グリコシダーゼ

グリコシダーゼはグリコシド結合を加水分解する酵素の総称で、生体では糖質の分解や糖タンパク質のプロセシングなどを担っています。また抗体医薬おいて、糖鎖修飾が抗体分子の活性や安全性に寄与することが明らかになっており、その分析に使用される高品質のグリコシダーゼが求められています。当社では抗体の糖鎖分析に使用可能なGenovis社のグリコシダーゼを取り扱っております。

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グリコシダーゼとは?

グリコシダーゼとはグリコシド結合を加水分解する酵素の総称です。糖鎖内部のグリコシド結合を分解するグリコシダーゼをエンドグリコシダーゼ、糖鎖末端のグリコシド結合を分解するグリコシダーゼをエキソグリコシダーゼと呼びます。また分解するグリコシド結合のα、β配置にしたがって、グリコシダーゼの名称の前にα-あるいはβ-がつきます。

グリコシダーゼは糖の消化や細胞壁の分解だけでなく、糖鎖のプロセシングや代謝分解を担う重要な酵素であり、糖鎖の機能を介してタンパク質の機能調節や細胞識別に関与しています。また特定の糖鎖の立体構造や化学結合を認識して分解することができるため、糖鎖研究において糖鎖の構造や機能を明らかにする際に有用なツールとして利用されています。

グリコシダーゼと抗体医薬

IgGは重鎖(H鎖)のFc部分にあたる297残基目のアスパラギン酸(Asn297)にはN-結合型糖鎖が付加されています。この糖鎖は複合型二本鎖を基本構造としていますが、その構成には多様性があることが分かっています。

Asn297に付加される糖鎖は、抗原との結合にはほとんど影響を与えませんが、この糖鎖を除去すると抗原抗体反応による抗体依存性細胞障害活性(Antibody Dependent Cellular Cytotoxicity/ADCC)や補体依存性細胞障害活性(Complement-Dependent Cytotoxicity /CDC)が低下したり、Fc受容体との結合性が低下することが報告されています。その一方、Asn297N-結合型糖鎖にあるフコースを除去するとADCC活性が増強されることが明らかになっており、抗体医薬機能向上のターゲットとして糖鎖が注目されています。

また抗体医薬品の機能だけではなく安全性についても糖鎖は考慮すべき要因です。動物細胞を用いて組換えタンパク質で抗体を産生した場合、非ヒト型糖鎖(Galα1-3GalやNeuGc)が付加される可能性がありますが、これらの非ヒト型糖鎖はアナフィラキシー発症を引き起こすことが報告されています。そのため「抗体医薬品の品質評価のためのガイダンス」(厚生労働省)では、非ヒト型糖鎖の結合している場合は、その割合や安全性への影響を考慮すべきと記載されています。

抗体の糖鎖解析のアプローチとしては① 単糖に分解して組成を調べる、② 酵素を使用して糖鎖を切り出し、質量分析を行う、③ プロテアーゼで糖ペプチド断片を生成し、質量分析を行う方法などがあります。特に抗体の糖鎖を特異的に切断するエンドグリコシダーゼEndoSは抗体の糖鎖解析において有用なツールです。

参考文献

糖鎖工学 編集委員会編:「糖鎖工学(第1版)」 (産業調査会) (1992).
今堀和友、山川民夫 監修:「生化学辞典(第4版)」 ((株)東京化学同人) (2007).
厚生労働省:抗体医薬品の品質評価のためのガイダンス (2012).
Yagi, Y. and Suzuki, S.:Chromatography, 34(2), 83 (2013).
Yamaguchi, Y.:Journal of Tohoku Medical and Pharmaceutical University, 66, 11 (2019).