エピジェネティクス研究試薬

エピジェネティクスとは、DNA配列の変化を伴わない遺伝情報の記憶と発現を指しており、発生や分化など多様な生命現象やがんといった種々の疾患に深く関与します。このことからもDNAのメチル化が遺伝子のサイレンシングと関係することをはじめ、アセチル化などのヒストンの修飾とその機能の解析が盛んに進められています。当社はエピジェネティクスの研究試薬を幅広く取り揃えています。

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ヒトをはじめとする個体は種々の役割を担う多様な細胞集団により構成されています。殆ど同一のDNA配列を有する細胞が多様な表現型を示す理由として、遺伝子の発現パターンが細胞種によって大きく異なる点が挙げられます。そしてこのような遺伝子発現のパターンはDNAメチル化やヒストンの修飾といった、いわゆるエピジェネティックな変化により決定されています。エピジェネティクスに関連した研究は発生学の領域はもちろん、がん領域のような新たな細胞集団の発生の機構を明らかにする分野においても広く取り組まれています。

エピジェネティックな変化としては、DNAのメチル化とヒストンの修飾が代表的な現象として知られています。

DNAメチル化

DNAメチル化は、グアニンの前に位置するシトシンにメチル基 (-CH3) が付加される現象です。哺乳類においてはDNAメチル化酵素とDNA脱メチル化酵素がそれぞれ3種類同定されています。遺伝子の発現に深く関わるプロモーター領域がメチル化を受けると、その遺伝子の発現は抑制されます。DNAは細胞が分裂する際に複製されますが、このメチル化に関しては娘細胞にも引き継がれるため、DNAのメチル化は細胞分裂後も維持される機構であるとされています1)。また、DNAのメチル化はがん抑制遺伝子の発現低下にも関与すると知られており、現在では遺伝子の変異や欠失と同様にがん領域においても広く研究が進められています。

DNAのメチル化の同定にはバイサルファイト法が広く利用されています。通常、PCR法によりシトシンのメチル化を検出することは不可能です。バイサルファイト法においては、DNAを亜硫酸水素塩(バイサルファイト)で処理することによりシトシンをウラシルに変換します。一方、メチル化を受けているシトシンは亜硫酸水素塩の影響を受けないためシトシンとして維持されます。この処理を行ったDNAをPCR後に配列解析を行うことでメチル化を受けたシトシンを同定することが可能です。

ヒストン修飾

ヒストンの修飾は、ヒストンがアセチル化、メチル化、りん酸化、ユビキチン化などの修飾を受けることを指します。このようなヒストンの修飾はクロマチン構造の変化を誘導し、その結果としてDNAと転写因子の相互作用が変化することで遺伝子発現が制御されます。基本的にアセチル化は遺伝子発現の活性化に作用するのに対して、メチル化はメチル化を受けるアミノ酸(リジンやアルギニン)やその位置によって遺伝子の発現制御に及ぼす作用が異なります。ヒストンの修飾に関しては特異的に検出が可能な抗体が多数開発されています。なおヒストンのアセチル化や脱アセチル化、メチル化や脱メチル化に関連する酵素も多数同定されています。

図 エピジェネティックな変化による遺伝子発現制御の例

参考文献

1) Ushijima T. et al. : Genome Res, 13 (5), 868-874 (2003).