タンパク質実験

タンパク質は、生体反応の触媒、刺激への応答、分子輸送体など、生命現象において多様な機能を担っています。
当社では、タンパク質抽出試薬やSDS-PAGE試薬など基礎試薬のみならず、高い親和性と特異性を持つ「PAタグシステム」やりん酸化タンパク質を分離・検出する「Phos-tag」製品などユニークな試薬を提供しています。

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学術コンテンツ

タンパク質とは?

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タンパク質はアミノ酸がペプチド結合によってつながった分子です。細胞を構成する成分の約15%を占めており、生命現象の中心的役割を担っています。生物のセントラルドグマでは、DNAの遺伝情報がRNAに転写され、それを翻訳した最終産物がタンパク質です。 タンパク質はアミノ酸の配列によって多様な構造を示し、その構造によって機能が決められます。その役割は実に様々で、生体内における化学反応の触媒や、シグナルの伝達および受容、細胞や組織の機械的な支持および運動などに関わっています。

タンパク質の構造と機能

生体中のタンパク質は20種類のアミノ酸で構成されており(表1)、アミノ酸配列がタンパク質の構造を決定する主な要因です。タンパク質に共通してみられる二次構造としてα-ヘリックスやβ-シートがあり、それらに加えて、極性アミノ酸と非極性アミノ酸の分布、システイン側鎖同士で形成するジスルフィド結合の有無、りん酸化などの翻訳後修飾などが影響し、タンパク質の三次元構造が形成されます。

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タンパク質はその固有の三次元構造によって、特定の分子と特異的に結合することができ、その分子をタンパク質のリガンドと呼びます。タンパク質とリガンドの結合は、主に水素結合やファンデルワールス引力、疎水性相互作用など比較的弱い結合によって生じます。

タンパク質の一種である酵素は基質と呼ばれるリガンドと特異的に結合し、特定の化学反応を触媒します。酵素が結合できる基質や触媒できる化学反応は酵素の三次元構造によって決まります。また酵素がりん酸化などの修飾を受けたり、酵素に別の分子が結合したりするとその三次元構造が変化し、それに伴って酵素の活性も変わります。

タンパク質研究の手法

タンパク質を理解するためにはどのようなタンパク質なのか(同定)、どのような構造をとるのか(構造解析)、どのような機能を有するのか(機能解析)を知らなければなりません。タンパク質研究で一般的に用いられる手法を以下に紹介します。

発現

既にタンパク質をコードする遺伝子が明らかである場合、目的タンパク質のcDNAを挿入した タンパク質発現ベクターを細胞に導入することで、細胞に目的タンパク質を作らせることが可能です。導入する細胞の種類や、一過性発現か安定発現か、タグなどを付加するかなどによって適切なベクターを選択する必要があります。

抽出・精製

組織や細胞からタンパク質を抽出するためには、細胞を溶解もしくは破砕する必要があります。一般的に界面活性剤を含む溶解バッファーで細胞膜を溶解する方法と物理的に細胞を破砕する方法が用いられます。また膜タンパク質を抽出するためには、膜タンパク質を可溶化する界面活性剤(膜タンパク質可溶化剤)が用いられます。

タンパク質の精製にはカラムクロマトグラフィーが良く用いられます。イオン交換クロマトグラフィーやゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどから精製したいタンパク質の性状を元に適切な手法を選択します。アフィニティークロマトグラフィーにおいて目的のタンパク質に対するリガンドが存在しない場合には、タンパク質にアフィニティータグ(エピトープタグ)を付加して、アフィニティータグに対するリガンドを用いて精製する場合もあります。

分離・同定

タンパク質の混合液から特定のタンパク質を分離するには電気泳動が有効です。電気泳動による分離では、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)によりタンパク質にマイナスの電荷を付与した後、ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行うSDS-PAGEが最も多用されています。SDS-PAGEでは分子量によってタンパク質を分離することができます。

SDS-PAGEなどで分離したタンパク質は質量分析によって同定することが可能です。目的タンパク質のゲルを切り出し、ゲル内で配列特異的なプロテアーゼ(ペプチダーゼ)による断片化を行います。その後、ゲルから断片化されたペプチドを回収し、質量分析(LC-MS/MSやMALDI-TOF MS)にかけることで断片の質量情報が取得できます。そして得られた情報をデータベースと照合することでタンパク質の同定ができます。

検出・定量

目的タンパク質の有無やその発現量を調べるためには、目的にタンパク質に特異的に結合する分子を使用します。特に、抗体はその特異性からタンパク質の検出や定量に多用されます。抗体によるタンパク質の検出には、SDS-PAGEで分離したタンパク質をメンブレンに転写し、抗原抗体反応を行うウエスタンブロッティングや組織や細胞に抗体を添加して抗原抗体反応を行う免疫染色などがあります。また抗原や抗体を固相化したプレートと酵素標識された抗体を用いて目的タンパク質を検出するELISAは試料中のタンパク質を精度高く定量することが可能です。

なお目的タンパク質の発現量を評価する際などに、サンプル間の総タンパク質を揃えて比較する必要があります。総タンパク質の定量には、BCA法やBradford法、Lowry法、ピロガロールレッド・モリブデン錯体発色法などがあり、比較的簡便な操作で定量することが可能です。

修飾タンパク質の解析

タンパク質の翻訳後修飾は、タンパク質の構造や機能に大きな影響を与えます。特にタンパク質のりん酸化はタンパク質の活性制御に広く用いられており、目的タンパク質のりん酸化状態を調べるためには、りん酸化抗体が良く用いられます。広島大学大学院 医歯薬学総合研究科 医薬品分子機能科学研究室にて開発された、りん酸化タンパク質を特異的に捕捉する機能分子「Phos-tag®」はりん酸化抗体がない場合にもりん酸化タンパク質の分離、精製、分析、検出を行うことができ、りん酸化タンパク質の解析に有用なツールとなっています。

参考文献

竹縄忠臣 編:「タンパク質実験ハンドブック」 (羊土社) (2003).
ブルース・アルバーツ、中村桂子 松原謙一 監訳:「Essential細胞生物学 (原書第2版)」 (南江堂) (2005).
岡田雅人、宮崎香 編:「改訂第4版 タンパク質実験ノート 上 タンパク質をとり出そう (抽出・精製・発現編)」 (羊土社) (2011).
岡田雅人、三木裕明、宮崎香 編:「改訂第4版 タンパク質実験ノート 下 タンパク質をしらべよう (機能解析編)」 (羊土社) (2011).

製品ラインアップ

タンパク質発現
タンパク質抽出/精製
タンパク質電気泳動試薬
ウエスタンブロッティング
総タンパク質定量
タンパク質定量
タンパク質解析
抗体
酵素