ペプチド研究所 IgG結合ペプチド
抗体は、高い特異性および抗原結合力を兼ね備えている分子であるため、その多様な機能を利用した実験手法や医薬品の開発が注目されています。特に、抗体の抗原認識能に影響を及ぼさない Fc 領域 に特異的に結合する抗体結合ペプチド(IgBP) は、ADC (Antibody drug conjugate:抗体薬物複合体) をはじめとする抗体医薬品や免疫測定法を容易にする技術として期待できます。
抗体修飾用ペプチド tCAP(N3)
tCAP(N3) は抗体に Ac-Lys(N3)-Gly-Gly を修飾する試薬です。
IgG の Fc 領域 特異的に、1~2分子 (重鎖に1分子ずつ) を修飾することができます。修飾されたアジド基を介したクリック反応により ADC (抗体薬物複合体) 分子が創製可能です。中性バッファー (pH 7~9) に溶かした抗体に、tCAP(N3) を添加するだけで簡単に修飾することができます。
【tCAP(N3) による IgG 修飾反応模式図】
-
上) Trastuzumab (原料) の TOF-MS 測定結果 下) pH9 緩衝液中、Trastuzumab に 4.3 当量 の tCAP(N3) を添加。0.5時間後の TOF-MS 測定結果
(2 分子修飾された抗体が主成分)
製品コード | メーカーコード | 品名 | 容量 | 希望納入価格(円) |
---|---|---|---|---|
330-45271 | 3429-s | tCAP(N3) | 0.1 mg | 30,000 |
注) 本製品は、鹿児島大学との特許ライセンス契約のもとに販売しております。
注) 抗体の放射性標識目的での本製品の利用は、契約により制限されます。詳細はお問い合わせください。
抗体精製用ペプチド
鹿児島大学の伊東教授らによって開発された IgG の Fc 領域 に結合することが報告されているペプチドで、分子内アミノ基を介して固定化することで IgG 精製用のアフィニティーカラムが作製可能です1,2)。
両ペプチドとも化学的に安定な S-C-S 構造を有しており、作製したアフィニティーカラムは塩基性条件、あるいは界面活性剤、有機溶剤、変性剤で繰り返し洗浄できます3)。
ヒト IgG 親和性ペプチド [IgGBP-17A]
IgGBP-17A はヒト IgG (IgG1、2、4) の Fc 領域 に特異的に結合するペプチドです [Kd : 95 nM]1,2)。ウサギなど他の動物種 IgG との交差反応が少ないため、多種動物血清を含む細胞培養液からヒト IgG のみを精製することが可能です。
【NHS カラム 1 mL にペプチドを担持したアフィニティーカラムの結合容量】
- 13.2 mg ヒト IgG / 1 mL ゲル (ペプチド 1 mg を担持した場合)
- 37.1 mg ヒト IgG / 1 mL ゲル (ペプチド 3 mg を担持した場合)
IgG 親和性ペプチド [IgGBP-Z34CA]
IgGBP-Z34CA は ヒト IgG のほか、マウスやラット、ウサギ IgG にも結合するペプチドです [Kd : 24 nM (ヒト IgG1)]4,5)。多種にわたる IgG を精製することが可能です。
【精製可能な動物種,サブタイプ】
マウス IgG (IgG1、2b、3)、ラット IgG (IgG1、2c)、ウサギ IgG
【NHS カラム 1 mL にペプチドを担持したアフィニティーカラムの結合容量】
3.2 mg ヒト IgG / 1 mL ゲル (ペプチド 1 mg を担持した場合)
製品コード | メーカーコード | 品名 | 容量 | 希望納入価格(円) |
---|---|---|---|---|
336-34261 | 3426-v | IgGBP-17A | 1 mg | 20,000 |
333-34271 | 3427-v | IgGBP-Z34CA | 1 mg | 30,000 |
注)本製品は、鹿児島大学との特許ライセンス契約のもとに販売しております。
注)抗体の放射性標識目的での本製品の利用は、契約により制限されます。詳細はお問い合わせください。
アフィニティーカラムとしての使用方法 実施例
【カラムへの担持方法】
■ 使用するカラム:cytiva 社製 HiTrap™NHS-activated HP (1 mL) など
■ 抗体精製用ペプチド:IgGBP-17A または IgGBP-Z34CA 1 mg
カップリング溶液 1 mL に溶かして使用 (以後、ペプチド溶液と表記)
■ 用意する溶液:
カラム洗浄溶液 | 1 mM HCl |
カップリング溶液 | DMSO : 3 M グアニジン塩酸塩 : 0.3 M NaHCO3=1 : 1 : 1 |
ブロッキング溶液 | 0.5 M モノエタノールアミン - 0.5 M NaCl (pH7.5) |
洗浄溶液 | 0.1 M 酢酸ナトリウム - 0.5 M NaCl (pH4.0) |
平衡化溶液 | PBS |
■ 手順:
HiTrap™NHS-activated HP (1 mL) に以下の順に、送液を行います。 | ||
↓ | カラム洗浄溶液 5 mL | [カラム洗浄] |
↓ | ペプチド溶液 1 mL | [ペプチド担持] |
↓ | インキュベート 室温 3h | |
↓ | カップリング溶液 3 mL (ペプチドを含まない)で洗浄 | |
↓ | ブロッキング溶液 6 mL | [未反応の活性基をブロッキング] |
↓ | 洗浄溶液 6 mL | |
↓ | ブロッキング溶液 6 mL | |
↓ | 洗浄溶液 6 mL | |
↓ | 平衡化溶液 3 mL | [カラム洗浄] |
カラム作製完了 |
【抗体精製】
■ 使用するカラム:IgGBP-17A を 1 mg 担持した HiTrap™NHS-activated HP (1 mL) (IgGBP-17A カラム)
■ サンプル液:ヒト血清を PBS 溶液 (pH 7.0)で 5 倍希釈した溶液 5 mL
■ 用意する溶液:
平衡化溶液 | PBS (pH 7.0) |
溶出溶液 | 0.2 M グリシン塩酸バッファー (pH 3.0) |
■ 手順:
送液システムにて、流速 1 mL/min で以下の順に送液を行います。(280 nm の吸光度で IgG を検出)
IgGBP-17A カラム | |
↓ | 平衡化溶液 10 mL |
↓ | サンプル 5 mL |
↓ | 平衡化溶液 15 mL |
↓ | 溶出溶液 10 mL |
↓ | 平衡化溶液 20 mL |
精製完了 |
参考文献
- Kishimoto, S., Nakashimada, Y., Yokota, R., Hatanaka, T., Adachi, M. and Ito, Y. : Bioconjug. Chem., 30, 698 (2019). [DOI:10.1021/acs.bioconjchem.8b00865]
- 特許第5994068号
- 特願2020-186833
- Braisted, A.C., Wells, J.A. : Proc Natl Acad Sci U S A., 93(12), 5688 (1996). [DOI: 10.1073/pnas.93.12.5688]
- Starovasnik, M. A., Braisted A.C., Wells J.A. : Proc Natl Acad Sci U S A., 94(19), 10080 (1997). [DOI: 10.1073/pnas.94.19.10080]
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