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【連載】Talking of LAL「第31話 パイロセップ法の応用」

本記事は、和光純薬時報 Vol.66 No.2(1998年4月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第31話 パイロセップ法の応用

エンドトキシン吸着剤「パイロセップ」を用いたエンドトキシン測定法については、第 20 話でご紹介しました。今回は、このパイロセップ法の応用について考えてみたいと思います。

パイロセップ法とは、エンドトキシンがパイロセップに吸着しやすい酸性・低イオン強度の条件で試料中のエンドトキシンをパイロセップに吸着し、これを洗浄した後、エンドトキシンが脱着しやすいアルカリ側でリムルス試薬と反応させるという方法です。この方法の特徴として、以下の点が挙げられます。

(1)試料は洗浄により除かれるため、リムルス反応時の試料の影響を回避できる。
(2)実験系を工夫すれば、試料中のエンドトキシンを濃縮できるため、感度が向上する。

筆者らも、水や透析液の測定で 0.1 EU/L 以下のエンドトキシンの測定が可能であることを確認していますから、条件が決まれば感度が向上するといえます。例として、キャピラリーカラムを用いたパイロセップ法による腹膜透析液 A(X 社)や人工腎臓用補液 B 及び C(Y 社)の添加回収試験の結果を表 1 に示します。

表1. パイロセップ法における腹膜透析液・補液のエンドトキシン回収率
検体 エンドトキシン添加量
(EU/L)
エンドトキシン回収率
(%)
腹膜透析液 A 0.1
1.0
80
72
人工腎臓用補液 B 0.1
1.0
144
102
人工腎臓用補液 C 0.1
1.0
108
118

試料に 0.1M 酢酸を加え、pH を 5 付近に調整し、パイロセップにエンドトキシンを吸着させた後、リムルス-ESⅡテストワコーを用いてトキシノメーターで測定しました。若干回収率が高いものや低いものがありましたが、透析液中のエンドトキシンも 0.1 EU/L のレベルで測定可能と思われました。

今回は、5 mL の試料よりエンドトキシンの濃縮を行いましたが、試料の量を増やすことにより、もう少し低濃度のエンドトキシンが測定できます。

また、パイロセップ法では、水に溶けない物質中のエンドトキシンを測定できる場合があります。例えば、脂溶性ビタミン類は通常のリムルス試験が困難ですが、パイロセップ法ではエンドトキシン測定ができそうです。

ビタミン E・K・D2 のエタノール溶液(10 mg/mL)へのエンドトキシン(0.05 EU/mL)添加回収試験では、ビタミン D2 で高い回収率となってしまいましたが、添加したエンドトキシンが回収され、エンドトキシンの定量が可能と思われました(表2)。

パイロセップ法でどのような検体でも測定可能というわけではありませんが、エタノールに溶解できる試料ではエンドトキシン測定の可能性がでてきました。

表2. パイロセップ法におけるエタノール溶解脂溶性ビタミンのエンドトキシン回収率
試料 濃度(mg/mL) エンドトキシン回収率(%)
ビタミン E 10 91
ビタミン K 10 99
ビタミン D2 10 170

種々の薬剤に対するエンドトキシン試験の条件が整いつつあります。しかし、中には通常の方法では試験が行えない薬剤もあります。パイロセップ法は、操作は少し複雑ですが、通常の方法では試験が行えない試料に試してみたい方法の一つです。今後、パイロセップ法用のキットも商品化する予定です。

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