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【テクニカルレポート】地球にやさしいHPLC分析

本記事は、和光純薬時報 Vol.66 No.1(1998年1月号)において、和光純薬工業 大阪研究所 上森 仁志が執筆したものです。

近年、地球の温暖化、焼却施設からのダイオキシンの発生、産業廃棄物中の有害化学物質などが大きな社会問題となり、CO2の排出規制、各種容器の包装形態の見直しとリサイクル運動、産業廃棄物の処理方法の改善など、地球にやさしいライフスタイルの構築に向け全世界的規模での対応が進んでいる。HPLC分野においても例外ではなく、使用する有機溶媒、特にハロゲン系、ニトリル系の使用量削減は大きな課題となっている。

この課題への対応として、分析時の移動相流速を低く抑えることができるミクロカラム、セミミクロカラムの利用や、単位時間当たりの分析サイクルが稼げる高性能充てん剤(例えば粒子径2~3 µm充てん剤)をパックしたショートカラムの利用、及び逆相充てん剤の場合なら、アルキル鎖長の短い充てん剤の利用がクローズアップされてきた。

一方、本質的な改良として、ハロゲン系、ニトリル系の溶媒を使用しない移動相の検討や、有機溶媒を使用することなく分離が達成可能な充てん剤の開発検討も行われているが、これらの検討が実現するには若干の時間が必要と思われる。

そこで、前述の方法の積極的な活用が、地球にやさしいばかりでなく、高感度化、短時間分析にもつながり有効な分析手段になると考えている。

筆者はこれまでに、セミミクロカラムに関連した事項として、本誌 Vol.65, No.2No.3 (1997) に「セミミクロカラムの有用性と使用時の注意事項」を、本誌 Vol.61, No.3 (1993) に「3 µmODSシリカゲル充てん剤による医薬部外品配合成分の迅速分析」を、本誌 Vol.63, No.3No.4 (1995)に「HPLC法における短時間分析」について紹介してきた。

詳細については、それぞれのレポートを参照していただくとして、セミミクロカラムの効果と3 µmショートカラムの有効性を図1、2に示した。この場合、それぞれの移動相使用量は、汎用カラムと比較して 1/5、1/2に減少させることが可能となっている。

図1.セミミクロカラムと汎用カラムの比較
Column

Wakosil-PAHs

Eluent

A : H2O, B : CH3CN
0-15 min B: 50%, 15-45 min B: 95%(linear), 45-55 min B: 95%

Temp.

40 ℃

Wavelength

UV 254 nm, 0.256 aufs

Sample

①Naphthalene, ②Acenaphthylene, ③Acenaphthene, ④Fluorene, ⑤Phenanthlene, ⑥Anthracene, ⑦Fluoranthene, ⑧Pyrene, ⑨Benz[a]anthracene, ⑩Chrysene, ⑪Benzo[b]fluoranthene, ⑫Benzo[k]fluoranthene, ⑬Benzo[a]pyrene, ⑭Dibenz[a,h]anthracene, ⑮Benzo[ghi]perylene, ⑯Indeno[1,2,3-cd]pyrene

Inj. Vol.

5.0 µL

Insturuments

SHIMADZU LC-10A system

図2.3 µmショートカラムと汎用カラムの比較
Sample

①Acetaminophene 0.05 mg/mL ②Caffeine 0.06 mg/mL ③Phenol 0.20 mg/mL ④Aspirin 0.50 mg/mL ⑤Ethenzamide 0.25 mg/mL
5 µL Inject

Eluent

CH3OH / 0.1% H3PO4 = 30 / 70 (v/v)

Flow Rate

1.0 mL/min. at 35℃

Detection

UV 260 nm, 0.16 aufs

本質的な改良検討は今後も継続して行わなければならないが、今すぐ対応できるこれらの方法を有効に利用することが第1歩ではないかと考えている。

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