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【テクニカルレポート】Presep®-C DNPH ショートタイプの開発

本記事は、和光純薬時報 Vol.71 No.2(2003年4月号)において、和光純薬工業 試薬研究所 久保田 守が執筆したものです。

ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類は悪臭防止法(環境省)、大気汚染防止法(環境省)、シックハウス(室内空気汚染)に係るガイドライン(厚生労働省1))として大気および室内空気中の許容濃度、標準的な測定法が定められている。

このうち空気サンプリング、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)との誘導体化には、DNPH コーティングされたシリカゲルをカートリッジカラムに充填した捕集管が可搬性や操作性が優れていることから多く用いられている。

空気サンプリングを行うには、上記捕集管と必要に応じて前段にオゾン除去管(大気(外気)の場合)を接続後、吸引ポンプに取付け、所定の時間を一定流速で捕集管に空気を通して試料を捕捉する。公定法では、大気(外気)、居住住宅の場合、流速 0.1 L/min で 24 時間の計 144 L、新築住宅では、流速 1.0 L/min で 30 分の計 30 L を採取する。

しかし、吸引能力の低いポンプや背圧の高い捕集管を使用すると、所定の流速で吸引が出来ない、流速が安定しない、高湿度下での採取中に捕集管内で水分が凝集して測定中にポンプ停止などのトラブルが発生することがある。

Fig.1.アルデヒド捕集管+オゾン除去管背圧プロット
Fig.1.アルデヒド捕集管+オゾン除去管背圧プロット

当社の捕集管 Presep®-C DNPH、オゾン除去管 Presep®-C Ozone Scrubber を用いて空気サンプリングを行った時の背圧プロットを Fig.1 に示した。

点線が示す値は、実験に用いた空気サンプリング用ポンプ(柴田科学(株)製 MP-Σ30、MP-Σ300)の定流量差圧上限値である。流速 0.1 mL/min で吸引を行った場合、Presep®-C DNPH + Ozone Scrubber はポンプ定流量差圧上限値より低く、安定した試料採取が期待できる。

他社品との比較結果でも当社品は低い背圧値であることが判る。Presep®-C DNPH は流速 1.0 L/min にすると上記ポンプの運転上限を越えるが、同流速下でのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド標準品添加回収率は 94 ~ 98%であり、高い捕集効率を有している。

Fig.2.アルデヒド捕集管ショートタイプ背圧プロット
Fig.2.アルデヒド捕集管ショートタイプ背圧プロット

流速 1.0 L/min でサンプリングを行う際には、Presep®-C DNPH (Short) を使用する。本品は現在製品化に向け開発中の品目で、充填量が Presep®-C DNPH の約半分、基材シリカゲルの粒子サイズ、フィルター素材や貫通孔サイズなど大幅な実施が施され、高流量サンプリングに十分適用するよう設計されたものである。ショートタイプ試作品での背圧プロットを Fig.2 に示す。本品単独使用の場合、流速 1.0 L/min で約 2 MPa の低背圧値を実現した。

さらに Presep®-C DNPH/DNPH (Short) は低ブランク値、ロット内ブランク値のバラツキを最小限にするなどの特長を持つ。

以上、Presep®-C シリーズについて、環境/室内空気中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド測定関連公定法での空気サンプリングへの適応性について述べた。また、Wakosil-DNPH II 分析システムとの組合せでアルデヒド、ケトン類の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)での短時間多成分一斉分析への応用も可能である。実地調査やアルデヒド類研究での一助になれば幸いである。

参考文献

  1. 室内空気中化学物質の室内濃度指針値及び標準的測定方法について、厚生省(現厚生労働省)、生衛発第1093号通知

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