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【クロマトQ&A】:LC/MS用として販売されている溶媒とHPLC用溶媒の違いは何ですか

本記事は、Analytical Circle No.40(2006年3月号)に掲載されたものです。

LC/MS用として販売されている溶媒とHPLC用溶媒の違いは何ですか。

LC/MSの普及に伴い、LC/MS用の溶媒が販売されております。これらはHPLC用の規格に加えLC/MSで使用されることを考慮した規格が定められております。

例えばアセトニトリルやメタノール、ぎ酸や酢酸などはLC/MS分析適合性試験が実施されています(図1)。

メタノール
図1.HPLC用とLC/MS用の比較
測定条件
System :Finnigan LCQ Duo(イオントラップ型)
Ionization :ESI
Scan mode :Full MS
Mass range :m/z 50-2000
Polarity :Positive/Negative
グラジエント条件 :流速100 µL/min
時間(分) 0 4 8 15 15.1 25
0.1 v/v% CH3COOH / H2O 30 30 0 0 30 30
0.1 v/v% CH3COOH / CH3OH 70 70 100 100 70 70
図1.HPLC用とLC/MS用の比較

これはm/z50~2000でのノイズレベルを保証するものです。今スキャンモードで指定した質量範囲のスキャンを繰り返しマススペクトルの情報を得る場合を考えます。スキャンモードは試料中の未知化合物を網羅的に検出する場合などに有効な手法ですが、バックグラウンドが高ければ、微小ピークの確認や、未分離ピークの解析などに影響が出る可能性があります。またSIM(Selected ion monitoring)モードで選択したイオンだけを検出する場合、まれにバックグラウンドノイズが高くその原因が移動相中の不純物である可能性が考えられる場合もあります。このような場合LC/MS用溶媒を用いることで問題が解決する可能性も考えられます。

水はTOC(全有機炭素)の含有量の規格を定めています。これは水中に含まれる有機炭素そのものが少ないことを保証するものです。

またLC/MS用溶媒にはコンタミネーションを最小に抑えるよう包装が工夫されています。アセトニトリルやメタノール、水などの溶媒にはアルミキャップが採用されていますが、これはフタからの不純物の混入をできるだけ避けるためのものです。

このようにLC/MS用溶媒はLC/MSで使用されることが考慮されています。バックグラウンドが高く、その原因が移動相中の不純物である可能性がある場合、LC/MS用の溶媒を使用することで解決する場合もあると考えられます。一度お試し下さい。

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