【急速融解法の考案者 Juergen Liebermann 博士:Fast Warmingのポイント】

2025年4月に開催されるIFFS2025にて、当社共催のランチョンセミナー
『凍結融解プロトコルの新たな原則~従来の 3 ステップ融解からワンステップ融解へ~』
にご登壇いただく、Fast Warming(以下FW法)
考案者Juergen Liebermann博士にインタビューを行いました。
急速融解とは?

従来のビトリフィケーション法における融解は、Thawing、Dilution、Washing1、Washing2 の4ステップで浸漬するプロトコルが一般的ですが、近年Thawingのみのプロトコル、通称 「急速融解法」が注目されています。胚発育能を保ちつつ、およそ90%のラボワーク時間短縮につながることから、国内外で急速融解法を検討・実施する施設が増加しています。
FW法を臨床導入するに至った背景や、導入による効果を教えてください。
600個以上の胚盤胞を使用して検証を6か月間行った結果、非常に良好な結果が得られたため、2022年9月22日にFW法に切り替えることを決定しました。それ以来、4,100回以上の移植を行い、1,200人の新生児が誕生しましたが、結果は常に良好です。プロトコルを簡素化することで、作業にかかる時間を短縮し、胚培養士の作業効率も向上しました。さらに、胚が非生理的環境(室温や高浸透圧下)にさらされる時間を短縮することで、胚が受けるダメージを減らした結果、回復に良い影響を与えています。
加えて、FW法を導入することで、消耗品や培地にかかる費用を40%削減しながら、プロトコルにかかる時間も約91%(11分から1分)短縮できました。
FW法を行う際に注意すべき条件(例:温度管理やArtificial Shrinkageなど)はありますか?
FW法は、従来法と同様、融解液(TS液)を37℃に維持することが必要です。厳密な時間設定は必要なく、融解後1~3時間後に移植を行うことができます。
簡単なプロトコルですが、必要であれば施設内での検証をお勧めします。
また私たちはArtificial Shrinkageを行っています。正しくはArtificial Collapsingです。これは融解時ではなくES平衡化前に行っています。当院ではACはあまり行わない傾向にあります。私たちは80%のブラストシストをバイオプシーするため、その過程で胚が収縮するからです。そのため当院ではバイオプシーを行わない20%の胚についてのみACを行っています。行わなかった場合、4分より長い10分でES平衡化を行う必要があるからです。
FW法にとってどのような組成のガラス化液/融解液が良いと思いますか?
FW法に必要な組成は、融解液に含まれる1Mのスクロースです。これは細胞外耐凍剤であり、融解時の水分流入(復水)を制御するのに役立ちます。
今後、FW法は世界中に広がっていくと思いますか?
すでに広がっています。同僚の一人からこのような内容のメールをもらいました。
「2024年7月にFW法を導入して以来、凍結胚移植の結果に著しい改善が見られました。 ラボワークを向上させるために尽力してくださったことに、改めて感謝いたします。とても改善を感じています。」
さらに別のメッセージ:「FW法はまさに画期的な変化をもたらしました。今年の1月ついに別の施設でFW法を実行しました。非常に役立っています。」
これ以外にも多くのメッセージを受け取っています。
※Juergen博士がご報告された最新の論文は以下になります。
- タイトル:
- Fast and furious: pregnancy outcome with one-step rehydration in the warming protocol for human blastocysts.
- 文献情報:
- Liebermann, Juergen et al.: Reproductive BioMedicine Online, Volume 48, Issue 4, 103731 (2024).