル(Cypridina noctiluca)由来の発光酵素です。ウミホタルルシフェリンを基質とし、発光のピークは約460 nmです。ウミホタルルシフェラーゼの特長は分泌型のタンパク質であることで、細胞破砕を必要としません。また後述のコペポーダルシフェラーゼと比較して、ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤に対する耐性が高いとされています。

コペポーダルシフェラーゼ (Gaussia Luciferase/GLuc)

コペポーダルシフェラーゼは動物プランクトンとして知られる甲殻類のカイアシ類 (Gaussia属)由来の発光酵素です。セレンテラジンを基質とし、発光のピークは約480 nmです。ウミホタルルシフェラーゼと同様、分泌型のタンパク質であり、ハイスループットスクリーニングに利用されます。

参考文献

三輪佳宏 編, 実験がうまくいく蛍光・発光試薬の選び方と使い方, 羊土社, 2007
秋元秀俊 安東頼子 近江谷克裕 著, "発光タンパク質による光イメージング." 生物物理 49.2 (2009): 070-074.
田村隆明 編, ライフサイエンス 試薬活用ハンドブック, 羊土社, 2009