脱灰剤
骨、軟骨、歯などの硬組織や石灰化病変、結石を含む組織はそのままでは硬いため薄切することが困難です。脱灰とは、硬組織や石灰化した組織からカルシウムを除去し、薄切を容易にする工程です。当社では各種組織脱灰液をラインアップしております。また塩酸、EDTAを主成分とし、酸脱灰のように脱灰速度が速く、キレート脱灰のように免疫染色にも使用可能なカルキトックス™はお薦めの脱灰剤です。
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酸による脱灰
酸を使用する方法では、試料を酸の希釈液に浸けて脱灰します。良く使用される酸として硝酸やトリクロロ酢酸、ぎ酸が挙げられますが、塩化アルミニウム、塩酸、ぎ酸からなるプランク・リュクロ(Plank-Rychlo)液やぎ酸、クエン酸ナトリウムからなるモールス(Morse)液などの混合液も使用されます。それぞれの特長を下記にまとめました。
酸 | 特長 | 注意点 |
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硝酸 (5~7.5%) | ・脱灰速度が速い | ・組織の膨化が生じるため、5%硫酸ナトリウムによる中和が必要 ・長時間 脱灰すると染色性が大きく損なわれる |
トリクロロ酢酸 (5%) | ・脱灰速度が速い ・核の染色性が低下しづらい |
・組織の膨化が生じるため、脱灰後、高濃度エタノールに直接移す |
ぎ酸 (1~5%) | ・脱灰速度が速い ・染色性の低下がほとんどおこらない ・組織の収縮がほとんどおこらない |
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プランク・リュクロ液 | ・脱灰速度がきわめて速い (硝酸, ぎ酸の3倍速い) |
・中和や水洗が十分でないと染色性が大きく低下する ・組織の膨化が生じるため、5%硫酸ナトリウムによる中和が必要 |
モールス液 | ・組織の膨化が生じにくい ・免疫染色、in situ hybridizationにも使用可能 (EDTA脱灰と同程度) |
・脱灰速度が遅い (5%硝酸の3倍遅い) ※EDTA脱灰よりは8倍速い ・5%硫酸ナトリウムによる中和が必要 |
キレート剤による脱灰
EDTAをはじめとするキレート剤による脱灰は、免疫原性や酵素活性を維持することができるため、免疫染色やin situ hybridization(ISH)の際に使用される脱灰法です。また組織構造への影響も少ないので、微細構造の観察にも適しています。一方で脱灰速度が遅いことが欠点であり、脱灰に数週間要します。
参考文献
高田邦昭, 斎藤尚亮, 川上速人編: 「第5版 実験医学別冊 染色・バイオイメージング実験ハンドブック」 (羊土社) (2012)
高橋英機 監修, 大久保和央 著: 「細胞・組織染色の達人」(羊土社) (2018)