タンパク質発現ベクター

当社では動物細胞におけるタンパク質発現に最適化したプラスミドベクターを多数取り揃えています。

pCAG Vectorシリーズは、強力なプロモーターであるCAGプロモーターを採用し、目的のタンパク質の発現量の向上を実現しています。
pEBMulti vectorシリーズは、宿主中においてプラスミドが細胞分裂後の娘細胞に分配されるという特性があり、宿主がゲノムに組み込まなくても安定発現株と同等の状態になります。

その他、蛍光タンパク質やFC領域に目的遺伝子を融合させる専用のプラスミドベクターもご紹介しています。

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タンパク質発現ベクターの特徴

生命科学分野の著しい進歩において、遺伝子解析は重要な役割を果たしてきました。その中でも特にタンパク質発現実験は、目的とする遺伝子の解析に大きく寄与してきたといえます。また近年ではタンパク質発現において得られた遺伝子産物が医療や農業、そして工業といった分野においても使用するなど、基礎研究のみならず多岐にわたる分野において貢献しています。

タンパク質発現においては、環状DNAであるタンパク質発現ベクターに目的の遺伝子を組み込んで使用する手法が最も広く使用されます。タンパク質発現ベクターにはプロモーター、ターミネーター、翻訳開始シグナルといった遺伝子の転写、翻訳に必要な配列が含まれています。多くの場合、HEK293T細胞やCOS-7細胞のようなラージT抗原を発現する細胞に目的のタンパク質を大量に発現させるためにSV40プロモーターも組み込まれています。さらにタンパク質発現ベクターを取り込んだ細胞を選別するための耐性遺伝子も組み込まれています。目的の遺伝子が組み込まれたタンパク質発現ベクターは動物細胞をはじめとする宿主にトランスフェクション法等により導入されます。

 

タンパク質発現ベクターの例
目的のタンパク質をコードする遺伝子はCAGプロモーターの下流に位置するマルチクローニングサイト (MCS) に組み込みまれます。SV40プロモーターはHEK293T細胞やCOS-7細胞に目的タンパク質を大量に発現させるための配列です。ネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子は薬剤スクリーニングによる細胞の選別に利用するための配列です。

タンパク質発現ベクターを用いたタンパク質発現においては、遺伝子配列を人為的に操作できるという特長を利用し、目的に応じた改変を加えることが可能です。例えば、目的の遺伝子の精製や検出を行うために、末端に蛍光タンパク質やアフィニティータグが認識するペプチドを融合させる手法は広く利用されています。また、プロモーターの選択により目的のタンパク質の発現量を調節することも可能です。

一方、タンパク質発現実験は細胞種や遺伝子導入方法の影響が大きく、条件によっては目的のタンパク質の発現量が低い場合があります。また、動物細胞にはプラスミドベクターを複製する機能が存在しないことから、タンパク質発現ベクターの導入による遺伝子発現は一過性です。一部の細胞においてはゲノムに組み込まれて安定発現株となりますが、その確率は非常に低く(100分の1~1,000,000分の1)、安定発現株を選別するための薬剤スクリーニングも必要になります。これに対して近年、遺伝子発現効率を促進させるための技術開発が盛んに進められ、これらの課題は解決しつつあります。

富士フイルム和光純薬では、動物細胞におけるタンパク質発現に最適化したプラスミドベクターを多数取り揃えています。pCAG Vectorシリーズは、強力なプロモーターであるCAGプロモーターを採用し、目的のタンパク質の発現量の向上を実現しています。pEBMulti vectorシリーズは、宿主中においてプラスミドが細胞分裂後の娘細胞に分配されるという特性があり、宿主がゲノムに組み込まなくても安定発現株と同等の状態になります。その他、蛍光タンパク質やFC領域に目的遺伝子を融合させる専用のプラスミドベクターも準備しています。目的の用途に応じて最適なプラスミドベクターをお選びください。