酸化ストレス測定試薬

当社では酸化ストレス関連物質を定量する多様な製品をラインアップしています。

H-ORAC測定用キット

食品の抗酸化能をORAC (Oxygen Radical Absorbance Capacity) 法で測定します。

SOAC法関連試薬

ORAC法は測定できないカロテノイド類等の抗酸化能をSOAC (Singlet Oxygen Absorption Capacity) 法で定量します。

ACE Kit-WST

アンジオテンシンⅠ変換酵素 (ACE) の阻害活性を測定します。

8-OHdGチェック

DNAの酸化損傷によって生じる8-ヒドロキシーデオキシグアノシン (8-OHdG) を検出します。

学術コンテンツ

生命は酸素を利用することで、効率的にエネルギーを取り出すことが可能となり、大きく進化してきました。しかし、酸素の一部はその代謝過程で『活性酸素』と呼ばれる分子に変わります。この活性酸素はヒトの生命維持に重要な働きをしていますが、過剰になると酸化ストレスに陥り細胞を傷つけ、疾病や老化の引き金になると考えられています。

そのため、体内では活性酸素を消去するための様々な仕組み(抗酸化能)が働いています。正常な状態では抗酸化能によって活性酸素は速やかに消去されますが、生体内の抗酸化機能で除去しきれない過剰な活性酸素が生じる場合、生体の構造や機能を担っている核酸、タンパク質や脂質を酸化して損傷を与え、構造や機能を障害します。

このような、活性酸素が過剰に存在している状態、つまり、『活性酸素の生成と消去のバランスが崩れた状態』を【酸化ストレス】と呼びます。酸化ストレスはからだのサビつき度を表す指標と言われ、肥満や生活習慣病、認知症などの脳老化、疲労、白内障や肌老化など様々な疾病メカニズムに関与しています。

活性酸素種 (Reactive Oxygen Species/ROS) とは

表1 主な活性酸素

酸素分子(O2) に由来し、反応性の高い酸素種を総称して活性酸素または活性酸素種と呼びます。酸素分子が1電子還元されて生成するスーパーオキシドアニオンラジカル(O2・-)や2電子還元されて生じる過酸化水素(H2O2)、H2O2 がFe2+などによりさらに還元(3電子還元) されて生じるヒドロキシラジカル(OH)などが挙げられます。今挙げたO2・-、H2O2OHに加え、一重項酸素(1O2) の4種類を狭義の活性酸素といい、広義には一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、過酸化脂質(LOOH) も活性酸素に含まれます(表1)。

また、放射線によって水から電子が放出される際にも活性酸素種が生成されます。O2・- は、NO・が存在するとパーオキシナイトライト(ONOO-) に変換されます。また、O2・- は、自発的あるいはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD) の作用により、速やかに過酸化水素(H2O2) と酸素(O2) に不均化されます。H2O2はグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx) やカタラーゼの存在下で水(H2O) と酸素(O2) になり、無毒化されます(図1)。

図1 活性酸素関連図

酸化ストレスマーカー

酸化ストレスマーカーは大きく分けて、①抗酸化酵素、②抗酸化物質、③活性酸素によって生じた生体内産物、の3つに分類されます(図2)。抗酸化酵素とは『活性酸素を分解除去する酵素』を意味し、抗酸化物質とは『活性酸素を補足・中和して無毒化する物質』を示します。活性酸素によって生じた生体内産物とは『核酸やタンパク質などが酸化的障害を受け変異したもの、またはその代謝物』を示します。酸化ストレスの評価方法として、①②は抗酸化能の増減、代謝物量を確認、③は生体内産物そのもの、またはその代謝物量を確認します。

活性酸素は、放射線、喫煙、さらには日常生活における呼吸によっても生じます。この活性酸素を消去するために一番最初に立ち向かうのは①抗酸化酵素です。抗酸化酵素にはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)などが挙げられます。

もしこの抗酸化酵素が消去できる量以上の活性酸素が生体内で発生していた場合、次に活性酸素に立ち向かうのは②抗酸化物質です。抗酸化物質にはグルタチオン、ビリルビン、ビタミン類などが挙げられます。

この抗酸化物質でも活性酸素を消去しきれなかった場合、活性酸素は核酸(DNA)、タンパク質、脂質などを攻撃して損傷を与えます。DNAやタンパク質、脂質などの分子は細胞を構成しており、これらが活性酸素により酸化変性されることによって、細胞機能をも障害されます(③)。

活性酸素量を直接測定することが可能であれば、生体内の状態を一早く知ることができます。電子スピン共鳴装置(Electron Spin Resonance:ESR) によってフリーラジカルに類する一部の活性酸素は直接、DMPOやCarboxy-PTIO などのスピントラップ剤の存在下で測定することが可能です。しかし、測定には高価な装置が必要であり、かつ、定量的な測定には技術を要することから簡単には測定ができません。一方、上記のような酸化ストレスマーカーは比較的簡便に測定が可能であり、酸化ストレスを評価するためによく用いられます。また、抗酸化機能に関わる物質量(活性)の変動を知ることで、酸化ストレスや病態の進行度合いを知ることができます。

図2 活性酸素の生体内での動きと酸化ストレスマーカー

本記事は同仁化学研究所 「はじめての酸化ストレスマーカー測定プロトコル ~カスタマーサポートの視点から~」より一部抜粋して掲載しております。