標準物質(SIトレーサブル)

計量計測トレーサビリティ(SIトレーサビリティ)の定義は「個々の校正が測定不確かさに寄与する、文書化された切れ目のない校正の連鎖を通して、測定結果を計量参照に関連付けることができる測定結果の性質」とされ、分析値の「質」を表現する重要な指標です。当社では様々な規格の標準物質を取り扱っておりますが、一口にSIトレーサブルといっても、それぞれの計量参照や認定制度は異なります。本ページでは当社標準物質の規格とそれぞれについての認定制度、計量参照、該当製品群などを紹介しています。

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当社標準物質の規格について

ISO/IEC 17025等の国際規格に基づき、試験所・校正機関等の認定を行っているNITE IAJapan((独)製品評価技術基盤機構 認定センター)は、複数の認定制度を運営しています。その中で標準物質に関する認定制度には、「計量法に基づく登録・認定プログラム:Japan Calibration Service System (JCSS)」と「国内法に基づく他の認定プログラムでは対応できない分野を補完するための認定プログラム:ASNITE」があります。

当社が供給している標準物質は、
  1. ① 計量参照(JCSS:日本の国家標準、ASNITE:日本や日本以外の国の国家標準等)への計量計測トレーサビリティが確保されている。
  2. ② 認証標準物質(CRM)である※1
  3. ③ CRMで発行される認証書にはASNITE標準物質生産者認定シンボルが、またJCSSで発行される証明書にはILAC-MRAマーク付きJCSS認定シンボルが添付されている。これはISO 17034で認証標準物質に要求される事項をすべて満たすものであることを表しており、ユーザーが一目で理解できるようになっている。
という特長を持っています。

また、ISO 17034はAPAC(アジア太平洋認定協力機構)が各国の標準物質生産者の能力を評価する方法を統一化するために定めたもので、IAJapan認定シンボルを持つ証明書はAPACのMRA(相互承認)を通じて国内のみならず国外でも受け入れられます※2

以下の表に当社標準物質の規格と認定制度との関係を示します。

当社規格 ①JCSS ②アミノ酸
自動分析用
③ICP分析用
元素標準液
④残留農薬
試験用
⑤局方
一般試験法用
規定液
⑥TraceSure® ⑦TRM 当社標準品
品目 異臭、VOC、
元素、pH
アミノ酸
混合標準液
元素 農薬 容量分析
(規定液)
容量分析
(標準試薬)
農薬、
定量NMR
農薬、
アミノ酸
標準品全般
認定制度 JCSS ASNITE -
計量法に基づく登録・
認定プログラム
国内法に基づく他の認定プログラムでは対応できない分野を補完するために
IAJapanが運営する認定プログラム
-
認定機関 IAJapan -
認定シンボル 認定シンボルイメージ 認定シンボルイメージ -
計量参照 CERI 特定標準物質 - NIST SRM等 TraceSure® NMIJ CRM NMIJ/CERI校正 -
SIトレーサブル -
MRA対応 -
  • 1 当社のJCSS標準物質はISO/IEC 17025:2017(JIS Q 17025)及びISO 17034:2016(JIS Q 17034)の要求事項を満たしており、認証標準物質と表明できる資格を有しています。
  • 2 (一財)化学物質評価研究機構HPより

① JCSS

JCSS(Japan Calibration Service System) は、計量法に基づく計量法トレーサビリティ制度で、当社はその登録事業者の認定を受けています。JCSS規格の標準液の濃度区分には「pH標準液」、「pH標準液以外の標準液」があり、90以上の種類の標準液がJCSSの対象となっています。これらJCSS標準液は、経済産業省の策定した標準物質整備計画に基づく標準物質の供給形態の一つとして設定されており、この計画の下で新たなJCSS標準液を追加しています。
JCSS標準物質は、計量法のもと、指定校正機関であるCERIが製造した、特定標準物質へのトレーサビリティが確保されており、JCSS登録事業者によってユーザーへ提供されています。
当社は、無機標準液(イオン標準液、金属標準液)、有機標準液、pH標準液のJCSS標準液を取り揃えています。

JCSSの仕組み
図解:JCSSの仕組み

② アミノ酸自動分析用混合標準液

当社は2019年にASNITEの認定に基づいた「アミノ酸混合標準物質生産者」を日本国内で初めて取得し、アミノ酸測定のための"ものさし"となる認証標準物質の生産を開始いたしました。
アミノ酸はたんぱく質を構成する成分であることから、肉類や穀類等、様々な食品に含まれる重要な栄養成分です。また臨床分野では、血液試料のアミノ酸を測定することで、がんや糖尿病、脳卒中の将来における罹患リスクをスクリーニングする技術開発が進んでいます。このような背景から、試料中のアミノ酸含有量や組成の評価をより精確に行なう必要性が高まっています。
本製品はNMIJ CRMまたはSI(国際単位系)にトレーサブルな当社標準物質であるTRM(Traceable Reference Material)を原料アミノ酸に使用しています。NMIJから精確な混合標準液調製システムを技術移転し、当社で長期安定性データの取得や調液後の濃度確認試験を行うことでISO 17034 に基づく標準物質生産システムを確立しました。
認証標準物質であるアミノ酸混合標準液を使用することで、より信頼性の高いアミノ酸測定を実現することが可能となります。

アミノ酸自動分析用混合標準液の仕組み
図解:アミノ酸自動分析用混合標準液の仕組み

③ ICP分析用元素標準液

当社は、2023年3月に国内で初めてASNITEの認定に基づいた、元素標準物質生産者の包括的認定(フレキシブル認定)を取得しました。元素標準物質生産者のフレキシブル認定とは、認定機関から認定を受けた手法によって値付けできる元素については個別の認定を取得せずに認証標準物質(CRM)として生産できるというシステムで、迅速なCRMを供給が可能となります。
ICP分析用元素標準液(CRM)シリーズは、当社が認定機関であるIAJapanからフレキシブル認定を受けた手法で、米国計量標準であるNIST SRM等を用いて値付けを行った、認証標準物質です。

ICP分析用の仕組み
図解:ICP分析用の仕組み

④残留農薬試験用、高速液体クロマトグラフ用 (CRM)

当社は、2023年に国内で初めてASNITEの認定に基づいた、標準物質生産者の包括的認定(フレキシブル認定)を取得しました。標準物質生産者のフレキシブル認定とは、認定機関から認定を受けた手法によって値付けできる物質については個別の認定を取得せずに認証標準物質(CRM)として生産できるというシステムで、迅速なCRMを供給が可能となります。
残留農薬試験用、高速液体クロマトグラフ用(CRM)シリーズは、当社が認定機関であるIAJapanからフレキシブル認定を受けた手法で、米国計量標準であるNIST SRM等を用いて値付けを行った、認証標準物質です。また、IAJapanは各国の認定機関間の相互承認認定協定(MRA)に参加しているため、本シリーズの認証値は国際的に受け入れられます。

残留農薬試験用、高速液体クロマトグラフ用 (CRM)の仕組み
図解:残留農薬試験用、高速液体クロマトグラフ用 (CRM)の仕組み

⑤局方一般試験法用規定液 (CRM)

局方一般試験法用シリーズの規定液は、日本薬局方に準じた調製および評定を行った、日本薬局方収載試験にお使いいただけるCRMです。
本シリーズは、当社で生産している TraceSure®シリーズを一次標準物質として値付けを行っており、このTraceSure®シリーズはNMIJ CRMを一次標準物質として値付けをしています(⑥TraceSure®を参照)。
TraceSure®シリーズはその特性値(純度)がNMIJ CRMを通じてSIにトレーサブルなCRMであるため、本シリーズの認証値(濃度)はTraceSureⓇを通じてSIにトレーサブルです。 さらに、IAJapanは各国の認定機関間の相互承認認定協定(MRA)に参加しているため、本シリーズの認証値は国際的に受け入れられます。

局方一般試験法用規定液の仕組み
図解:局方一般試験法用規定液の仕組み

⑥ TraceSure®

TraceSure®の仕組み/容量分析

容量分析用のTraceSure®シリーズは、NMIJがSIトレーサブルな測定方法で値付けしたNMIJ CRMを用いて当社で値付けを行い、均質性評価及び安定性評価から得た不確かさを加えて特性値(純度)を決定しています。当社はIAJapanが運営するASNITE認定プログラムによって、標準物質生産者の認定を取得しているため、本シリーズの特性値はNMIJ CRMを通してSIにトレーサブルなCRMです。また、IAJapanは各国の認定機関間の相互承認認定協定(MRA)に参加しているため、本シリーズの認証値は国際的に受け入れられます。

図解:TraceSure® の仕組み/容量分析
TraceSure®の仕組み/農薬、定量NMR

残留農薬試験用標準品および定量NMR用基準物質のTraceSure®シリーズは、NMIJがSIトレーサブルな測定方法で値付けした純度に、当社で均質性評価及び安定性評価から得た不確かさを加えて特性値(純度)を決定した、認証標準物質シリーズです。本標準物質の特性値は、NMIJまたはNMIJより技術移管されたCERIの分析値を通してSI にトレーサブルであり、IAJapanが運営するASNITE認定プログラムによって、標準物質生産者の認定を取得しています。

図解:TraceSure® の仕組み/農薬、定量NMR

⑦ TRM(Traceable Reference Material)

TRMシリーズは、NMIJがSIトレーサブルな測定方法で値付けした純度に、当社で均質性評価及び安定性評価から得た不確かさを加えて特性値(純度)を決定した、証明書付きの標準物質シリーズです。本標準物質の特性値は、NMIJまたはNMIJより技術移管されたCERIの分析値を通してSI にトレーサブルです。

※TRMシリーズはASNITE認定プログラムによる標準物質生産者の認定は取得していません。

TRMの仕組み
図解:RMの仕組み