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【テクニカルレポート】HPLCによるゴルフ場使用農薬の分析

本記事は、和光純薬時報 Vol.66 No.2(1998年4月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

環境庁は、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚染を未然に防止するために、平成2年にゴルフ場の排水口における遵守すべき農薬濃度の指針値等を定めた「暫定指導指針」を都道府県に通知し、その指針に基づく水質調査、指導がスタートした。過去2回の改定の後、昨年度(平成9年4月24日付け)さらなる暫定指導指針の改定が行われ、従来の30農薬に加え新たに5種類の農薬名と指針値が追加されるとともに、分析をより容易にするために多成分同時分析法が採用された。

本分析法の対象となる農薬は、アシュラム、オキシン銅、チウラム、トリクロピル酸、メコプロップの5種類であり、分析条件として、シリカゲル系ODS充填剤と0.01Mリン酸緩衝液(pH3.3)を移動相に使用することが規定されている。

そこで、本分析条件に適合する弊社の最適充填剤を検索したところ、オキシン銅のピークもシャープに検出されるWakopak Wakosil-Ⅱ5C18RS (カラムサイズ:4.6 x 150 mm)が最適と判断した。しかし、移動相のpHが3.3では、チウラムとトリクロピル酸のピークが重なり分離しなかったため、pHを3.5に変更し測定条件とした。河川水に標準を添加し、指針書の試験溶液調製法に従い前処理後、HPLCにより分析した時のクロマトグラムを図1.に示した。


図1.Wakopak Wakosil-Ⅱ 5C18 RSによる分離例
Conditions
Column

Wakosil-Ⅱ 5C18RS, 4.6 x 150 mm

Eluent

CH3CN / pH3.5 10mM KH2PO4, H3PO4 = 35/65 (v/v)

Flow rate

1.0 mL/min. at 40 ℃

Detection

UV 230 - 270 nm Max.

Injection vol.

10 µL

Sample

①Asulam 10 µg/mL ②Oxine-Cu 5 µg/mL ③Triclopyr 10 µg/mL ④MCPP 10 µg/mL ⑤Thiuram 10 µg/mL

一方、先に筆者らのグループで開発した農薬の多成分同時分析用カラムWakopak Wakosil Agri-9を用いて、同じ処理検体を分析した場合のクロマトグラムを図2.に示した。両者とも各農薬は十分に分離しており実用上問題はないと考えられるが、1)分析時間、2)フロント部分に溶出する夾雑物との重なりの程度、3)全体的な分離のバランス、を考慮にいれると後者の方がより実用性が高いと判断された。


図2.Wakopak Wakosil Agri-9 による分離例
Conditions
Column

Wakosil Agri-9, 4.6 x 250 mm

Eluent

CH3CN / pH3.7 50mM KH2PO4, H3PO4 = 35/65 (v/v) add. EDTA 2Na 0.01%

Flow rate

1.0 mL/min. at 45℃

Detection

UV 230-270 nm Max.

Injection vol.

10 µL

Sample

①Asulam 10 µg/mL ②Oxine-Cu 5 µg/mL ③Triclopyr 10 µg/mL ④MCPP 10 µg/mL ⑤Thiuram 10 µg/mL

関連資料

  1. ゴルフ場使用農薬に係る暫定指導指針の改定について
    平成9年4月24日付け環境庁通達
  2. HPLCによる残留農薬の迅速分析について
    本誌、Vol.62, No.1 (1994)
  3. 残留農薬試験用固相抽出カートリッジ Presep-Agri
    本誌、Vol.62, No.3 (1994)

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