GCキャピラリーカラム
SGE GCキャピラリーカラムは、1970年代初めにキャピラリーカラムの開発製造を開始し現在の業界標準である熱安定性を改善したキャピラリーカラムを初めてリリースするなど、ユニークで独自の技術による多種の製品をラインアップしています。
その中で特に優れた耐熱性(Wax系カラムで280 ℃まで使用可能なSolGel-Waxカラムなど)を持ち高温分析が可能なカラムをご用意しております。
学術コンテンツ
主なGCキャピラリーカラムの種類と極性
BP1 | :100 % ジメチルポリシロキサン |
BP1 PONA | :100 % ジメチルポリシロキサン |
BPX1 | :100 % ジメチルポリシロキサン |
SolGel-1ms™ | :100 % ジメチルポリシロキサン-SolGel 相 |
BP5 | :5 % フェニル / 95 % ジメチルポリシロキサン |
BPX5 | :5 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン |
HT5 | :5 % フェニルポリカルボラン- シロキサン |
HT8 | :8 % フェニルポリカルボラン- シロキサン |
BPX35 | :35 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン |
BPX608 | :35 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン |
BPX50 | :50 % フェニルポリシルフェニレン- シロキサン |
BPX70 | :70 % シアノプロピルポリシルフェニレン- シロキサン |
BPX90 | :90 % シアノプロピルポリシルフェニレン- シロキサン |
SolGel-WAX™ | :ポリエチレングリコール(PEG)-SolGel 相 |
BP20(WAX) | :ポリエチレングリコール |
BP21(FFAP) | :ポリエチレングリコール (PEG) – TPA 処理 |
BP10(1701) | :14 % シアノプロピルフェニル ポリシロキサン |
BPX-VOLATILES | :シアノプロピルフェニル ポリシロキサン |
BP624 | :シアノプロピルフェニル ポリシロキサン |
CYDEX-B™ | :パーメチルベータシクロデキストリン(キラル) |
Sol-Gelテクノロジー
Sol-Gel とは
Sol-Gelは、セラミックのような特殊な特性を有する合成ガラスです。ここ数年にわたり、Sol-Gelに関する数多くの研究がなされており、現在では、Sol-Gelを有機化合物で容易に修飾できるようになりました。化学修飾されたSol-Gelは、セラミックのような特性と薄膜形状で化学結合したポリマーの特性を共有しています。
Sol-Gel合成では室温下においてアルコキシドを加水分解し、凝縮させ、ガラス質の構造を形成させます。この方法は、高品質セラミックス、および均一性と純度の高いモノまたはマルチーコンポーネントガラスを製造するために使用されています。このセラミックを機能的に適合したポリマーでさらに化学修飾することは、有機/無機に関わらずナノマテリアルの合成への入り口となります。
SGE におけるSol-Gel 技術の活用とは
SGEは、世界で一番最初にSol-Gel技術をガスクロマトグラフィー用キャピラリーカラムの固定相に応用しました。
SolGelカラムは通常、有機化合物で構成されている固定相に、Sol-Gel技術を応用することで固定相の有機的な特性に加え、Sol-Gel相の特性が付加されています。Sol-Gel相はフューズドシリカ内表面のシラノールと共有結合しています。この結合は、一般的な固定相と内表面とのそれとは異なる強固な結合であり、結果として、SolGelカラムは、極低ブリードな特性を有しています(図1参照)。
現在、SGEによって開発されたSolGelカラムの固定相は2種類で、SolGel-1msとSolGel-WAXです。SolGel-1msは、100 %ジメチルポリシロキサンから構成される無極性の固定相を有しています。SolGel-WAXはポリエチレングリコールから構成される極性カラムです。
低ブリード、高耐久性、高不活性、高再現性カラム
カラムブリードとは、クロマトグラムのバックグラウンドで、シロキサン系のカラムでは液相のシロキサンが環状体となって溶出してきます。カラムブリードは液相の劣化を表す一つであり、これは高温になるほど大きくなり、カラムの使用温度の上限に近くなるほどベースラインを上げ、定量精度やS/Nの低下を起こします。
カラムブリードは検出器の汚染の原因にもなり、感度が重要な現在のGC分析においてカラムブリードを低く抑える事が重要な要素の一つです。
SGEのカラムは、カラムブリードを最小レベルに抑えたカラムです。カラムブリードについてBPX5(5%フェニル相当カラム)と他社5 %フェニル相当カラムとの比較試験を行いました(図2)。
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表1. BPX5と他社5%フェニル相当カラムとのブリード量比較試験結果
Bleed at 360 ℃(ng/sec) Phase lost/ hour at 360 ℃ BPX5 2.688 0.16 % A社 5 %フェニル相当カラム 4.481 0.27 % B社 5 %フェニル相当カラム 5.727 0.35 % 各カラムの長さは30 m、内径0.25 mmID、膜厚0.25 µmの同一のカラムを使用した。カラム流量は0.7 mL/min
キャピラリーカラムの耐久性
カラムの水への耐久性
一般的に水や水分を含んだ試料は分析対象成分の損失、ピーク形状の悪化、GCキャピラリーカラムに回復不可能な損傷を与えることがあります。SGEのカラム固定相はこのような水の影響に対する強さ(耐久性)を有しています。図3にBPX5(微極性カラム5 %フェニル相当)における、水を用いたカラムの耐久性試験の結果を示します。
カラムの高耐熱性
SGEの独自技術により多種の固定相において優れた耐熱性を実現しています。従来のキャピラリーカラムでは、使用不可能であった高温領域での分析が可能になることで、分析対象になる化合物の範囲が広がります。また高温領域においても固定相の熱安定性がブリードレベルを低減し、高感度分析におけるS/N比の改善が可能です。(図5)
カラムのサンプル汚染からの回復
GCキャピラリーカラムのサンプル汚染に起因したトラブルは、ガスクロマトグラフィーにおいて最も多く、深刻な問題です。
汚染物質には不揮発性物質と半揮発性物質などがあり、キャピラリーカラムヘのこれらの物質の残留がゴーストピーク等のベースラインヘの影響や分析対象成分の損失、ピーク形状の悪化を引き起こすことがあります。緑茶などの植物の粗抽出物はカラムの汚染の原因となる不揮発性、半揮発性物質のカテキン(ポリフェノール類)、カフェイン、ルチン等が多量に含まれており、このような緑茶などの植物試料はGCキャピラリーカラムの寿命を短くすることが知られています。
図6にBPX50(微極性カラム50 %フェニル相当)における緑茶抽出液を用いた耐久性試験の結果を示します。一般的に中極性カラムは、微極性カラムより耐久性において弱い傾向を示しますが、本試験においては、微極性カラムと同様の高い耐久性を示します。高耐熱性である特長を活かした高温下での再コンデショニングによるカラム内のクリーニングが可能であり、その結果としてこのようなカラムのサンプル汚染に対する強さ(耐久性)を発揮します。(図6)
酸素による劣化への耐久性
GCキャピラリーカラム中に酸素が存在するとカラムが劣化を起こすことは知られています。このようなトラブル発生の原因の多くはガス流路の漏れによるキャリアガスヘの酸素の混入です。
カラム中に酸素が存在するときオーブン温度が室温に近い温度では固定相は劣化しにくいですが、温度が上昇するに伴って急速に劣化します。固定相が劣化すると極端なカラムブリード等のベースラインヘの影響や分析対象成分のピーク形状の悪化を引き起こし、分析が不能になります。特に強い極性の固定相のカラムはより低い温度で劣化がはじまります。
SGEのカラムは酸素による劣化においても強い耐久性を実現しています。(図7)
GC条件
カラム | : BPX5, 0.25 μm film 30 m x 0.25 mm ID |
注入方式 | : Splitless |
注入口温度 | : 250 ℃ |
注入量 | : 1 µL |
キャリアガス | : Helium, 1.3 mL/min |
昇温条件 | : 40 ℃(1 min)→30 ℃/min→ 190 ℃(3 min)→10 ℃/min→300 ℃ |
検出器 | : FID, 310 ℃ |
サンプル
A : 2,4,5,6-tetrachloro - meta - xylene C : β-BHC E : Heptachlor G : Aldrin I : γ-Chlordane K : Endsulfan A M : Dieldrin O : p,p'-DDD Q : p,p'-DDT S : Endsulfan Sulphate U : Endrin Ketone |
B : α-BHC D : γ-BHC F : δ-BHC H : Heptachlorepoxy J : α-Chlordane L : p,p'-DDE N : Endrin P : Endsulfan B R : Endrin Aldehyde T : Methoxychlor V : Decachlorobiphenyl |