人工光合成

我々の生活を便利で快適なものにしているのが、化石燃料(石油や石炭など)です。化石燃料は、世界全体のエネルギー消費量の70%以上を占めていると言われています。しかし近年、化石資源の大量消費によって発生した二酸化炭素の濃度上昇による環境破壊と資源枯渇が懸念されており、化石燃料に代わる次世代エネルギーが注目されています。次世代エネルギーとは、太陽光や風力、水力、バイオマスなど自然の力を利用したエネルギーのことを言い、再生可能な資源からエネルギーを得られるため、燃料の枯渇や環境汚染のリスクなどを軽減できることが期待されています。

次世代エネルギーの一つとして太陽光を利用した人工光合成が注目されています。人工光合成とは、太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換・蓄積する技術です。この技術を実現する手法として、光触媒を用いた水の分解が期待されています。特に半導体光触媒は代表的な水分解光触媒材料であり、2021年にはこの光触媒を使用して100m2規模のソーラー水素の製造が実証実験で報告されています1)。またこのソーラー水素と化学燃料の燃焼で排出された二酸化炭素を反応させて、プラスチックや合成ゴムに使用されている低級オレフィンを合成する研究開発もされています(図1)。

図1. 人工光合成によるオレフィンの製造プロセス

図1. 人工光合成によるオレフィンの製造プロセス2)

参考文献

  1. 堂免一成, 瀬戸山享監修:「光触媒/光半導体を利用した人工光合成」158, ((株)エヌ・ティー・エス出版) (2017).
  2. 出典:資源エネルギー庁『人工光合成によるオレフィンの製造プロセス