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【クロマトQ&A】:官能基にフッ素を有するフルオロカーボン系シリカカラムとは、どのようなカラムか教えて下さい

本記事は、Analytical Circle No.32(2004年3月号)に掲載されたものです。

官能基にフッ素を有するフルオロカーボン系シリカカラムというものがあることを最近知りました。どのようなカラムか教えて下さい。

現在HPLC分析では全多孔性球状シリカゲルを基材とした化学修飾型シリカゲル充てん剤が多く用いられています。その中の代表的な充てん剤であるオクタデシルシリカゲル(ODS)充てん剤は、①分析対象物の適用範囲が広い ②使用できる溶媒種が多く分離至適条件へ導きやすい ③他の化学修飾型充てん剤と比べ耐久性が高い、などの理由で最も広く用いられています。

しかし、例えば極性化合物のように必ずしも保持や分離が十分に得られない分析対象物もあり、それを補完する形でC8やC22,C30など炭化水素鎖長の異なる充てん剤や、イオン交換基や極性基など分離機構の異なる修飾基を導入した充てん剤が使用されています。

フルオロカーボン系シリカカラムもODSと異なる充てん剤の一つです。官能基の構造として芳香族系と脂肪族系が知られており、相当する炭化水素の水素がフッ素に置き換わった構造をしています。相当する炭化水素タイプの充てん剤、あるいは芳香族系と脂肪族系間の選択性は大きく異なります。

図1.フルオロカーボン系シリカの構造

芳香族系フルオロカーボン系シリカの一つにペンタフルオロフェニルタイプ充てん剤があります(図1)。相互作用としてはフッ素との弱い水素結合、ベンゼン環とのπ-π電子相互作用や静電作用などの複合的な相互作用が考えられます。このタイプは芳香族化合物、ケトン類、アミン化合物などと選択的な相互作用を示します。

一方、脂肪族系のフルオロカーボン系シリカの一つとして、弊社では分岐状ポリフルオロアルキルシランを修飾した充てん剤、フルオフィックス(Fluofix®)(図1)を販売しております。以下Fluofixの分析例を挙げながらそのユニークな特性を説明します。

Fluofixを始めとする脂肪族系のフルオロカーボン系シリカは基本として逆相分配作用を示し、一般に、相当する長さの炭化水素鎖より疎水性が小さい傾向を示します(FluofixではC1~ C4相当)。そして炭化水素型充てん剤とは異なる3つの特長があります。

  1. ハロゲン原子の認識能
  2. 構造認識能
  3. 撥水性及び撥油性

1.ハロゲン原子の認識能

Fluofixはハロゲン原子、特にフッ素を有する化合物を強く保持します。図2のクロロフェノール異性体、図3のフルオロベンゼンの分析のようにハロゲン原子の増加に伴い保持が大きくなる傾向があります。

  • 図2.ハロゲン原子の認識能(1)
    クロロフェノール異性体の分析
  • 図3.ハロゲン原子の認識能(2)
    フルオロベンゼンの分析

2.構造認識能

Fluofixの剛直な化学修飾基の構造が立体的な構造の違いを認識します。通常平面性の高い化合物ほど強く保持します(図4のtriphenylene とo -terphenyl の分析)。またo,m,p 位など立体構造のわずかに異なる化合物の分離にも適用が可能です(図5のキシレノールの分析、図6のサポゲニンのエピマー分離)。

図4.平面認識能
triphenylene と o -terphenylの分析
図5.立体認識能(1)
キシレノールの分析
図6.立体認識能(2)
サポゲニンのエピマー分離

3.撥水性及び撥油性

Fluofixは撥水性のみならず撥油性も有しています。ODSでは疎水性相互作用が強すぎるためにブロードなピークを生じる恐れがある場合もシャープなピーク形状が見込めます。

以上のようにFluofixを始めとするフルオロカーボン系シリカカラムは、その分離特性により、ODSでは分離が困難な場合に有効な充てん剤と考えられます。一度ご検討ください。

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