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【テクニカルレポート】 バイオ医薬品凝集体管理における粒子評価手法 ~ フローイメージング法と光遮蔽法 ~

本記事は、和光純薬時報 Vol.94 No.1(2026年1月号)において、横河電機株式会社 松本 和 様に執筆いただいたものです。

1 はじめに

バイオ医薬品の研究・開発・製造における重要な目標の一つは、臨床現場での安全性および有効性の確保である。その実現に不可欠な役割を担うのが分析技術である。各種分析手法を用いることで、研究者は原薬(API)、製剤工程中の配合物、完成品に至るまで、医薬品の多様な特性を評価できる。これらの重要品質特性(CQA)の測定により、開発から製造に至る全工程を通じて品質を適切に管理でき、最終的に患者に対してより良い治療効果を提供することが可能となる。

2 粒子評価技術

各種粒子評価手法

バイオ医薬品の研究開発および品質管理では、多様な粒子評価技術が用いられている。各手法は測定レンジや測定原理に基づく特徴を持つため、目的に応じて使い分けられる(表1)。

(1)光遮蔽法(LO法)

微粒子分析で最も広く用いられている手法の一つである。光源を透過するサンプルにおいて、粒子が投影する影を利用して粒子径分布および数を記録する。LO法はUSP<787>や<788>に準拠した公定法であり、特に10μm以上および25μm以上の粒子数測定に用いられる。一方で、半透明粒子の検出や粒子濃度が20,000個/mLを超える試料の解析には課題がある。

(2)フローイメージング法(FI法)

主にマイクロメートルスケールの微粒子の数、サイズ、形状を評価する手法である。液体サンプルを微小流路に流し、存在する粒子をデジタル光学顕微鏡で撮影して情報を取得する(図1)。FI法は高濃度試料にも対応でき、粒子形態に関する詳細情報を提供できる点に特徴がある。

FI法はこれらの課題に対処可能であり、半透明粒子の定量や約1,000,000個/mL程度までの高濃度粒子測定に対応できる。また、形態解析により、気泡を含む多様な粒子の種類や発生源を特定することも可能である。

両手法の併用は互いの弱点を補完するものであり、USP<1788>でも推奨されている。

表1.フローイメージング法と光遮蔽法の比較
図1.FlowCam LOのシステム概略図

3 計測事例

FI法とLO法の併用の有効性を示すため、ウシ血清アルブミン(BSA)、ポリソルベート80(PS80)、およびそれらの混合物(BSA+PS80)を、振動ストレスおよび加熱ストレスに曝露させた。これらをFlowCam LO(FI法とLO法を同一機器で測定可能な横河電機社製の分析装置)で測定した。(図2)に各サンプルの粒子径分布およびFI顕微鏡画像を示し、(表2)に各サンプル中の粒子濃度を示した。

FI法の結果から、BSAサンプルは加熱ストレスよりも振動ストレスに曝露した場合に多くのタンパク質凝集体が生成することが示された。さらに、BSAとPS80の混合サンプルでは、ポリソルベートが振動ストレス下で凝集を有意に抑制することが明らかとなった。

全てのサンプルにおいて、LO法の粒子濃度はFI法よりも低く算出された。両手法は同一サンプルを測定しているため、この差異は主に粒子の透明性に起因すると考えられる。ただし、傾向は一致しており、FI法による結論を裏付けるデータとなっている。

図2. BSAを含むサンプルを振動または加熱ストレスにさらし、FlowCam LOで粒子径分布とFI画像を取得した。暗色のヒストグラムはFIデータ、淡色のヒストグラムはLOデータを示す。

表2.(図2)に示す各サンプルの粒子濃度をFI法およびLO法で測定した結果

4 今後の可能性

本稿ではバイオ医薬品におけるFI法の品質管理事例を紹介したが、同手法は他分野でも広く応用されている。例えば、シリコンウェハーの研磨スラリーの形態評価や電気電子部品材料に使用される無機粒子の解析、食品分野では酵母・菌類の形態学的な計測・解析などが挙げられる。

フローイメージング技術のさらなる応用により、製品品質の向上と環境負荷低減の双方に寄与できると考えられる。

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