核酸抽出/精製試薬 (法医学)

法医学研究における個人識別には遺伝子検査が用いられていますが、前工程として人体由来の体液(血液,唾液など)や毛髪などからDNA抽出・精製を行う必要があります。当社では体液、毛髪に対応したDNA抽出・精製試薬をラインアップしています。

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法医学検査におけるサンプルと核酸抽出・精製

法医学検査におけるサンプルは、毛髪、唾液、血液、骨、歯など様々です。採取するまでに年月が経過している場合もあり、DNAの保存状態も決して良いとは言えません。法医学検査に良く用いられるサンプルとその特徴は以下の通りです。

血液

現場から採取される血液は事件および事故の状況を把握する上で重要な証拠であり、血液からDNA抽出・精製を行うケースも多く存在します。血痕予備試験に使用されるルミノール試薬は使用回数によってDNAを破壊する可能性があるため、ルミノール試薬の使用回数は必要最小限(2回程度)に抑えなければいけません1)

口腔内細胞

唾液中に含まれる口腔内細胞は容易かつ非侵襲的にサンプルの入手が可能なためDNA型鑑定では良く使用されるサンプルです。その一方で、テンプレートDNAへ不純物や細菌の混入が多く、サンプルや増幅領域によってはうまく増幅できないケースがあります2)

毛髪

毛髪の基部に存在する毛根には核DNAが存在するため、DNA型鑑定のサンプルとして有効です。毛髪も口腔内細胞と同様、誰でも簡単にサンプルの入手が可能で、ほとんど痛みを伴わないという利点があります。しかし毛髪の主成分であるケラチンは分解しにくいタンパク質であり、通常はタンパク質分解酵素を含むバッファー中で長時間インキュベートすることが必要です。また毛髪に含まれるメラニン色素はPCRを阻害する場合があり、DNA抽出・精製の時点でできるだけ混入しないように気を付けなければいけません。

骨・歯

身元が分からない死体の個人識別では、保存性の高い硬組織(骨・歯)からDNAを抽出・精製することが行われています。歯の象牙質切片を脱灰後、タンパク質分解酵素で溶解し、フェノール/クロロホルムで抽出することでPCRによる性別やABO式血液型の判定が可能であるとの報告がされています3)

参考文献

  1. 警察庁:「DNA型鑑定の運用に関する指針の運用上の留意事項等について」 (2019).
  2. 佐藤慶太 他:口腔病学会雑誌, 68(1), 151 (2001).
  3. 渡邉麻子:歯科基礎医学会雑誌, 40(4), 241 (1998).