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【テクニカルレポート】高極性物質分析用カラムWakopak®Wakosil-II 5SIL-AQ の有用性

本記事は、和光純薬時報 Vol.74 No.1(2006年1月号)において、和光純薬工業 試薬研究所 福本 昌巳が執筆したものです。

近年LC/MSの普及に伴い、LC/MSへの適合性を保証した溶媒や試薬、分析カラムが市販されてきた。その中で、LC/MSに使用される分析カラムは、汎用性の高い逆相系のODS充てん剤 (C18、オクタデシルシリカゲル)が主流をなしている。しかし、このODS充てん剤でも一部の化合物の分析には適さない場合 があり、それを補完する目的で、C18より短いC1、C4、C8またはC18より長い C22、C30の炭素鎖の充てん剤が使用され、さらに、ふっ素原子の撥水性、撥油性を利用したフルオロアルキル充てん剤 (Fluofix)などが使用されている。

逆相系充てん剤は、中極性から疎水性化合物の分析には最適であるが、薬物と薬物代謝物に代表される高極性物質や塩基性物質に対しては、溶出力の小さい水系の移動相やイオンペアー試薬を使用しても分離が達成されない場合があった。これらの問題を解決し、LC/MSの高感度分析に好ましい移動相条件が構築できる未修飾のシリカゲル系カラムの有効性が提案されてきた。

筆者らのグループでも未修飾シリカゲルの有効性を確認し、高極性物質分析用の専用カラムとしてWakopak® Wakosil-II 5SIL-AQを開発した。本カラムは、高純度シリカゲルを充てんしたシリカゲルカラムであるが、通常使用される順相モードではなく親水性相互作用モードで有効性(高極性物質を保持し、塩基性化合物のテーリングを抑制する)を発揮するように設計されたカラムである。高極性物質の分析を有機溶媒濃度80%以上の酸性移動相条件下で達成することができ、塩基性化合物の分析においてもイオンペアー試薬を使用することなく、テーリングを抑制した分析が可能である。その結果として、LC/MS分析に移動相条件をそのまま適応できる利点がある。以下に分析例を紹介する。

図1に高極性物質の分析例としてヌクレオシド類の分析を示した。ヌクレオシドは構造に糖の部分を持つ高極性物質であるため、ODS充てん剤では有機溶媒を含まない緩衝液系の移動相を使用することが多い。しかし、Wakopak® Wakosil-II 5SIL-AQ カラムは、アセトニトリル濃度を高くして分析できるためLC/MSにも高感度で対応可能である。

図1.ヌクレオシドの分析
図1.ヌクレオシドの分析

図2に塩基性物質の分析例として代表的な三環性抗うつ薬であるイミプラミンの分析を示した。三級アミンの構造を持つイミプラミンは、ODS充てん剤ではテーリングしやすい物質であるが、Wakopak® Wakosil-II 5SIL-AQ カラムではイオンペアー試薬を使用することなく、対称性のよいシャープなピークとして分析可能であった。

図2.三環性抗うつ薬(イミプラミン)の分析
図2.三環性抗うつ薬(イミプラミン)の分析

参考例として、図3、図4、図5に生薬成分であるアルカロイド類の分析例を示した。ODS充てん剤の場合と溶出順が逆転する場合が多く、夾雑物の多い化合物の分析に有用であることが示唆された。

図3.生薬成分の分析
図3.生薬成分の分析
図4.生薬成分の分析
図4.生薬成分の分析
図5.生薬成分の分析
図5.生薬成分の分析

以上、Wakopak®Wakosil-II 5SIL-AQは、高極性物質や塩基性物質の分析に有効であり、有機溶媒濃度の高い移動相条件で使用できること、イオンペアー試薬を必要としないことなど、LC/MS分析に適した分析方法である。さまざまな分野で使用していただければ幸いである。

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