ニトロソアミン類試験

ニトロソアミン類

ニトロソアミン類は、アミン窒素上の水素がニトロソ基に置換された構造(R2N-N=O)を持つ化合物群で、少なくとも一部の化合物は発がん性を持つことが知られています。工業的には可塑剤・添加剤などに広く用いられていることから、工業廃水に含まれるとされ、環境省による「水環境保全に向けた取組のための要調査項目リスト」に指定されています。

ニトロソアミン類は二級アミンと亜硝酸の反応物としても生成されるため、医薬品の製造過程において不純物として検出されることがあります。最近では、サルタン系、ラチニジン系医薬品からニトロソアミン類が検出され、回収される事案がありました。これを受け、欧州医薬品庁(European Medicines Agency; EMA)は、2019年9月にニトロソアミンの混入リスクを評価し、適切なリスク軽減策を講じるよう通達しました。
国内では、医薬品中のニトロソアミン類について、厚生労働省より「令和5年4月30日までにニトロソアミン類の混入リスクを評価し、混入が確認された品目については、令和6年10月31日までにリスク低減措置を講じること。」と通達されています1)

当社では、ニトロソアミン類の標準品・混合標準液を幅広く、揃えております。

  1. 厚生労働省「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」

製品ラインアップ

学術コンテンツ

自主点検の基本的な考え方1)

医薬品中に混入するニトロソアミン類の限度値 (2022年2月時点)

①既知のニトロソアミン類が1種類確認された場合

下記表に示した許容摂取量を適用する。

ニトロソアミン類 許容摂取量※ (ng/日)
NDMA 96.0
NDEA 26.5
NMBA 96.0
NMPA 34.3
NIPEA 26.5
NDIPA 26.5
MeNP 26.5
NDBA 26.5
NMOR 127

※げっ歯類のTD50値(腫瘍発生率が 50%となる用量)等から算出。
10万分の1という理論上の発がんリスクに相当する変異原性不純物の1日摂取量。

②新規のニトロソアミン類が1種類確認された場合

げっ歯類を用いたがん原性試験データが存在する場合はICH M7 (R1) を参考に一生涯曝露を想定した限度値を設定する等、がん原性試験データを利用出来ない場合は構造活性相関又は遺伝毒性試験に基づき限度値を設定する等、科学的に妥当な方法で限度値を設定する。

③2種類以上のニトロソアミン類が確認された場合

10万分の1という発がんリスクを超えないよう、科学的に妥当な方法で限度値を設定する。

例)

  • 検出された全てのニトロソアミン類の1日摂取量の合計が、検出されたニトロソアミン類の中で最も強い発がん性を示すものの許容摂取量を超えないように設定する方法。
  • 検出された全てのニトロソアミン類の発がんリスクの合計が、生涯過剰発がんリスクとして10万分の1を超えないように設定する方法。

※ ニトロソアミン類の既知(潜在的リスクのあるものを含む)の混入原因(root causes)、混入リスク評価方法、分析方法開発の原則等については、EMA又はFDAのガイダンスを参照する。

  1. 厚生労働省「医薬品におけるニトロソアミン類の混入リスクに関する自主点検について」

コンテンツ

【連載】〈LC/MS分析 −測定原理から様々な分野での活用例−〉第3回 LC-MS/MSを用いた医薬品不純物としてのニトロソアミン類の測定|siyaku blog|試薬-富士フイルム和光純薬 (fujifilm.com)