【クロマトQ&A】カラム内径を細くすると本当に性能が良くなるのでしょうか。
本記事は、Analytical Circle No.8(1998年3月号)に掲載されたものです。
カラム内径を細くすると本当に性能 が良くなるのでしょうか。
セミミクロカラムやミクロカラムは、一般的に次のような有用性が有ります。
- 移動相使用量が少なくて済む
- わずかなサンプル量で分析できる
- 検出感度が増大する
等です。
反面、HPLC装置がミクロカラムに対応している事(ポンプの流量精度、注入装置、検出器、配管etc.)が必須です。カラム内径が小さければ小さいほど装置の影響を受け易く、取り扱いに注意が必要となります。
今回のご質問は、"性能がよくなる?"という内容のため、それに関連するデータなどを紹介致します。
図1は、ほぼ同じカラム容量で内径が異なるカラムの理論段数や圧力を示したものです。
カラム内径が細くなるにつれ理論段数の向上がみられます。すなわち同流速にしピークの溶出時間を合わせるとピークが高くなり実効感度が上がっています。
ただし、このデータはカラム長さ、それぞれのカラム内径に見合った最適流量(理論段数が最高を示す)、及びサンプル注入量は考慮されていません。
しかし、図2に示す流速による影響を考慮に入れても、カラム容量が同じならば内径が細いほど理論段数が高い傾向にあることがお分かりいただけると思います。すなわち、3)検出感度が増大し、2)わずかなサンプル量で分析できるということを示しています。
また図1において、内径が細くなるほどカラム圧力が高くなっており、使いづらい印象を受けます。
しかし内径の異なるカラムも、長さが同じであれば、最適流量で使用するとき、すべての内径で同じカラム圧力を示します。
各内径のカラムにおける最適流量は、カラム内を流れる移動相の線速度としては、ほぼ同じです。最適流量で使用する場合、カラム圧力は等しいが流量は内径により違ってきます。
すなわち、太いカラムは大量の移動相を流す必要があるのに対し、細いカラムは少量の移動相で済むということになります。
その他、サンプル溶解液やサンプル濃度、注入量などに留意し、至適条件を設定すれば、コンベンショナルサイズに比べ数倍感度をアップできます。
最後に16種類の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分離比較データを図3にご紹介致します。