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【連載】Talking of LAL「第20話 パイロセップ法」

本記事は、和光純薬時報 Vol.63 No.3(1995年7月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第20話 パイロセップ法

パイロセップは、スペーサーを介してヒスチジンを適当な担体に固定化したもので、エンドトキシン吸着体として市販されています(田辺製薬製造、ダイセル工業・和光純薬販売)。パイロセップは、主にエンドトキシン除去に使用されており、条件を決めさえすれば、カラム等を用いて、目的物からエンドトキシンを効率よく除くことができます。

担体として、アガロースを用いたもの(パイロセップ A)とセルロースを用いたもの(パイロセップ C)があり、パイロセップ C の方がエンドトキシンを強固に吸着する条件範囲が広いようです。

田辺製薬では、条件によってエンドトキシン吸着力の変化するパイロセップ A を用いて、試料中のエンドトキシンのみをパイロセップに吸着させ、これを測定する方法を開発しました1)。すなわち、エンドトキシンがパイロセップに吸着し、これを洗浄した後、エンドトキシンが脱着しやすいアルカリ側でリムルス試薬と反応させるという方法です。

我々は、これを「パイロセップ法」と呼んでいます。パイロセップ法には以下の特長があります。

(1)試料は洗浄により除かれるため、リムルス反応時の試料の影響を回避できる。
(2)実験系を工夫すれば、試料中のエンドトキシンを濃縮できるため、感度が向上する。

パイロセップ法には、フィルターカップ法とキャピラリーカラム法があります。

フィルターカップ法では、疎水性の膜のついたフィルターカップ中で、試料とパイロセップを混合し、試料中のエンドトキシンをパイロセップに吸着させ、吸引ろ過により試料を除きます。カップに 20mM 程度の食塩水を加えて洗浄した後、食塩水も吸引ろ過で除きます。フィルターカップに合成基質法用のリムルス試薬を加え、残ったパイロセップと反応させます。最後に、発色したリムルス試薬の反応を止め、吸引ろ過したろ液の吸収を測定します。

パイロセップ-キャピラリーカラム法

キャピラリーカラム法は、キャピラリーの一方をグラスウール等で塞ぎ、シリコンチューブをつなぎます。このキャピラリーにパイロセップを吸い込み、カラムを作製します。吸引には注射器等を利用します。試料、食塩水の順でこのカラムを通し、最後にリムルス試薬をパイロセップと共に吐き出して、パイロセップに吸着したエンドトキシンとリムルス試薬を反応させます。

筆者らは、キャピラリーカラム法をトキシノメーターに応用することを検討し、良好な結果を得ております。すなわち、試料を酢酸緩衝液(pH 5.0)で希釈したものをキャピラリーカラムに通し、20mM の食塩水 2mL で洗浄を行いました。試料が水の場合は、緩衝液による希釈も、食塩水による洗浄も必要ありませんでした。

0.2M トリス-塩酸緩衝液(pH 8.0)を用いて、通常の 1/2 の濃度になるように溶解したリムルス試薬(リムルス ES-Ⅱ テストワコー)0.3mL をキャピラリーカラムに途中まで吸い込み、反応試験管に吐き出しました。これをトキシノメーターで測定すると、4mL の水サンプルを用いた場合、0.5EU/L(0.0005EU/mL)のエンドトキシンが、60 分以内に検出できました。

この感度は、通常のトキシノメーターによる測定の 10 倍以上と考えられます。キャピラリーカラム法では、試料の量を増やしても、試料中のすべてのエンドトキシンをパイロセップに吸着させ、濃縮効果を得ることができます。この点は、これまで感度の点で利用できなかった分野にリムルス試験を応用する場合に有用と考えられます。

パイロセップ法に用いるフィルターカップやキャピラリーカラムは、すべてエンドトキシン-フリーでなければなりません。このような器具を作製することは手間がかかり、測定操作自体もやや複雑です。しかし、一定の条件で反応を行うことができること、エンドトキシンを濃縮できることなどの利点から、利用される分野もあるように思われます。自動化の夢もあり、筆者らは、もう少しパイロセップ法とおつきあいしたいと考えています。

参考文献

  1. Minobe, S. et al. : Anal. Biochem., 198, 292-297 (1991).

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