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【前編】「ブロー成形」×「シングルユース」 ハードボトルとシングルユースバッグの融合 ~ステリテナーが切り開く未知の可能性~

本記事は、積水成型工業株式会社 永座 明様にご執筆いただいたものです。

みなさん、こんにちは!今回は積水成型工業の3Dシングルユースバッグ「ステリテナー」にスポットを当て、ブロー成形という独自のアプローチで製造された立体型のフレシキブルバッグ。その未知なる可能性についてお伝えします。

ステリテナーの誕生~半導体分野で培ったクリーン技術を強みに製品開発

積水成型工業は、清浄度の高いブロー成形をコア技術としている容器メーカーです。特に、半導体、ディスプレイ、電子材料等、「低溶出」「清浄度」が厳しく求められる分野向けのクリーン容器を提供しています。そこで培ったクリーン管理のノウハウをベースに、得意とするブロー成形法という独自のアプローチで抗体医薬や再生医療といったバイオ分野向けに3D(立体形状)の液体保管、輸送に特化したシングルユースバッグ 「ステリテナー」を開発しました。

「ブロー成形」×「シングルユース」:未知の可能性への挑戦

ステリテナーの最大の特徴は、従来のシングルユースバッグとは異なる製造手法、「ブロー成形法」の採用にあります。抜群の「低溶出性」「清浄度」といったブロー成形の特徴と、薄肉化(樹脂を薄く成形する)技術の融合で、折り畳み可能な3Dバッグを一体成型で作ることができました。たとえば、再生医療の多くの現場では安全キャビネット内でも操作できるコンパクトな立体型の形状が求められます。従来はガラスやボトルといったものが多く使用されていますが、在庫スペースや洗浄の手間等多くの課題がありました。これらを解決する省スペース化の革新的な手法が、ブロー成形による薄肉化技術です。ステリテナーはシングルユースバッグとハードボトルの融合を実現し、従来のシングルユースバッグではできなかった未知の可能性を切り開いています。

ブロー成形法の特徴を生かした独自製品へ
目指したのはハードボトルとシングルユースバッグの融合

各種バイオプロセスで溶液を保管するバッグをストレージバッグと呼びますが、このカテゴリーでは、50㍑以上の大容量シングルユースバッグはすでに、フィルム形状のバッグを外装容器に収納する形態のものが存在し、ブロー成形での3D化のメリットは少ないと考えます。したがって、ステリテナーは5、10、20㍑という、2Dバッグもしくはハードボトル以外に選択肢が存在しない容量エリアに特化しています。この容量帯は手作業でのハンドリングが必須となり、従来のバッグでは設置スペースが必要であったり、取り扱いの負荷が大きい重さになります。ステリテナーは、ボトルやガラス瓶といったハードボトルの使い勝手の良さを残しつつ、シングルユース化が図れることで、省スペース、ハンドリングの簡便さ等、3Dバッグ独自のメリットをも提供しています。さらに、使用材料のポリエチレン素材は柔軟性と高剛性を合わせ持ち、3Dバッグとしての抜群の輸送強度を持っているため、従来の2Dバッグに比べ、拠点間の輸送容器としての強みを持っています。

ブロー成形法とは?

ブロー成形という成形法は 約200度に加熱したプラスチックに金型内部で空気を吹き込んで成形を行う製造方法です。加えて、当社のブロー成形によるステリテナーにはいくつかの特徴があります。

1. 「低溶出」を実現できるブロー成形法

ステリテナーは原料樹脂の溶融から成形までの製造プロセスをすべて自社工場で完結します。プラスチック製のシングルユースバッグで懸念される溶出に関しても、内容液への溶出影響を排除するため、可塑剤や滑剤、酸化防止剤など一切の添加剤を含まない専用の無添加グレードのポリエチレンのみを使用し、製造工程でも一切添加剤を使用しません。どの用途でも安心してご使用いただけます。

2.「清浄度」を実現する完全な閉鎖系環境での成形プロセス

ブロー成形の特徴として、製品は200℃で樹脂を溶融した条件下で作られ、製品が出来上がるまでの成形プロセスは全て金型内という閉鎖系環境で完結します。さらに、容器内部には成形時の吹込みエアーしか入りませんので、高精度フィルターによってろ過された、クリーンエアーを使用することで、容器内部の高い清浄度を実現しています。

3. 完全無人化された全自動成形プロセスと全数リークテストにより品質の安定性を約束

工場内では、製造、検査、包装までを清浄度管理されたクリーンエリアで行なっています。成形プロセスは完全自動化された無人化ラインで行われ、容器製造後の後工程であるアッセンブリー組付け、包装、目視検査といった人が行う作業エリアはより清浄度の高いクリーンブース内で行なうことで、外部からの異物混入リスクを排除しています。それに加え、自動ライン上で「全数リークテスト」を実施することで、品質の安定化を実現し、お客様に安心した製品をお届けしています。

4.徹底的に清浄度管理された最新鋭のクリーン工場で製造

当社は、国内メーカーとして、高い品質の製品を安定的に供給できる体制を整備すべく、2021年3月に、群馬県板倉地区に約1万坪のクリーン新工場を稼働させました。新工場では、高レベルで清浄度管理された工場内環境のもと、ステリテナー以外に、半導体、電子材料分野向けの高純度薬品用クリーン容器を製造しています。

ハードボトルとシングルユースの融合による新たなる可能性

ステリテナーは、ブロー成形技術を駆使して、ハードボトルとシングルユースバッグを見事に融合させました。これにより、省スペース性、ハンドリングの簡便さ、そして3Dバッグ独自のメリットが一体化。再生医療分野において新たなる可能性を切り開いています。現在、ステリテナーのバリエーションとしては、従来の標準品に加え、お客様に、チューブ、接続コネクタ、フィルター等の部材を自由に選んで頂けるフルカスタマイズへの対応も行っています。

次回は、ステリテナーのもうひとつの特徴である、作業負荷軽減といった「現場の使いやすさ」を実現するためのさまざまなオプション品を紹介しつつ、具体的な用途事例をご紹介します。お楽しみに!

ごあんない

第23回日本再生医療学会総会
(2024年3月21日(木)~23日(土) 於:朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター)
において開催予定の再生医療産学連携テクノオークションにてステリテナーの紹介をさせていただきます。ぜひお立ち寄りください。

3 月 22日(金) 15:40~17:40 (第11会場 4F 朱鷺 B)
第 6 回再生医療産学連携テクノオークション
(ホテル日航新潟 4F 第 11 会場 (朱鷺 B)
(https://www.hotelnikkoniigata.jp/conference/big.php?tab=toki_b)

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