iPS細胞を活用した治療の可能性を広げる低分子阻害剤
本記事は、FUJIFILM Wako Chemicals U.S.A. 提供のWhitepaperの一部を抜粋したものです。
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はじめに
人工多能性幹細胞(iPS細胞、iPSC)は、扱いやすい遺伝子的特性と無限の増殖能力を有することから、患者一人一人に対する疾患モデリング、創薬、毒性評価、再生医療などでの活用が非常に期待されています。しかしながら、iPS細胞の臨床応用にはまだ課題があり、大規模で効率的な細胞培養方法の開発が求められています。
iPS細胞 ― 治療薬開発の新たな可能性
終末分化した成人の体細胞をリプログラムする能力1)により、iPS細胞は医療の未来に革命をもたらしました。胚性幹細胞(ES細胞、ESC)2)と同様に、iPS細胞はほとんど無限に増殖でき、あらゆる細胞型に分化することが可能です3)。さらに重要なこととして、iPS細胞は患者や健康な被験者個人から得ることができ、遺伝子操作も比較的行いやすいという特徴を持っています。これにより、動物モデルやヒトES細胞に関連する倫理的・免疫拒絶反応4)の懸念を回避し、信頼性の高い臨床的に適切なin vitroヒトモデルを提供することができます。
iPS細胞の登場によって、臨床および生物医学的な応用に多くの可能性がもたらされました(図1)。疾患モデリングや創薬5)だけでなく、虚血性心不全、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病、加齢黄斑変性症など、従来の医学では治療困難な変性疾患の治療にも自己由来の細胞を利用することができます4),5)。さらに、疾患モデリングや再生医療においてiPS細胞由来の多細胞オルガノイドや臓器の有用性も評価されています5)。
(中略)
展望 ― ボトルネックと次のステップ
Y-27632の特性と細胞生存に対する効果は、幹細胞研究の転機となりました。現在、Y-27632の添加は幹細胞研究において10年以上にわたって標準的に行われており、細胞の生存率向上におけるY-27632の効果と作用機序に関する豊富な情報が提供されています。iPS細胞を用いた治療法の効率的な開発のために、細胞治療メーカーがY-27632にますます注目を強めているなか、富士フイルム和光純薬が新たに発売したGMP準拠のY-27632は、GMP準拠の長期的なiPS細胞培養と機能的な下流分化のためのスケーラブルなワークフローをサポートすることができます。
単一細胞の解離が必要とされる研究では、CEPTカクテルがさらなる利点をもたらす可能性があります。iPS細胞培養の自動化、胚様体やオルガノイドモデルの最適化、神経分化の誘導、胎盤の発生と機能研究など、様々な用途での使用が期待されます10-14)。しかし、トランスレーショナルリサーチでの有用性を評価するためには、さらなる研究が必要です。
CEPTカクテルは優れた効果と標的特異性を持ち、効率的なiPS細胞培養をサポートする強力なツールです。これにより、疾患モデリング、医薬品開発、組織工学、再生医療など、幅広い応用が可能となります。富士フイルム和光純薬の新しいCEPTカクテルは、安全で効率的なiPS細胞初期化、長期細胞培養、単一細胞クローニングと遺伝子編集、胚様体とオルガノイド形成、凍結保存と細胞バンクに優れた細胞保護効果を持つ、4つの成分から成る混合物です。
富士フイルムグループは、バイオメディカル研究とアプリケーションの進歩に取り組むことで、iPS細胞を用いた製品開発の包括的なソリューションを提供し、iPS細胞技術の前臨床から商業生産への移行に貢献します。また、治療法の臨床的な可能性を最大限に引き出し、必要とする患者に届けることを目指しています。
参考文献
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