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【連載】Talking of LAL「第34話 β-グルカンとリムルス試薬の反応性」

本記事は、和光純薬時報 Vol.67 No.1(1999年1月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第34話 β-グルカンとリムルス試薬の反応性

リムルス試薬がエンドトキシンだけでなく β-グルカンにも反応することは、すでにお話ししたとおりです。一口に β-グルカンといっても、重合度や β-1,6 結合の割合などの違いにより、いろいろな構造が考えられます。では、リムルス試薬に反応しやすい β-グルカンの構造とはどのようなものでしょうか。

今回は、β-グルカンの重合度と修飾度の観点から、β- グルカンとリムルス試薬の反応性について考えてみましょう。

Fig.1 各種グルカンのリムルス試薬との反応性

リムルス試薬と各種グルカンとの反応性は Fig. 1 の通りです。各バーは、curdlan の活性を 1 としたときのそれぞれの活性を表しており、バーが長いほどリムルス試薬との反応性が強いということになります。

Paramylon から curdlanまではすべて β-1,3-グルコシド結合を持っており、これらの反応性が高いことから、リムルス試薬は β-1,3-グルコシド結合を持っているグルカンによく反応すると考えられます。

Fig.2 リムルス試薬の反応性に及ぼすβ-グルカンの重合度の影響

それでは,いくつくらいのグルコースがつながれば、リムルス試薬が活性化するのでしょう。Fig. 2 に、ギ酸分解したカードランの分画物を用いた筆者らのデータを示します。重合度(Degree of polymerization) が 6 のものはほとんど反応しませんが、14 では少し反応が認められ、49 以上でほぼ一定となりました。

curdlan は β-1,3-グルコシド結合のみからなる直鎖の β- グルカンといわれていますが、天然の β-グルカンでは、curdlan のようなグルカンは少なく、β-1,3-グルコシド結合以外に β-1,6-グルコシド結合を持っているものが多いようです。

Fig.3 リムルス試薬の反応性に及ぼすβ-グルカンのCM基置換度の影響

筆者らは、curdlan をカルボキシメチル化(CM 化)し、リムルス試薬との反応性への影響を調べました。その結果、一つのグルコースあたり 0.7 個以上の CM 基が導入されると反応性の低下が認められました。1 個以上が導入されるとその反応性は大幅に低下しました。

このことから、β-1,6-グルコシド結合が増えると β-グルカンのリムルス試薬に対する反応性が低下する可能性が考えられます。

このような視点からもう一度 Fig. 1 のデータを見直してみましょう。直鎖の curdlan の反応性が最も強く、β-1,6-グルコシド結合を持つ lentinan や laminaran の活性は低くなっています。また、グルコースの重合度が 20 から 30 程度の laminaran は、重合度 5000 以上の lentinan に比べると、反応性が低いという結果です。

このあたりの結果は、curdlan 分解物 や CM 化 curdlan の反応性と傾向が一致していると思います。

これらの結果をまとめますと次のようになります。

(1) リムルス試薬は β-1,3-グルコシド結合をもつグルカンに反応する。
(2) β-グルカンのリムルス試薬に対する反応性は、グルコースの重合度が大きくなるに従って増大し、重合度が 50 を越えるとほぼ一定になる。
(3) β-グルカンのリムルス試薬に対する反応性は、β-1,3-グルコシド結合以外の結合が増えるに従って反応性が低下する。

今回のデータは、筆者らの試薬を用いた結果です。日本産カブトガニ由来の試薬を用いた報告1) もありますのでご参照下さい。

参考文献

  1. Tanaka, S. et al. : Carbohydor. Res., 218, 167 (1991).

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