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Talking of LAL連載

【連載】Talking of LAL「第30話 グラム陰性菌とリムルス試薬の反応性」

本記事は、和光純薬時報 Vol.66 No.1(1998年1月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第30話 グラム陰性菌とリムルス試薬の反応性

エンドトキシンとはグラム陰性菌の外膜に存在するリポ多糖である・・・と一般にいわれています。リポ多糖と一言で言っても、物質として一種類という訳ではありません。菌株によってその構造は様々です。

また、一つの菌株から精製したエンドトキシンでも、O 抗原多糖の繰り返し数が異なる分子が存在するため、種々の分子量のリポ多糖の集合体となっています。これらのことから考えても、グラム陰性菌とリムルス試薬の反応性は、菌株によって異なることが予想されます。

今回は、リムルス試薬と菌体の反応性について考えてみたいと思います。

各種細菌の乾燥菌体を用いて検討を行いました。すなわち、乾燥菌体を生理食塩水で洗浄し、注射用蒸留水にけん濁させた後、リムルス ES-Ⅱテストワコーとトキシノメーター ET-201 を用いて測定しました。菌体数は、それぞれのけん濁液の濁度より、McFarland 比濁法により算出しました。測定値(EU/mg)を菌体数(cells/mg)で割って、菌体あたりのエンドトキシン活性(EU/cell)を求めました。

検討結果を Table 1 に示します。

Table 1. Reactivity of bacteria with endotoxin-specific LAL
Bacteria Endotoxin
(EU/cell)
Gram-negative bacteria
  Eschrichia coli IFO3301 1.4×10-4
  Klebsiella pneumoniae IFO14940T 2.3×10-4
  Salmonella typhimurium IFO13245 5.5×10-4
  Serratia marcescens IFO3046 4.2×10-4
  Pseudomonas aeruginosa IFO12689T 1.4×10-4
  Sphingobacterium spiritivorum IFO14948T 6.4×10-8
  Flavobacterium meningosepticum IFO12535T 9.7×10-10
  Cytophaga johnsonae IFO14942T 7.4×10-9
  Cytophaga succinicans IFO14905T 2.4×10-6
  Sphingomonas paucimobilis IFO13635T 7.1×10-9
Gram-positive bacteria
  Staphylococcus aureus IFO13276 7.3×10-10
  Lactobacillus delbrueckii IFO3202T 2.5×10-10
  Bacillus subtilis IFO13719T 2.5×10-9
  Micrococcus luteus IFO3333T 6.0×10-10

E.coliSalmonella のように臨床的によく見かける菌株では、1 個あたりのエンドトキシン活性はおおよそ 10-4 EU のオーダーでした。エンドトキシンの比活性はまちまちなので、この活性から菌体のリポ多糖を正確に計算することはできませんが、おおよその重量は推測することができます。

例えば、米国標準エンドトキシンは 1 バイアルあたり 1µg のリポ多糖が入っており、その活性が 10000 EU ですから、1 EU の重量は 100pg となります。この値から計算するとグラム陰性菌 1 個が持つリポ多糖は、10 fg(=10-14 g)となります。一般的なグラム陰性菌の持つリポ多糖は数十 fg のオーダーなのかもしれません。

グラム陽性菌では 10-9~10-10 EU/cell と活性が低く、培地からのエンドトキシン混入(洗浄不十分)のレベルと思われました。グラム陰性菌の中でも、SphingobacteriumFlavobacteriumCytophagaSphingomonas は活性が低く、グラム陽性菌と同等の活性しか示さないものがありました。

グラム陰性菌の菌体では、エンドトキシンは蛋白と共に細胞壁の外側に分布しています。今回の結果から、この状態のエンドトキシンも LAL に反応するように思われます。もちろん、菌体から遊離したエンドトキシンが反応しているのかもしれませんが、洗浄を行っていることを考えると菌体上のエンドトキシンも反応していると考えたいところです。

また、Sphingobacterium のようにリポ多糖の代わりにスフィンゴ脂質を細胞壁に持っているグラム陰性菌もあります。このような場合、菌体の LAL に対する反応性は非常に低くなることが予想されます。実際 SphingobacteriumFlavobacteriumCytophaga といった近縁の株で LAL に対する反応性が低かったことは、これらの菌がリポ多糖以外の物質を細胞壁に持っている可能性を示唆しているのかもしれません。

菌株によっては、さらにその外側に莢膜を持っている場合がありますから、これも LAL との反応性に影響を与えそうです。

エンドトキシンは、水溶液中でミセルを形成します。このミセルの大きさがエンドトキシンの活性に大きく影響しています。一方、エンドトキシンの分子は菌株によって異なります。従って、エンドトキシンのミセルの作り方も菌株によって異なると考えられます。

そのうえ、菌株の状態でも LAL に対する反応性が違うとなると、もう何を測定しているのかわからなくなってきます。このようなことから、エンドトキシンと取り組むときは、どのような活性を測りたいか、測定の目的や対象が何かをよく考えて、使用する標準品や測定法を選ぶ必要があると思います。

第31話 パイロセップ法の応用

第29話 抗生物質とエンドトキシン

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