融合タンパク質の分析に

Genovis社フレキシブルリンカー切断酵素「GlySERIAS」

Genovis社は、モノクローナル抗体、ADCs(antibody drug conjugates)、Fc融合タンパク質、バイオシミラー等のバイオ医薬品の研究開発に使用できるユニークな酵素(プロテアーゼ、グリコシラーゼ、シアリダーゼなど)や、試薬キットをラインアップしています。

GlySERIASはGSリンカーやGリンカーといったグリシンに富んだ多機能融合タンパク質のフレキシブルリンカーを切断するユニークな酵素です。各ドメインを分離することで、翻訳後修飾のモニタリングなどの解析を容易にします。

酵素活性の最適条件は 37°C、pH 7.6 で、インキュベーションの長さは目的の最終生成物によって異なります。本製品は凍結乾燥品であり、2 mgまでの融合タンパク質の消化が可能です。

GlySERIAS Immobilized Microspin はGlySERIASをアガロースビーズに共有結合させたスピンカラム製品です。スピンカラム1本で0.2 mgの融合タンパク質の消化が可能です。

特長

  • 融合タンパク質のGSリンカー(G4S-, GxSx-)やポリグリシンリンカーを切断
  • 1hr~の短い反応時間での処理が可能
  • 還元剤および補酵素は不要
  • 高い再現性

GlySERIASの概要

GlySERIAS は、融合タンパク質を消化するユニークな酵素です。
グリシン、またはグリシンとセリン残基の反復配列からなるフレキシブルリンカーを消化します。
この酵素は、ネイティブな反応条件下で活性があり、複雑な融合タンパク質の中レベルのキャラクタリゼーションを可能にします。リンカー領域は複数部位で同時に消化され、各コンポーネントが分離されます。 酵素活性の最適条件は 37°C、pH 7.6 で、インキュベーションの長さは目的の最終生成物によって異なります。
GlySERIAS はファージ K からクローニングされ、大腸菌で発現しています。本製品は His タグが含まれており、分子量は 18 kDa です。

GlySERIAS LyophilizedとGlySERIAS Immobilized Microspinの使い分け

GlySERIAS Lyophilized では融合タンパク質は不均一に消化され、異なる長さのリンカーが残った融合タンパク質が見られます。その結果、実際のリンカーの網羅率が増加し、リンカー自体の特性評価が改善されます。リンカーが修飾されている融合タンパク質の場合にはリンカー自体の評価が必要であり、GlySERIAS Lyophilizedが適しています。

GlySERIAS Immobilizedでは、酵素をアガロースビーズに固定化させることにより反応効率が向上しています。その結果、短時間での処理が可能であり、反応後に融合タンパク質に残存するリンカーは比較的均一で非常に短くなります。また、GlySERIAS Lyophilizedでは完全に消化できないような、より複雑な融合タンパク質であっても消化できる可能性があります。 融合タンパク質の特性評価や、高活性が必要な複雑な融合タンパク質を用いる場合にはGlySERIASが適しています。

使用例1:GSリンカー融合タンパク質の消化

融合タンパク質デュラグルチドは、フレキシブルGS リンカーを介してヒト IgG4 の Fc 領域に2つのグルカゴン様ペプチド-1 (GLP-1) 分子が連結されています。

ペプチドと Fc 領域を別々に解析することでそれぞれの翻訳後修飾を同定するため、GlySERIAS を使用してデュラグルチドを消化しました。 逆相 LC-MS によるサンプル分析により、 GlySERIASを使用したリンカー消化時にペプチドがFc 領域から完全に除去されたことを示されました。

さらに、GLP-1 ペプチドの酸化修飾が同定されました。
GlySERIAS は複数の部位で同時に消化しましたが、3 回の消化で得られた異なる Fc/2 バリアントの相対量において再現性のある結果が示されました。

Digestion of dulaglutide using GlySERIAS. The flexible GS linker of dulaglutide was digested with GlySERIAS for 1 hour at 37°C under native conditions, and the Fc glycans were concurrently hydrolyzed using GlycINATOR to reduce sample complexity. To stop the GlySERIAS reaction, 1 mM ZnCl 2 was added. The interchain disulfide bonds were reduced with 20 mM DTT for 30 minutes at 37°C. The digest was performed in triplicate. a) Illustration of the sample preparation workflow. The samples were analyzed by reversed-phase LC-MS. b) Deconvoluted mass spectrum of the Fc/2 subunit. c) Deconvoluted mass spectrum of the GLP-1 peptide. d) Relative amount of the identified Fc/2 variants, displaying the mean value between the triplicate digests and error bars representing the standard deviation. The digestion products were separated by reversed-phase chromatography (BioResolve™ RP mAb Polyphenyl, 450 Å, 2.7 μm 2.1 × 100 mm, Waters™) and analyzed with ESI-QTOF MS (Bruker Impact II). e) Schematic image of the flexible linker, connecting the GLP-1 peptide to the Fc/2 subunit, and the identified digestion sites.

使用例2:二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)の消化

二重特性T細胞誘導抗体(BiTE)は、細胞障害性T細胞とがん抗原を標的にする2つの単鎖可変断片(scFv)がリンカーによりつながった融合タンパク質です。BiTEは4つのドメインから構成され、分子内に3つのGSリンカーを有しています。

CD19受容体とT細胞のマーカーであるCD3を標的とするBiTE抗体であるブリナツモマブ(blinatumomab) とGlySERIAS Immobilizedを室温にて終夜反応させました。

反応後のサンプルをLC-MSにて分析した結果、4種類の各ドメインが検出され、GlySERIASにより3つのリンカーがすべて切断されていることが確認できました。複数のリンカーを有する融合タンパク質に対してもGlySERIASが有用であることが分かります。

製品一覧

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酵素製品(凍結乾燥)

スピンカラム製品(アガロースビーズ固定)

関連製品一覧

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IgGプロテアーゼ(ヒンジ下部を消化)

ヒトIgGプロテアーゼ(ヒンジ上部を消化)

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