バソプレシン ELISAキット

バソプレシンは9アミノ酸から構成されるペプチドホルモンです。脳の視床下部で産生され、下垂体後葉から血液中に放出されます。古くから抗利尿ホルモンとして知られていますが、近年、バソプレシンやバソプレシン受容体(V1a/V1b)が脳にも存在することが明らかとなり、神経伝達物質としての役割にも注目が集まっています。これまでにストレス、社会行動、学習などに関与することが報告されており、うつ病、統合失調症、摂食障害などの精神疾患との関連も指摘されています。従来のバソプレシン測定ではラジオイムノアッセイが広く用いられていましたが、放射性同位体(RI)を必要とするため、測定には特殊な設備が必要でした。ELISAキットも市販されていますが、必要検体量が多いことや乳び検体では異常高値を示し、煩雑な前処理が必要などの課題があります。

バソプレシンとは?

バソプレシン(Vasopressin)は9アミノ酸から構成されるペプチドホルモンです。ほとんどの哺乳類では、8番目のアミノ酸がアルギニンであることから、アルギニンバソプレシン(AVP: (Arg8)-Vasopressin)と呼ばれています。バソプレシンのアミノ酸配列は、子宮の収縮や母乳の分泌、社会行動などとの関与が知られるオキシトシンと類似しており、その違いはわずか2アミノ酸です。いずれも脳の視床下部で産生され、下垂体後葉から血液中に放出されます。

バソプレシンは古くから抗利尿ホルモンとして知られており、Antidiuretic hormone(ADH)の名称で呼ばれる場合もあります。血液中に分泌されたバソプレシンは腎臓の腎集合管での水の再吸収を促進し、抗利尿作用を示します。分子レベルではバソプレシンによって腎集合管細胞のアクアポリンが細胞膜に移行し、水の透過性を向上させることで水の再吸収が促進されると考えられています1)。バソプレシンにはV1a、V1b、V2の3種類の受容体が存在しており、抗利尿作用は腎臓に発現するV2受容体が関与しています。

近年、バソプレシンやバソプレシン受容体(V1a/V1b)が脳にも存在することが明らかとなり、神経伝達物質としての役割にも注目が集まっています。これまでにバソプレシンはストレス、社会行動、学習などに関与することが報告されています。興味深いことに、オキシトシンは主にメスの社会性行動に関与し、バソプレシンはオスの繁殖行動に影響を与えます2)。例えば一夫多妻制のプレーリーハタネズミを用いた研究では、オスの脳内にバソプレシンを投与すると父性行動や特定の配偶者への嗜好性が促進されます2)。またヒトやマウスの研究ではうつ病、統合失調症、摂食障害などの精神疾患との関連も指摘されており、今後、疾患の原因解明や治療薬の開発に役立つことが期待されています。

従来のバソプレシン測定ではラジオイムノアッセイが広く用いられていましたが、放射性同位体(RI)を必要とするため、測定には特殊な設備が必要でした。ELISAキットも市販されていますが、必要検体量が多いことや乳び検体では異常高値を示し、煩雑な前処理が必要などの課題があります。

バソプレシン ELISAキットワコー

バソプレシン ELISAキットワコーは、検体中の(Arg8)-バソプレシンを定量できるELISAキットです。本製品は、従来の測定キットよりも必要検体量が少なく、かつ高感度で測定することが可能です。またこれまで煩雑な前処理が必要であった乳び検体に対しても、簡便な前処理で正確な測定を行うことができます。

[注意事項]
本製品は高感度な競合法を採用しているため、プレートシェーカーおよび発光測定用プレートリーダーが必要となります。

特長

  • 簡便な前処理
    前処理はキット添付の前処理液を添加し、攪拌、遠心分離するだけ
  • 少量検体で測定可能
    最低必要検体量は50 μL (n=2)
  • 高感度測定
    検量線下限値は1.00 pg/mL
  • 乳びの影響を受けづらい
    乳び検体でも異常高値を示さずに測定可能
  • 放射性同位体(RI)を使用していない
    RI実験の特殊な設備は不要

キット性能

検量線範囲 1.00~2,000 pg/mL
測定対象 (Arg8)-バソプレシン
測定対象検体 ヒト 唾液 / 尿 / 血清 / 血漿(EDTA)
マウス 血清 / 血漿(EDTA)
ラット 血清 / 血漿(EDTA)
必要検体量 50 μL (n=2)
測定時間 約2.5時間
検出法 発光系 (発光測定用プレートリーダーが必要)

測定原理

本製品は競合法を原理としており、検体由来のバソプレシンが多いほど発光強度は減少します。

測定原理

従来品との相関

本製品および他社製品を用いて、ヒト唾液、尿、血清中のバソプレシンを測定し、その測定値の相関を確認した。

ヒト唾液
ヒト尿
ヒト血清

[結果]
本製品および他社製品の測定値に高い相関が見られた。

乳びの影響

本製品および他社製品を用いて、ヒト血清サンプルのバソプレシンを測定し、製品間の相関を確認した。なお他社製品では乳び検体において異常高値を示し、検量線範囲外となったため、メーカーの推奨する前処理方法を用いて、再度測定を実施した。測定値の相関は、乳び検体(前処理済み)を含む全検体もしくは乳び検体のみを除外した場合で行った。

全検体
乳び検体を
除外
乳び検体除外
検体 測定値 (pg/mL) 備考
本製品 他社製品E
1 51 292
2 114 494
3 158 1,086
4 170 1,065
5 0 208
6 48 3,874 乳び検体++ (前処理実施)
7 156 5,722 乳び検体+++ (前処理実施)
8 204 4,177 乳び検体+++ (前処理実施)
9 66 3,132 乳び検体++ (前処理実施)
10 67 3,280 乳び検体++ (前処理実施)

[結果]
乳び検体において他社製品では異常高値を示し、前処理を実施しても測定値が高くなる傾向があった。なお、乳び検体を除外した場合において、本製品と他社製品には測定値に高い相関関係が見られた。

ヒト検体の測定

本製品を用いて、ヒトの唾液、尿、血清中のバソプレシンを測定した。

ヒト唾液
ヒト尿
ヒト血清

参考文献

  1. Nielsen, S. et al.: Proceedings of the National Academy of Sciences, 92(4), 1013(1995).
    Vasopressin increases water permeability of kidney collecting duct by inducing translocation of aquaporin-CD water channels to plasma membrane
  2. Donaldson, Z. R. and Young, L. J.: Science, 322(5903), 900(2008).
    Oxytocin, vasopressin, and the neurogenetics of sociality

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