研究用麻酔関連試薬/装置
動物実験において麻酔は動物の苦痛を軽減させるだけでなく、動物の動きを止め、実験に必要な処置を確実に行うためにも重要です。
マウスやラットでは全身麻酔が基本になり、投与の方法によって吸入麻酔と注射麻酔に分けられます。吸入麻酔は操作が簡便ですが、深麻酔期が短く状況によって補助麻酔や追加麻酔が必要となります。一方、注射麻酔は深麻酔期が長いというメリットがありますが、投与量を誤ると動物が死亡する恐れがあり、動物種や体重、週例などを考慮し、投与量を調整する必要があります1)。
当社では、実験動物の全身麻酔に使用される吸入麻酔剤として、イソフルランやセボフルランを取り扱っています。イソフルランやセボフルランは麻酔の導入及び覚醒がはやいこと、生体での代謝が少なく、ほとんど呼気中に排泄され肝臓等への毒性もないというメリットがあります。
吸入麻酔剤による全身麻酔の作用機序は解明されていませんが2)、Han-Ying Wangらは、イソフルランがシナプス前末端のカルシウムチャネルと神経伝達物質の開口放出機構を阻害し、生命の維持に必要な低周波信号を温存しながら、認知、記憶、運動制御、意識に関わる高周波信号を選択的に遮断することで麻酔作用を引き起こしているのではないかと報告しています3)。
参考文献
- 中釜斉, 北田一博, 庫本高志 編, 無敵のバイオテクニカルシリーズ マウス・ラット実験ノート, 羊土社, 2009
- 麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版, 公益社団法人日本麻酔科学会, 2019
- Wang, Han-Ying, et al. "Frequency-dependent block of excitatory neurotransmission by isoflurane via dual presynaptic mechanisms." Journal of Neuroscience 40.21 (2020): 4103-4115.