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【連載】Talking of LAL「第51話 トキシノメーターの応用」

本記事は、和光純薬時報 Vol.71 No.2(2003年4月号)において、和光純薬工業 土谷 正和が執筆したものです。

第51話 トキシノメーターの応用

トキシノメーターの特長として、広い範囲で定量できる、ゲル化法と同じ操作で測定できる、測定を始めたら放っておける(測定終了後いつ結果を取りだしてもよい)、一検体ずつ別々に測定できる、測定時間を延ばすとより低濃度まで測定ができる、などが挙げられます。今回は、トキシノメーターの特長を活かした使い方について考えてみましょう。

トキシノメーターの測定時間は通常 60 分程度と思われます。測定時間を延長すると、エンドトキシンをより低濃度まで測定できます。エンドトキシン試験の観点からは、検量線の最低濃度を低く取ることで最大希釈倍率(MVD)が大きくなり、反応への影響が大きい試料の測定に有用な方法となります。

例えば、リムルスES-Ⅱシングルテストワコーを用いて 60 分測定した場合の検量線の最小値が 0.005EU/mL、120 分測定した場合の検量線の最小値が 0.001EU/mL であったとすると、120 分測定を行うと最大希釈倍率が 5 倍大きくなるため、試料をさらに 5 倍希釈して試験することが可能になります。この方法を使われている方は多いのではないかと思います。

逆に測定時間を短くすることを考えてみましょう。ゲル化法では 60 分後に反応液がゲル化しているかどうかを調べます。0.03EU/mL のエンドトキシンを検出しようとする場合、ゲル化法なら、ラベル感度が 0.03EU/mL の LAL 試薬を用いて試験を行います。試験時間は 60 分で、60 分後に必ずゲル化の確認が必要です。

トキシノメーターなら同じ感度の LAL を使っていても 40 分程度で 0.03EU/mL のエンドトキシンを検出できますから、測定時間を短くすることができます。また、測定終了時に操作者が確認等を行う必要がありません。時間に制限がある場合、感度の高い LAL を用いて、できるだけ少ない希釈で測定することで、目的を達成することができる場合があります。

放射性医薬品の場合を考えてみましょう。最近医療の場で使われるようになってきたポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)用の医薬品の中に18F-2-フルオロ-2-デオキシグルコース(18F-FDG)があります。

日本薬局方では、血液内投与薬剤のエンドトキシン許容量を、体重 1kg、1 時間あたり 5EU としています。FDG 溶液の投与量を 1 回あたり最大 20mL、成人体重を 60kg と仮定すると、体重 1kg あたりの投与量は 0.33mL となり、0.33mL 中に 5EU、1mL 中に 15EU がエンドトキシン許容量となります。

我々の実験で FDG は 10 倍希釈すると影響なく測定が可能という結果を得ていますから、10 倍希釈 FDG 中のエンドトキシン許容値、1.5EU/mL をできるだけ早く検出することが目標となります。リムルス ES-Ⅱシングルテストワコーを用いてトキシノメーターで測定を行うと、1EU/mL のエンドトキシンを 10 分程度で検出することができます。すなわち、10 倍希釈 FDG が使用可能かどうかを 10 分以内に判定できるということになります。

18F-FDG の半減期は 118 分ですから、ゲル化法で 60 分の測定時間を費やすことを考えると、トキシノメーター法は短時間で結果が得られます。その他の核種の半減期は、11C で 20.3 分、13N で 9.8 分、15O で 2 分とさらに短く、これらの核種を用いた放射性医薬品にとって、トキシノメーター法は非常に有用な方法と思われます。

その他、エンドトキシン試験の結果を待って次の工程に入ろうとする場合にも、これを応用することができると思われます。すなわち、測定への影響を除けるできるだけ低い希釈倍率で、できるだけ高感度の試薬を使用して試験することにより、目的のエンドトキシン許容値をより早く検出し、次の工程へより早く進むことができます。

トキシノメーターは、試料の希釈倍率、使用する LAL の感度などによって、いろいろな使い方ができると思われます。読者の皆さんの中にも、トキシノメーターを工夫して使用されている方がおられると思います。もしよろしければ、皆さんのアイデアもお知らせ下さい。

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