酵素

酵素とは触媒活性を持つ分子の総称で、生体中においては主にタンパク質がその役割を担っています。酵素には基質特異性があり、特定の基質に対して特定の反応を触媒します。実験に使用される酵素の多くは既に生物が産生していたものを利用していますが、遺伝子工学・タンパク質工学の発展によって目的に合った酵素を新たに創出し、安定的に生産することが可能になりました。当社ではタンパク質分析に使用されるリシルエンドペプチダーゼや、細胞分散に必要なトリプシンEDTA、溶菌酵素のアクロモペプチダーゼなどライフサイエンス分野に欠かせない酵素をラインアップしています。

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なぜ酵素は反応を触媒できるのか

化学反応が進行するには、反応物質から生成物質へ移行する途中に形成される遷移状態が障壁となります。遷移状態の形成にはエネルギー(活性化エネルギー)が必要となり、酵素なしの自然条件では反応はほとんど進みません。

酵素の役割は、この遷移状態の形成に必要な活性化エネルギーを下げることにあります。酵素の反応部位(活性部位)に基質が入ると、基質は変形され、遷移状態に近い形をとります。これにより低い活性化エネルギー(ex.分子の衝突によるエネルギー)でも反応が進行するようになります(図1)。

酵素の分類 (EC番号とは)

酵素は名称がその由来、作用などから付けられるために混乱しやすいので、国際化学連合および生化学連合の酵素委員会は酵素を分類し、各作用ごとに酵素番号(Enzyme Commission Number/EC番号)を与えて整理しました。酵素番号は、「EC」から始まり、分類主群・分類副群・分類副々群・分類副々群内での登録番号から構成されています。ただしCAS番号やCI番号とは異なり、EC番号が同じでも「同じ作用をする酵素」であるだけで、全く同じ動作条件を持つ酵素とは限りません。

 

表1: EC番号による酵素の分類と触媒反応

EC番号 酵素 触媒反応
1.X.X.X 酸化還元酵素 (オキシドレダクターゼ) 酸化還元反応を触媒
ex. アルコールデヒロドゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ
2.X.X.X 転移酵素 (トランスフェラーゼ) 基質間で、ある基の転移を触媒
ex. DNAポリメラーゼ、プロテインキナーゼA
3.X.X.X 加水分解酵素 (ヒドロラーゼ) 脱水反応で生じた結合の加水分解を触媒
ex. アミラーゼ、セリンエンドペプチダーゼ
4.X.X.X 脱離酵素 (リアーゼ) 基質からある基の脱離を触媒
(加水分解や酸化によらない)
ex.ピルビン酸デカルボキシラーゼ、乳酸アルドラーゼ
5.X.X.X 異性化酵素 (イソメラーゼ) 異性体間の転換を触媒
ex. DNAトポイソメラーゼ、メチオニンラセマーゼ
6.X.X.X 連結酵素 (リガーゼ) ATPの加水分解に共役し、二分子の結合を触媒
ex. DNAリガーゼ、メチオニンtRNAリガーゼ
7.X.X.X 輸送酵素 (トランスロカーゼ) 膜を挟んだイオンや分子の輸送を触媒
ex. NADH:ユビキノンレダクターゼ、ABC型Na+トランスポーター

参考文献・サイト

・Bruce Alberts他 著, 中村桂子 松原謙一 監訳, Essential細胞生物学 原書第2版, 南江堂, 2005
ExplorEnz - The Enzyme Database