アフィニティータグ

アフィニティータグ (エピトープタグ) は、目的のタンパク質に付加する短いポリペプチドやタンパク質です。目的タンパク質タグを付加し、タグ抗体を用いることで目的タンパク質の検出や精製を行うことができます。
当社では、一般によく使用されるHisタグやDYKDDDDKタグのみならず、高アフィニティーな「PAタグシステム」を提供しています。

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アフィニティータグとは?

アフィニティータグは、目的のタンパク質に付加する短いポリペプチドやタンパク質です。エピトープタグとも呼ばれます。目的タンパク質に対する抗体が存在しない場合でも、アフィニティータグを認識する抗体があれば、目的タンパク質の検出や精製を行うことができます。一般的にアフィニティータグは目的タンパク質をコードする遺伝子配列の前後もしくは内部に、タグの遺伝子配列を挿入することで付加されます。

  • 長所

    • 目的タンパク質に対する抗体が存在しない場合でも、目的タンパク質の検出や精製を行うことができる。
    • 内在性のタンパク質と区別ができる。
    • タグを検出するため、目的タンパク質に類似のタンパク質と交差反応しない。
    • タンパク質の可溶性を向上させることができる。(アフィニティータグの種類による)
  • 短所

    • アフィニティータグの付加により、目的タンパク質の立体構造や活性が変わる可能性がある。
    • 遺伝子工学によるアフィニティータグ配列の挿入が必要となる。
    • プラスミドなどで発現させた場合、内在性のタンパク質と比較して過剰発現となる。

アフィニティータグ 比較表

主要なアフィニティータグについて、その特性および長所・短所をまとめました。

アフィニティータグ PA DYKDDDDK
(FLAG®)
※1
6×His HA
由来 ヒト
ポドプラニン
人工配列 人工配列 インフルエンザウイルス
ヘマグルニチン
配列 GVAMPGAEDDVV DYKDDDDK HHHHHH YPYDVPDYA
残基数 12 8 6 9
分子量(kDa) 1.2 1.0 0.8 1.1
抗体結合力※2
(Kd(M))
4.9×10-10 2.8×10-8 1.0×10-5~6 2.8×10-9
溶出方法 ペプチド競合溶出
酸溶出
ペプチド競合溶出
酸溶出
イミダゾール競合溶出
キレート剤溶出など
ペプチド競合溶出
酸溶出
レジン再利用法 3M MgCl2 + MES(pH6.0) Tris-HCl + Glycine Buffer(pH2~3.5) 0.5M Imidazole(pH7.4) Tris-HCl + Glycine Buffer(pH2~3.5)
長所
  • タグと抗体の親和性が非常に高い
  • タグと抗体の特異性が高い
    (対DYKDDDDK※2)
  • 中性条件でレジンの再生が可能
  • 抗体がタグのループ構造を認識できるため膜タンパク質への挿入も可能
  • 親水性なので融合タンパク質の表面付近に存在しやすい
  • 3×FLAGは100 fmolのタンパク質を検出可能
  • 抗体はほとんどの哺乳動物細胞および細菌細胞のライセートで交差しない
  • エンテロキナーゼによって切断できる
  • 尿素やグアニジン塩酸塩で変性させたタンパク質の精製も可能
  • タグが小さいために組換えタンパク質に対する影響が少ない
  • 比較的低コスト
  • 担体に結合させたまま、リフォールディングが可能
  • タグが小さいために組換えタンパク質に対する影響が少ない
  • 親水性なので融合タンパク質の表面付近に存在しやすい
短所
  • ヒトポドプラニン発現細胞(HEK293, COS-7)では内在性のポドプラニンが検出される
  • 比較的高コスト
  • 宿主のヒスチジン残基リッチな領域と非特異的に吸着する
  • 還元剤、酸化剤、キレート剤を含むサンプルには使用不可
  • アポトーシスで活性化されるカスパーゼ3/7により切断され、免疫反応性を失う※3
アフィニティータグ V5 c-Myc GFP GST MBP
由来 シミアンウイルス
V protein
ヒト
c-Myc
オワンクラゲ
GFP
日本住血吸虫
Glutathione-S-transferase
大腸菌
Maltose Binding Protein
配列 GKPIPNPLLGLDST EQKLISEEDL - - -
残基数 14 10 238 218 370
分子量(kDa) 1.4 1.2 27.0 26.0 43.0
抗体結合力※2
(Kd(M))
- 2.2×10-9 - 1.0×10-5~6 -
溶出方法 ペプチド競合溶出
酸溶出
ペプチド競合溶出
酸溶出
酸溶出 Glutathione競合溶出 Maltose競合溶出
レジン再利用法 Tris-HCl + Glycine Buffer(pH2~3.5) Tris-HCl + Glycine Buffer(pH2~3.5) - Glutathione,Tris-HCl + Glycine Buffer(pH2~3.5) -
長所
  • タグが小さいために組換えタンパク質に対する影響が少ない
  • タグが小さいために組換えタンパク質に対する影響が少ない
  • 親水性なので融合タンパク質の表面付近に存在しやすい
  • GFPの蛍光を観察することも可能
  • 発現タンパク質の可溶性が増加する
  • 酵素・基質反応であるため、特異性が高い (Glutathioneをリガンドとした場合)
  • マルトースとの競合溶出となるため、非常に穏和な条件で精製
  • 発現タンパク質の可溶性が増加する
短所
  • 内在性c-Mycも検出する
  • 分子量が大きく、タンパク質の構造・機能を阻害する可能性がある
  • 変性条件下では抗体がタグを認識できず、精製ができない
  • 分子量が大きく、タンパク質の構造・機能を阻害する可能性がある
  • 変性条件下では抗体がタグを認識できず、精製ができない
  • 分子量が大きく、タンパク質の構造・機能を阻害する可能性がある
  • 変性条件下では抗体がタグを認識できず、精製ができない
  • 1 FLAG®はSigma-Aldrich社の登録商標です。
  • 2 当社独自調査によるもので、各アフィニティータグの性能を保証するものではありません。
  • 3 Schembri, Laura, et al. "The HA tag is cleaved and loses immunoreactivity during apoptosis." Nature methods 4.2 (2007): 107-108.

参考文献

Jarvik, Jonathan W., and Cheryl A. Telmer. : "Epitope tagging.", Annual review of genetics, 32.1 (1998): 601-618.
武縄忠臣 編, タンパク質実験ハンドブック, 羊土社, 2003
岡田雅人 宮崎香 編, 改訂第4版 タンパク質実験ノート 上 タンパク質をとり出そう (抽出・精製・発現編), 羊土社, 2011
永田恭介 奥脇暢 編, 目的別で選べるタンパク質発現プロトコール, 羊土社, 2013