ELISA構築試薬

ELISAはサンプル中のターゲットタンパク質を定量する代表的な手法ですが、ターゲットタンパク質を検出できるELISAキットが常に市販されていると限りません。市販キットがない場合は、ELISAを構築する必要があります。
当社では、ELISA構築用のブロッキング試薬、抗体標識キット、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)溶液、ペルオキダーゼ発光基質などを販売しています。

  • 「ELISA A to Z」技術資料カタログダウンロード

学術コンテンツ

ELISAキットの材料とは?

目的のタンパク質を測定できるELISAキットが市販されていない場合、自作することも可能です。ここでは最もよく使用されるサンドイッチELISAを自作する場合に必要となる材料を紹介します。一から材料を集めて構築するのも良いですし、R&D Systems社のDuoSet ELISA KitsのようなELISA構築・作成用キットを活用するのも有効な手段です。

【ELISAキットの材料】

① 捕捉用抗体
② 検出用抗体
③ 酵素標識抗体 (なければ酵素標識キット)
④ スタンダード (標準品)
⑤ ブロッキング剤
⑥ 洗浄液
⑦ 検出試薬
⑧ 反応停止液
⑨ ELISAプレート

ELISAキットの各部材の概要と選択のポイント

① 捕捉用抗体 (キャプチャー抗体)

捕捉用抗体は、ELISAプレートに固相化され、測定対象の抗原を捉える抗体です。抗体のFc領域がELISAプレートに吸着することで固相化されます。測定対象の抗原を特異的に捕捉するため、モノクローナル抗体が良いとされています。

 

② 検出用抗体

検出用抗体は、捕捉用抗体によってとらえられた抗原を検出するための抗体です。抗原との結合力が高いとされるポリクローナル抗体が好んで用いられます。検出用抗体は捕捉用抗体と抗原認識部位(エピトープ)が違うことが重要です。

検出用抗体へ酵素標識抗体を結合させる場合、酵素標識抗体は捕捉用抗体には結合しないことが必要です。原則として捕捉用抗体と検出用抗体は別々の動物種由来の抗体が用いられます。

なお検出用抗体にそのまま酵素を標識する場合もあります。しかし酵素は分子量が大きく、抗体の結合能に影響を与える恐れがあります。

 

③ 酵素標識抗体

検出用抗体に特異的に結合する酵素標識抗体を使用することで検出用抗体の結合能を落とさずに、発色に必要な酵素を結合させることができます。また抗体以外にも検出用抗体にあらかじめビオチンを結合させておき、酵素標識アビジン(もしくはストレプトアビジン)と反応させるビオチン-アビジン系を用いて酵素を結合させる方法もあります。当社やシバヤギのELISAキットの多くはこのビオチン-アビジン系を使用しています。

なお検出用抗体にビオチンを結合させたい場合は、同仁化学研究所の抗体標識キットのような市販のキットを使用すれば、簡便に抗体のアミノ基(-NH2)やスルフヒドリル基(-SH)にビオチンを結合させることができます。

ELISAでは、標識する酵素として主にペルオキシダーゼ(特に西洋わさびのHorseradish peroxidase /HRP)やアルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase/AP)が良く使用されます。HRPは酵素の安定性が高く、基質の選択肢も多いことからAPよりも選択される機会が多いです。しかし、HRPは抗凝固剤に含まれるフッ素イオンや保存料のアジ化ナトリウムに含まれるアジ化物イオンによって阻害されるため、これらと併用することは避けなければなりません。

 

④ スタンダード (標準品)

ELISAにおいて目的のタンパク質を定量する場合、濃度既知のスタンダード(標準タンパク質溶液)が必要となります。いくつかの濃度に調製したスタンダードを試料と同様に測定し、スタンダードが示す吸光度と試料が示す吸光度を比較して、試料中の目的タンパク質を定量します。

 

⑤ ブロッキング剤

ブロッキング剤には、プレートや非特異的なタンパク質に検出用抗体が結合することを防ぐ役割があります。ブロッキング剤にはウシ血清アルブミン(BSA)やカゼインをベースにしたものや、ポリマーを原料にしたものなど様々です。ビオチン-アビジン系を使用しているELISAでは、ビオチンが含まれている可能性があるスキムミルクは避けたほうが無難です。

 

⑥ 洗浄液

洗浄液は試料や未反応の抗体の除去などを目的に使用されます。洗浄液はPBSやPBS-Tが使用されます。非特異的な吸着を取り除くには界面活性剤が含まれているPBS-Tが有効です。洗浄液がウェルに残っていると測定時のバラつきの元になるため、各工程で十分除去することが必要です。

 

⑦ 検出試薬

ELISAでは、抗体に結合させた酵素に対する基質を加え、生成される色素の吸光度を測定することで間接的に抗原の量を知ることができます。HRPを酵素として選択した場合はテトラメチルベンジジン (Tetramethylbenzidine/TMB)やo-フェニレンジアミン (o-Phenylenediamine/OPD)を基質として使用します。APの場合はp-ニトロフェニルリン酸 (p-Nitrophenylphosphate/pNPP)を使用します。

また吸光ではなく化学発光で検出することでより高感度な検出が可能です。当社では発光が持続し、定量性に優れているペルオキシダーゼの化学発光基質ELISA-Star™ ペルオキシダーゼ化学発光基質を取り扱っております。

 

⑧ 反応停止液

HRPは過酸化水素を分解し、生じた活性酸素が基質を酸化することで呈色します。この反応を止めるために反応停止液として1Mの硫酸を添加します。

 

⑨ ELISAプレート

ELISA用のプレートには、96ウェルのポリスチレン製プレートが多く用いられています。ポリスチレンはタンパク質を吸着しやすく、抗体溶液を加えることでプレートに自動的に固相化することができます。当然ながらELISAに使用されるプレートでは、ウェル間やプレート間ができるだけ均一であることが求められ、各社からELISA専用のプレートが販売されています。

参考文献

・森山達哉 編, バイオ実験で失敗しない! 検出と定量のコツ, 羊土社, 2005
・若林克己 著, ELISA-A to Z 増補改訂第5版, 富士フイルムワコーシバヤギ, 2017
・同仁化学研究所 はじめての抗体標識プロトコル