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試薬メーカーが教える!目的に応じた金属分析標準液の選び方

金属不純物の分析は、電子材料の他、医薬品・食品・環境(水道、土壌等)等の幅広い分野で行われており、製品の品質を担保する、品質トラブルを回避するためには非常に重要です。

知っておきたい金属分析の基礎知識

微量元素(金属)分析では主に機器分析法が用いられますが、一口に機器分析法といっても様々な方法があります。微量元素(金属)分析に用いられている代表的な方法には以下の3種類があります。

原子吸光分析法(AAS)

試料溶液を高温中で加熱し測定元素を原子化し、これに元素特有の波長の光を透過させると、基底状態の原子が光を吸収して励起状態になります。この際の光の吸収(吸光度)から定量を行います。

ICP発光分光分析法(ICP-OES)

試料溶液を霧状にして高周波誘導によって励起されたアルゴンプラズマに導入すると測定元素(原子)が励起されます。励起された測定元素が基底状態に戻る際に元素特有の波長が放出されます。この波長の光の強度から定量を行います。

ICP質量分析法(ICP-MS)

試料溶液を霧状にして高周波誘導によって励起されたアルゴンプラズマに導入して、測定元素をイオン化します。発生したイオンを質量分析部(MS)で検出します。

それぞれの分析法には、下記のような特長があります。

AAS ICP-OES ICP-MS
感度 ppb~ppm(フレーム)
ppt~ppb(ファーネス)
ppb~% ppt~ppm
ダイナミックレンジ 2桁 5桁 5桁
多元素一斉分析
希土類の分析(Zr, Ta, P, B)
装置の価格 安価 高価

最近では、多元素一斉分析が主流となり、金属分析装置の販売実績からみても、特にICP-MSが新しく導入されていることがわかります。

金属分析装置の販売実績推移(出所:科学機器年鑑 2019年版)

もう迷わない、目的に応じた金属分析標準液の選び方

金属分析に使う元素標準液(金属標準液)には様々な規格があり、どれを選ぶべきか迷うことはないでしょうか?金属分析標準液の選び方のポイントを、3つご紹介します。

ポイント1. 不純物元素を保証しているか ~不純物元素があるとどうなる?~

A元素標準液とB元素標準液を混ぜてA・B混合標準液にする場合を例に考えてみます。

A元素標準液の中に測定したい元素 (A)のほかに不純物元素 (B)(C)が入っているとします。A・B混合標準液になったとき、A元素標準液の不純物元素(B)が、「誤差」として出てしまいます。また、A標準液単品のときは気にならなかった「干渉」が起こる可能性があります。このように、標準液中の不純物元素が測定結果を左右することが起こりうる多元素一斉分析では、不純物元素の濃度が保証された「ICP分析用元素標準液」の使用をおすすめします。

例1.

ポイント2.標準液原料も選定の重要なファクター

標準液を選ぶ際には、どのような原料を使っているか確認することも重要です。原子吸光用は、測定したい金属(元素)以外の金属(元素)が原料に含まれている場合があります。

例として、けい素標準液で比較すると、ICP分析用はSiO2を原料として使用しているのに対し、原子吸光用はNa2SiO3を原料として使用しており、ナトリウムが含まれています。

例2.けい素標準液 (Si 1000)
原子吸光分析用 ICP分析用
原料 Na2SiO3 SiO2

当社の標準液の原料情報はホームページ上に掲載しております。こちらからご確認ください。

ポイント3. 混合時の組み合わせに注意 ~標準液に相性がある!?~

金属標準液の種類によっては、混合により沈殿・揮発等が生じる可能性のある組み合わせがあります。

例3.

混合する標準液に使用されている酸等の種類も確認しましょう。沈殿・揮発等が生じる可能性のある元素の標準液は別に調製するようにご注意ください。また、標準液には酸性・塩基性と液性に違いがあります。混合して使用する際には、単品標準液の液性を確認し、液性の異なる標準液は別々に調製する、同一液性の標準液を使用する、等の工夫が必要です。

例4.

規格別 金属分析用標準液の選び方

当社の金属標準液は、分析法別に3規格をラインアップしています。分析法に合わせてご使用ください。

分析法×推奨標準液の組み合わせ

金属標準液の特長

原子吸光分析用 JCSS ICP分析用
用途 原子吸光 原子吸光 ICP-OES、ICP-MS
濃度測定法 各種滴定法
重量法
各種滴定法
イオンクロマトグラフ法
各種滴定法
イオンクロマトグラフ法
ICP-OES
不純物元素 ICP-MSを用いて
ppbオーダーを保証
添付文書 校正証明書 現品説明書
(不純物元素情報付き)
特長
  • 化学物質評価研究機構(CERI)による濃度信頼性試験
  • 計量トレーサビリティの確保
  • 不純物元素を保証
  • JCSS実用標準液またはNIST SRMを用いて濃度確認

まとめ

  • 微量元素(金属)分析の代表的な分析法には、原子吸光分析法(AAS)、ICP発光分光分析法(ICP-OES)、ICP質量分析法(ICP-MS)があります。
  • 分析法に応じた規格の金属分析用標準液が販売されており、選び方には3つのポイントがあります。
    1. 不純物元素の保証を確認する
    2. 原料を確認する
    3. 混合して使用するときは、標準液の相性・液性を確認する

当社では、「金属標準液(元素標準液)」を分析法別に3規格ラインアップしています。さらに、金属不純物を抑えた「高純度酸」類や全自動で前処理が行える「全自動酸分解前処理装置」も取り揃え、微量元素分析をトータルでサポートしています。

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