蛍光プローブ (生体分子)

生体分子を検出するための蛍光プローブには、① 特定の生体分子との親和性(結合力)が高い、② 特定の生体分子と結合すると蛍光強度が増大する、③ 特定の生体分子による化学反応で蛍光特性が変化するなどの特性を有するものがあり、これらを利用することで、ある生体分子やその活性を特異的に検出することが可能です。当社では様々な生体分子に対する蛍光プローブを幅広くラインアップしております。

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生体分子を標識する蛍光プローブとその利用

特定の生体分子を選択的に標識できる蛍光プローブは、生体分子そのものの可視化はもちろん、生体分子の動態や活性を理解することもできます。生体分子特異的な蛍光プローブとその利用方法を以下のようにご紹介します。

特定の生体分子を可視化する

生体分子の蛍光プローブとして良く知られているのは、核酸 (DNA/RNA)へ特異的に結合する蛍光プローブです。代表的な染色試薬としてDAPIやHoechst 33258、 Hoechst 33342などが挙げられます。これらの蛍光色素は、二本鎖DNAの副溝に結合すると蛍光強度が増大する特性を持っており、二本鎖DNAを特異的に染色することができます。また、アクリジンオレンジ(AO)は二本鎖核酸には3塩基対に対し1個の割合で取り込まれ、一本鎖核酸には最大1塩基対に対して1個取り込まれます。この違いにより、二本鎖核酸では520 nmの蛍光を発し、一本鎖核酸では620-650 nmの蛍光を発するため、二本鎖と一本鎖を区別することが可能です。

アクチンフィラメントの可視化には標識ファロイジンが多用されます。ファロイジンはタマゴテングダケなどの真菌に含まれるペプチドであり、アクチン重合体に特異的かつ強力に結合します。抗アクチン抗体はアクチンモノマーも認識してしまうため、アクチンフィラメントを染色したい場合にはファロイジンを使用することでモノマーのシグナルを抑えることができます。

生体分子の動態や活性を可視化する

生体分子による化学反応を受けて蛍光特性が変化する蛍光プローブを使用すれば、特定の生体分子の動態や活性を検出することができます。

例えば活性酸素種(ROS)の検出には、2’,7’-ジクロロジヒドロフルオレセイン-ジアセテート(DCFH-DA)やジヒドロエチジウム(DHE)が良く用いられています。これらの蛍光プローブはROSと反応して還元型から酸化型に変わることで蛍光を発したり、蛍光波長が変わったりするものです。しかしDCFH-DAやDHEはROSの種類に対する特異性が低いことが課題です。当社のBESプローブは過酸化水素やスーパーオキシドなどに対して高い選択性を持つ蛍光プローブです。

また蛍光プローブで酵素活性を測定することも可能です。代表的なレポーターであるβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)は通常、X-Galのような比色性の試薬が使用されますが、蛍光試薬を使用することでより高感度な解析が可能になります。β-galの蛍光プローブは、基本的にβ-ガラクトシド基が加水分解されることで蛍光を発するという特性を持っており、Fluorescein Di-β-D-galactopyranoside(FDG)や9H-(1,3-Dichloro-9,9-dimethylacridin-2-one-7-yl)β-D-Galactopyranoside(DDAO galactoside)などが使用されています。蛍光波長や細胞への導入効率の違いから適切な蛍光プローブを選択する必要があります。

参考文献

三輪佳宏 編:「蛍光・発光試薬の選び方と使い方」 (羊土社) (2007).