VHH フラグメント二次抗体 (nanobodies)

Jackson社 ナノ二次抗体

アルパカ や ラマ 等 ラクダ科 の動物は、重鎖のみで構成されたユニークな抗体を産生します。その抗原結合フラグメント(Fab) は、重鎖可変領域のみの フラグメント抗体(VHH フラグメント)や ナノボディ と呼ばれ、新しい抗体のフォーマットとして注目されています。

Jackson社の ナノ二次抗体 は、アルパカで産生された ポリクローナル VHH フラグメント 抗体(ナノボディ)です。
VHH フラグメント 抗体の分子量は 15 kDa と、一般的な抗体と比べて、その大きさは 10分の1 程度であるため、細胞への浸透性が高く、細胞染色に最適です。
Jackson社は、特異性を高めるために免疫動物以外の動物種の血清タンパク質の吸着処理を行った、抗-ヒト、抗-マウス、抗-ウサギ の ナノ二次抗体 に レポーター分子 や Alexa Fluor® 等、各種蛍光標識したラインアップを取り揃えています。

適用

  • IF(免疫蛍光染色)
  • 超解像顕微鏡観察(SRM:Super-resolution microscopy)
  • WB (ウェスタンブロット)
  • FC (フローサイトメトリー)

特長

サイズが小さい

一次抗体と ナノ二次抗体 の複合体は一般的な抗体の複合体と比べてサイズが小さく、抗原と標識物質がより近接するため、目的タンパク質の位置を正確に見ることができます。Alexa Fluor® 等多くの標識のラインアップがあり、 STED顕微鏡(誘導放出抑制顕微鏡)や STORM顕微鏡(確率的光学再構築顕微鏡)等、超解像顕微鏡にご使用いただけます。

【Jackson社 ナノ二次抗体 を用いた栄養膜の細胞内イメージング】

Cytokeratin 8 (青) (DyLight™ 405 VHH Fragment Anti-Rabbit (メーカーコード:611-474-215))
Vinculin (緑) (Alexa Fluor® 488 VHH Fragment Anti-Mouse (メーカーコード:615-544-214))
Phalloidin (F-actin) (赤)

10% Alpaca serum (メーカーコード:028-000-001) でブロッキングを行った。

<写真提供> Derek Sung, MD/PhD Student · University of Pennsylvania School of Medicine

ポリクローナル抗体

ポリクローナル抗体は、一次抗体に対して様々な結合部位や親和性を有する抗体です。モノクローナル抗体と比較して、一次抗体に結合する抗体の量が多く、シグナルが増強されるので、発現量が低いタンパク質に対しても感度良く検出できます。

ポリクローナル抗体である ナノ二次抗体(右)は、モノクローナル ナノボディ(左)と比べて、一次抗体の多くの部分に結合することができる。

組織透過性が高い

ナノ二次抗体 は抗体サイズが小さいため、組織透過性が高く、一般の抗体と比べ、組織間を自由に動くことができます。また、Fc フラグメントがないので、組織から除去されやすく、Immuno-PET のような画像診断法に適しています。

【マウス 脳 ホルマリン固定パラフィン包埋中 (FFPE)の チロシンヒドロキシラーゼ の免疫組織染色】

マウス 脳 の矢状切片を 5% アルパカ正常血清 Tris バッファー でブロッキングした。 1:250 で希釈した一次抗体(ウサギ 抗-チロシンヒドロキシラーゼ)を4℃で 一晩 インキュベーション した後、 1:500 希釈の ナノ二次抗体(Biotin-SP VHH Fragment Anti-Rabbit (メーカーコード:611-064-215) を室温で 1時間 反応させ、更に 1:50 希釈の Vector ABC Elite を室温で 30分間 反応させた。
チロシンヒドロキシラーゼの可視化には DAB を使用した。
組織は ヘマトキシリン で対比染色を行った。

<資料提供> UNC’s Histology Research Core Facility

【マウス 脾臓 ホルマリン固定パラフィン包埋中 (FFPE) の CD8 の免疫組織染色】

マウス 脾臓組織を 5%ア ルパカ正常血清 Tris バッファー でブロッキングした。 1:200 で希釈した一次抗体(Rabbit anti-Tyrosine CD8:Cell Signaling #98941)を 4℃ で 一晩 インキュベーション した後、1:500 希釈の ナノ二次抗体(Biotin-SP VHH Fragment Anti-Rabbit) (メーカーコード:611-064-215) を室温で 1時間 反応させ、更に、1:50 希釈の Vector ABC Elite を室温で 30分間 反応させた。
チロシンヒドロキシラーゼ の可視化には DAB を使用した。
組織は ヘマトキシリン で対比染色を行った。

<資料提供> UNC’s Histology Research Core Facility

生細胞、死細胞に関わらず染色可能

Fc フラグメント を有する通常の二次抗体は、生細胞の透過処理が Fc フラグメント の結合を介して生物学的機能に影響を与える可能性があるため、一般に固定サンプルの標識にのみ適しています。ナノ二次抗体 は、Fc フラグメント がないため、生細胞の免疫染色に使用できます。

吸着処理済みであるため高い特異性と低バックグラウンド

ナノ二次抗体 は免疫動物以外の動物種に対して吸着処理を行っているため、高い特異性と低バックグラウンドを示します。ナノ二次抗体 を組み合わせることで、非常にきれいな多重染色が可能となります。

幅広い波長での染色が可能

ナノ二次抗体 は紫外線域から近赤外まで幅広い蛍光色素標識をラインアップしています。同時に複数の標的タンパク質の検出にご使用いただけます。

【ナノ二次抗体 を用いた多重染色例】

肺組織を E-cadherin (epithelial cells) (緑) (Alexa Fluor® 488 VHH Fragment Anti-Rabbit (メーカーコード:611-544-215)) で、平滑筋 αアクチン(Alpha-smooth muscle actin)(マゼンタ) (Alexa Fluor® 647 VHH Fragment Anti-Mouse (メーカーコード:615-604-214)) で染色した。
組織は、10% Alpaca serum (メーカーコード:028-000-001) でブロッキングを行った。

<写真提供> Derek Sung, MD/PhD Student · University of Pennsylvania School of Medicine

ナノ二次抗体はフローサイトメトリーでの検出にもご使用いただけます。ナノ二次抗体は分子量が小さいため一次抗体に対して多く結合することができます。そのため蛍光強度の増幅に優れています。また、Fcフラグメントがないため、フローサイトメトリー解析のバックグラウンド増加原因であるFc受容体との結合も起こりません。

【ナノ二次抗体を用いたフローサイトメトリー解析の例】

ヒト白血球を5% Alpaca serum (メーカーコード:028-000-001) でブロッキングを行った後に、マウス抗CD3抗体で一次抗体処理を行った。一次抗体処理後にマウス抗CD3抗体をAlexa Fluor® 488 VHH Fragment Anti-Rabbit (メーカーコード:611-544-215)で染色した。
Aは二次抗体のみを処理した検体の解析結果であり、左側のピークが強かった。この結果は細胞上への非特異的な結合が見られないことを示している。
BはAと対照的に右側にピークが強い結果となった。これは一次抗体とナノ二次抗体の複合体が細胞表面のCD3を染色していることを示している。

製品一覧

Anti-Human(ヒト) Anti-Mouse(マウス) Anti-Rabbit(ウサギ)

Anti-Human(ヒト)

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※価格情報は、表中の「メーカーコード」をクリックしてください。

抗体名 標識 メーカーコード メーカー製品情報
VHH Fragment Alpaca Anti-Human IgG (H+L)
(min X Bov, Ms, Rb Sr Prot)
非標識 609-004-213 Product Information
Biotin-SP 609-064-213 Product Information
DyLight™405 A=400, E=421 609-474-213 Product Information
Alexa Fluor®488 A=493, E=519 609-544-213 Product Information
Cyanine Cy™3 A=550, E=570 609-164-213 Product Information
Rhodamine Red™-X A=570, E=590 609-294-213 Product Information
Alexa Fluor®594 A=591, E=614 609-584-213 Product Information
Alexa Fluor®647 A=651, E=667 609-604-213 Product Information
Alexa Fluor®680 A=684, E=702 609-624-213 Product Information
Alexa Fluor®790 A=792, E=803 609-654-213 Product Information

本製品は、in vitro での試験研究用です。
商用目的での使用は契約により制限されます。詳細はお問い合わせください。

Anti-Mouse(マウス)

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抗体名 標識 メーカーコード メーカー製品情報
VHH Fragment Alpaca Anti-Mouse IgG (H+L)
(min X Bov, Hu, Rb Sr Prot)
非標識 615-004-214 Product Information
Biotin-SP 615-064-214 Product Information
DyLight™405 A=400, E=421 615-474-214 Product Information
Alexa Fluor®488 A=493, E=519 615-544-214 Product Information
Cyanine Cy™3 A=550, E=570 615-164-214 Product Information
Rhodamine Red™-X A=570, E=590 615-294-214 Product Information
Alexa Fluor®594 A=591, E=614 615-584-214 Product Information
Alexa Fluor®647 A=651, E=667 615-604-214 Product Information
Alexa Fluor®680 A=684, E=702 615-624-214 Product Information
Alexa Fluor®790 A=792, E=803 615-654-214 Product Information

本製品は、in vitro での試験研究用です。
商用目的での使用は契約により制限されます。詳細はお問い合わせください。

Anti-Rabbit(ウサギ)

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※価格情報は、表中の「メーカーコード」をクリックしてください。

抗体名 標識 メーカーコード メーカー製品情報
VHH Fragment Alpaca Anti-Rabbit IgG (H+L)
(min X Bov, Hu, Ms Sr Prot)
非標識 611-004-215 Product Information
Biotin-SP 611-064-215 Product Information
DyLight™405 A=400, E=421 611-474-215 Product Information
Alexa Fluor®488 A=493, E=519 611-544-215 Product Information
Cyanine Cy™3 A=550, E=570 611-164-215 Product Information
Rhodamine Red™-X A=570, E=590 611-294-215 Product Information
Alexa Fluor®594 A=591, E=614 611-584-215 Product Information
Alexa Fluor®647 A=651, E=667 611-604-215 Product Information
Alexa Fluor®680 A=684, E=702 611-624-215 Product Information
Alexa Fluor®790 A=792, E=803 611-654-215 Product Information

本製品は、in vitro での試験研究用です。
商用目的での使用は契約により制限されます。詳細はお問い合わせください。

※Nanobody および nanobodies は Ablynx N.V. の登録商標です。
※DyLight™ はThermo Fisher Scientificの商標です。
※Cy™ はCytivaの商標です。
※Rhodamine Red™ -X はThermo Fisher Scientificの商標です。
※Alexa Fluor® はThermo Fisher Scientificの登録商標です。

参考文献

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関連製品一覧

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