ウエスタンブロッティングで失敗する原因は何?よくある問題と解決策をご紹介
ウエスタンブロッティングの実験失敗の原因は?
「ウエスタンブロッティングの失敗の原因がわからない」
「解決策が知りたい!」
という方に、ウエスタンブロッティングでよく起こる失敗例を挙げ、その原因や解決策について解説します。
ウエスタンブロッティングは、ライフサイエンス分野の基礎的な実験手法ですが、、失敗の原因として、タンパク質量や抗体、ゲル、メンブレン、検出反応など、多くのことが考えられ、初心者のうちは何が原因かがわからないことも多いかと思います。
本記事では、ウエスタンブロッティングの転写や抗体反応、検出等の過程でよくある問題とその解決策をご紹介します。 以下の失敗例の中で、ご自身に当てはまるものがありましたら、ぜひ参考にしてみてください。
ウエスタンブロッティングのよくある失敗例
ウエスタンブロッティングの失敗例としては、下記のことが挙げられます。
それぞれの原因とその解決策を以下にご紹介します。
バックグラウンドが高すぎる
原因 | 解決策 |
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洗浄が不十分 |
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非特異的な結合をブロッキングできていない |
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メンブレンの取り扱いが適切でない |
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装置や器具等の汚れによるコンタミネーション |
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化学発光シグナルが強い |
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スマイリングや歪みが見られる
原因 | 解決策 |
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高電圧により発生する熱 |
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塩濃度が異なる |
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アプライ量が異なる |
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空のウェルがある |
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スメアが見られる
原因 | 解決策 |
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試料溶液中の変性剤や界面活性剤の影響 |
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試料が古い、保存方法が適切でないことにより、タンパク質が分解 |
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転写時間が短すぎる |
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タンパク質量が過剰 |
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転写にムラがある
原因 | 解決策 |
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ゲルとメンブレンの間に気泡が入っている |
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転写装置の問題 |
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転写方法の問題 |
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その他の失敗例の原因、解決法
その他の失敗の原因、解決法については、下記のことが挙げられます。
それぞれの原因とその解決策を以下にご紹介します。
バンドがぼやける、不鮮明
原因 | 解決策 |
---|---|
タンパク質量が過剰 |
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抗体濃度が高い |
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検出シグナルが高い |
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バンドが白抜けする
原因 | 解決策 |
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タンパク質量が多い |
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抗体の濃度が高い |
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シグナルが弱い、検出されない
原因 | 解決策 |
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抗体の失活 |
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抗体の結合力が不十分 |
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アジ化ナトリウムにより酵素反応が阻害されている |
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露光時間が短い |
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ブロッキング時間が不適切 |
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転写効率が悪い、転写されていない |
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検出試薬の化学発光が弱い |
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バックグラウンドに斑点やシミが見られる
原因 | 解決策 |
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ピンセットが汚れている |
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洗浄が不十分 |
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抗体反応が不適切 |
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検出装置が汚れている |
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ポンソー染色で染まらない
原因 | 解決策 |
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タンパク質が転写されていない |
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タンパク質量が少ない |
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染色試薬の劣化 |
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実験におすすめの製品・サービス
ウエスタンブロッティング試薬
ウエスタンブロッティングに欠かせない製品をラインアップしています。
- 抗原抗体反応促進試薬 Immuno-enhancer
- 転写バッファー
- ストリッピング溶液
- ブロッティング用メンブレン
- ローディングコントロール抗体
- ペルオキシダーゼ発光基質
ウエスタンブロット解析サービス
お預りしたサンプルを用いて電気泳動、ウエスタンブロット、検出までを代行するサービスをご提供しています。
特長
- ゲルサイズはミニゲル(9 x 8 cm)
- 二次元電気泳動、SDS-PAGEのいずれにも対応
- SDS-PAGEの場合、1枚のゲルに最大12 個のサンプルをロード可能
- 検出は発色法または発光法で行う
- 総タンパク質を検出する泳動との並行作業も可能(別料金)
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イムノリアクター
ブロッキング、洗浄、抗体反応を自動で行う自動化装置です。溶液交換、メンブレンの洗浄にかかる手間を削減できます。普段使用している試薬をそのまま使用でき、装置操作はプログラムの選択と振盪スピードの設定だけと非常に簡単です。手作業と同等の結果を得られ、再現性も高いです。
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参考文献
- Rasheed Sule. et al. : Future Science., 75, 99 (2023)
- Habeebunnisa Begum. et al. : Future Science., 73, 58 (2022)
- 岡田雅人, 三木裕明, 宮崎香:「無敵のバイオテクにカルシリーズ 改訂第4版 タンパク質実験ノート 下」p.44 (羊土社)
- 西方敬人:「バイオ実験イラストレイテッド⑤」p.165 (秀潤社)