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【クロマトQ&A】固相抽出カラムを使用するに当たりその選択方法を教えてください

本記事は、Analytical Circle No.29(2003年6月号)に掲載されたものです。

HPLC分析の前処理に固相抽出カラムを使用しているのですが、担体の種類がたくさんあり、何を用いればよいか迷ってしまいます。選択方法を教えてください。

図1 固相抽出の概念図

HPLC分析を行う前には一般に試料の前処理が行われます。精度や感度などの向上、カラムや分析機器の保護や劣化の防止、操作手順の簡素化、目的物質の安定化などが目的です。除タンパク、抽出、脱塩、濃縮、誘導体化などの方法があり、対象となる試料の形態や組成、目的物質の種類や濃度、検出法の感度や選択性などを考慮に入れ選択します。

固相抽出は液体クロマトグラフィーの原理を基礎とした前処理技術で、選択性のある充てん剤を詰めたカラムに試料溶液を通し目的成分のみを抽出する方法です。液-液抽出に比べ ①回収率、再現性が良好 ②操作が容易 ③迅速に多数の試料の処理が可能 ④自動化が可能 ⑤少量の試料の処理に向いており、かつ使用溶媒が少なくて済む ⑥エマルジョンの生成がないなどの長所があり、液-液抽出に代わり広く用いられています。

具体的には図1のように、(1) コンディショニング(2) 試料添加(3) 洗浄(4) 目的成分の溶出の手順で行います。

固相抽出の分離はHPLCと同じ原理で行われ、吸着、分配、イオン交換など種々の充てん剤が市販されています(表1)。図2に充てん剤を選択する際の基準を示しますのでご参照ください。

表1 固相抽出充てん剤の種類
分離モード 充てん剤 保持、溶出 使用溶媒例
保持 溶出
分配 逆相分配 C18 オクタデシル
C8 オクチル
C2 エチル
CH シクロヘキシル
Ph フェニル
CN シアノプロピル
充てん剤より極性の高い溶媒で保持させ極性を下げる事で溶出 メタノール, アセトニトリル
順相分配 CN シアノプロピル
NH2 アミノプロピル
2OH ジオール
充てん剤より極性の低い溶媒で保持させ極性を上げる事で溶出 ヘキサン, クロロホルム, ジクロロメタン アセトン, メタノール
吸着 シリカゲル
アルミナ
フロリジル
充てん剤より極性の低い溶媒で保持させ極性を上げる事で溶出 ヘキサン, クロロホルム, ジクロロメタン 酢酸エチル, メタノール
イオン交換 陽イオン交換 プロピルスルホン酸
ベンゼンスルホン酸
メチルカルボン酸
塩濃度、pHにより調節 緩衝液 緩衝液
陰イオン交換 ジエチルアミノプロピル
トリメチルアミノプロピル
一、二級アミン

図2 固相抽出充てん剤選択の手引き

目的成分を保持させるのが困難な場合や、目的成分が不要物質より圧倒的に多く含まれている場合は、目的成分を保持させず、不要物質をカートリッジに保持させる方がより再現性のあるデータが得られます。この場合不要物質をより選択的に保持する充てん剤を選択し、試料添加の段階で目的成分を溶出させます。

カートリッジにはサンプルの保持が可能なキャパシティーがあります。これを越えると保持せずその結果回収率が低下する可能性がありますので、標準品などでどの程度保持されるかあらかじめ調べておくことが望まれます。

最近ポリマー系の新しい充てん剤が販売されています。これはポリマー器材に極性基を導入することで水に対する表面張力を低くし、表面を水に濡れやすくした充てん剤です。C18など低極性基を有する担体に必要だったコンディショニングを行うことなく試料を処理できます。

また形状も従来のシリンジ型、両端密閉型に加え大量の試料に対応可能なディスク型や多検体処理に適した96ウェルプレート型などが市販されていますので、用途に合わせてご使用ください。

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